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「羽生さんがプロ転向したいま、競技としてのフィギュアスケート界で、熱い視線を集めるのがアメリカのイリア・マリニン選手(17)。彼が4回転アクセルを試合で成功させるかが注目の的でしたが、14日、シーズン初戦のUSインターナショナル・クラシックでさっそく成功させたのです」(スポーツ紙記者)

羽生結弦(27)がプロ転向宣言してから、はや2カ月。羽生は、プロになっても4回転アクセルの挑戦を続けると明言したがーー。

「そもそも’18年平昌五輪で2連覇を成し遂げたあとも現役を続けていたのは、4回転アクセルのためでした。ISU(国際スケート連盟)の公認試合で跳んでこそ公式の記録に残るからです。彼が手にできなかった“初めてISU公認試合で4回転アクセルを成功した選手”の座を手にしたのが、マリニン選手なのです」(前出・スポーツ紙記者)

昨季の世界ジュニア王者であるマリニンは、今年に入って4回転アクセルの着氷成功動画をSNSに投稿してきており、これまでのインタビューでは、羽生が北京五輪で挑戦した4回転アクセルを参考にした、と明かしている。

当の羽生は、マリニンについてどう思っているのだろうか。

これまで羽生が公の場でマリニンの名前を口にしたことはないというが、ファンの間ではある言葉が話題になっていた。

「マリニン選手がインスタライブで、ほかの技との比較のなかで『技術的には、僕にとって4回転アクセルは簡単』といった内容の発言をしたことがあったんです。すると、その後のテレビのインタビューで、羽生くんが『4回転半って、正直僕にとってはめちゃくちゃ難しいものなので』と言ったんです。これはマリニン選手の言葉を受けてのものではないでしょうか」(長年の羽生ファン)

■羽生とマリニンでは、4回転アクセルの“跳び方”が違う

フィギュア関係者も証言する。

「羽生さんが着氷成功動画を目にしていたのは間違いありません。やはり意識はしているようです。ただその一方で、羽生さんは“彼と自分の4回転アクセルは別物”と捉えているようです」

「別物」とはどういうことか。

「2人のジャンプは、跳び方に大きな違いがあるのです。羽生さんが“飛距離を出す”跳び方だとすれば、マリニン選手の場合は“高さを出す”跳び方。これはロシア選手に多い跳び方で、マリニン選手は両親が旧ソ連の選手だったのでその影響かもしれません。

羽生さんに比べると、足が氷から離れる前に回る角度がやや大きく、回転がつきやすいのが特徴です。言ってしまえば、マリニン選手の跳び方のほうが成功しやすい跳び方であるとは思います」(前出・フィギュア関係者)

羽生を長年取材し、『羽生結弦 王者のメソッド』の著書があるスポーツライターの野口美惠さんは、跳び方の違いを次のように話す。

「同じ4回転アクセルでも、実際に挑戦する選手からすると、2つの跳び方にはかなりの違いがあります。羽生さんも“違う跳び方”だと考えているとは思いますね。このマリニン選手との跳び方の違いがかえって、羽生さんの“自分は飛距離のある美しい4回転アクセルを極めるんだ”という気持ちを強めるようにも思います。彼は“美しいアクセル”にずっとこだわってきましたから」

羽生の3回転アクセルは“世界一美しい”と評されることもある。アクセルには譲れぬ美学がある。

「羽生さんにとっていちばん大切なのは、自分の納得のいく4回転アクセルを跳ぶこと。プロという違うフィールドにいるということもありますが、現役選手がISU公認で4回転アクセルに成功したとしても、自分の理想像と違う跳び方であれば、それほど気にならないのではないでしょうか」(前出・フィギュア関係者)

そんな羽生には、力強い味方も。ブライアン・オーサー氏(60)とともにカナダで羽生を指導していた、ジャンプコーチのジスラン・ブリアン氏(59)だ。

「ジャンプのスペシャリストで、これまでも羽生さんに4回転アクセルの助言をしてきた人物。彼は、’20年から京都にある木下アカデミーコーチに名を連ねています。コロナ禍でなかなか来日できなかったのが、今年はすでに数回来日していて9月にも来日予定だそう。今後も羽生さんをサポートする気持ちがあるようです。来日の際、仙台で直接やりとりすることもあるかもしれませんね」(前出・フィギュア関係者)

“世界一美しい”4回転アクセルを目指してーー。羽生の夢は、まだまだ終わらない。