日本で一番東に位置する空港、北海道中標津空港は、建物もとてもユニークな特徴があります。「木で作られた空港」なのです。どのようなところなのか、実際に行ってみました。

年間利用者は約8万5000人

日本で一番東に位置する空港、北海道・根室中標津空港(中標津空港)は、発着する定期便が1日計4便しかなく、道内空港でも目立った存在ではありません。ただ、「日本最東端の空港」という以外にも、ユニークなポイントがあります。実際に行ってみたところ、それはとても“アットホーム”なものでした。

中標津空港は、市街中心街から3kmほど北北西に位置します。同空港の年間利用者は2021年度で約8万5000人。隣の女満別空港や釧路空港の年間利用者がおよそ43~46万人といったところですから、それと比べてもいかにひっそりとした空港かわかります。

東京行きは1日1便。これで帰京するため早めに空港に着き、大空港のように食事を保安検査場通過前にしようか、それとも後にしようか迷って地上職員へレストランのある場所を訪ねると、「出発ロビーには、飲み物の自動販売機しかありません」との答えでした。

保安検査場通過前に食事を終え、ビル内を見渡すと、そこかしこに使われている木材が目に入りました。この空港が“アットホーム”と感じるゆえんは、随所に木材を使った複合建築の旅客ビルであること。ひとことでいうと、国内では異例となる「木造空港」なのです。見渡してみると、たしかに1階から2階への吹き抜け部分の柱はアールを描いて天井へ続き、それらは木で覆われています。

超“木推し”! 中標津空港の館内とは

中標津空港の“木”推しはなにも建物そのものだけではありません。

検査場前にあった椅子とテーブルも木製。機能一点張りではなく、どことなく家庭のリビングルームにも似合う柔らかな雰囲気を出していました。

出発まで時間があったので1階に降りて改めて見ると、到着出口近くの壁にかかった「知床ノサップ観光マップ」も木製。2~3畳と大きなこの地図には北方領土も描かれていました。出発ロビーに並ぶベンチも木製。駐機場の向こうには、知床連山が爽快に広がっていました。

地図には、択捉島にも空港のマークが書かれています(ヤースヌイ空港)。日本の東端に位置する空港は、本当は中標津の先にあるのだと、教えてくれてもいるようでした。

筆者が搭乗したANA378便は客席の3分の2が埋まっていましたが、家族連れや出張のビジネスマンといった人たちがほとんどでした。搭乗前に眺めていた新千歳行きのANA4884便も、乗客は仕事で札幌と行き来するような人が多く、生活路線といった感じが色濃く出ていました。

木材は、北海道の木であるエゾマツと、トドマツを使っているということで、旅客も合わせて空港は地元密着感が濃く出ていました。思えば、JR標津線が廃止された1989年中標津空港は丸ごと再建され、1990年に滑走路は全長1800m(当時)に伸びています。こうした木材が運ばれた鉄路から、モータリゼーションが進み、空路も“地元の足”となっているようです。

大きな国際空港のような圧倒感はないものの、地元にとって欠かせない存在――そんな空気が中標津空港は流れていました。

中標津空港の全景(加賀幸雄撮影)。