子育ての中でしつけをするとき、“叱る”ことを避けては通れませんよね。子どもを褒めることも大切ですが、叱ることも時には必要になります。ただ、叱り方によっては、子どもは逆に「言う通りにしてやるもんか!」と反抗的になり、言うことを聞かなくなることもあると思います。

 例えば、「その場にいない人からも叱ってもらう」「『どうして?』『何で?』と理由を追及する」「『いつもそうなんだから』と過去のことを持ち出す」…これらは子どもにとって、不満が残る叱られ方ではないでしょうか。今回は、親が気を付けたい「NGな叱り方」について考えてみましょう。

【NGその1】その場にいない人からも叱ってもらう

「虎の威を借る狐(きつね)」という故事成語があります。権力者の力を頼みにして威張る小者を意味するもので、「威」とは威厳、「借る」とは「利用する」という意味です。ちょっと古いですが、権力の象徴を見せて相手を恐れさせる“水戸黄門の印籠”のようですね。

 例えば、「パパが帰ってきたら叱ってもらいますからね!」「幼稚園の連絡帳にも書いておくからね! 先生に読んでもらうからね」といったように、ママだけの力で子どもをしつけられないと悟ったとき、パパや幼稚園の先生に“叱ってもらう”ケースです。また、バスの中で子どもが騒いだとき、「ほら、怒られちゃうよ」「前のおじさんが怖い顔しているから静かにして」と言うケースも当てはまるのではないでしょうか。

 しかし、このような“虎の威を借りる”しつけはNGといえます。なぜかというと、注意したママが甘く見られてしまうからです。

 言うことを聞かないときは大きな力を借りたくなりますが、できればこらえた方が賢明です。自分の言葉ではっきりと、「電車の中は家や公園ではありません。静かに座っている場所です。騒ぐ人はマナー違反です。ルールを守れない人は、これからは歩いて行ってね」と毅然(きぜん)とした態度で伝えた方がよいと思います。

 ルールに頼っている面では“虎の威を借る”状態かもしれませんが、少なくとも、第三者である運転手や見知らぬおじさんが「◯◯と言っているから」「怖い顔をしてにらんでいるから」と言って叱るよりはよい方法だと思います。

【NGその2】「どうして?」「何で?」と理由を追及する

 親から見れば好ましくない行動を子どもが取ったとき、つい、「どうして食べ物の好き嫌いをするの!」「何で片付けないの!」「どうしてお友達と仲良く遊べないの!」と理由を追及するような言葉を言ってしまいがちです。けれども、子ども側に立ってみると答えようがありません。「散らかしたいから散らかす」「嫌いだから食べたくない」だけなのです。

 大人も食べ物を残すことがあるでしょうが、そのときに理由はありますか。あったとしても「おなかがいっぱいだから」「嫌いだから」くらいでしょう。物を散らかすのも、「片付けたくないから」「疲れているから」、仲良くできないのは「何となく馬が合わないから」「嫌いだから」ではないでしょうか。子どもだって同じなのです。そして、大人のように言葉が達者ではありませんから、口ごもってしまいます。

 仮に、「僕はニンジンの味が嫌いなんだ」「家に帰ってきてからまた遊ぶから、片付けたくないんだ」「◯◯くんのことが好きになれないから、意地悪したくなるんだ」と答えたら、親は「何へりくつ言って!」と感じ、さらに叱るでしょう。

 理由を追及することはやめて、「あと一口だけ食べて」「片付けないと掃除するとき、掃除機で吸い込んでおもちゃが壊れるから、片付けて」「仲良くしなくてもいいから、手を出すことはやめようね」のように、言い方を変えてみてはどうでしょうか。

【NGその3】「いつもそうなんだから」と過去のことを持ち出す

 机の上に落書きをし、あちこちにシールを貼って遊んでいる子ども。つい、「いつもそうだよね!」「この間も言ったよね!」「何度同じことを言われたら分かるの!」「同じことをママに言わせないで」と言いたくなりますが、“過去”を持ち出すのはやめましょう。

 子どもは今その瞬間に悪いことをしています。過去を持ち出しても意味がありません。現在進行形で今、やっているそのことだけについて伝え、「机の上に描かないで、この画用紙に書いてね」「シールは、シール帳に貼って」と代わりの物を渡すとよいですね。

「そんなにうまくいくわけがない」と思うかもしれませんが、やってみると、案外うまくいくかもしれませんよ。

子育て本著者・講演家 立石美津子

親がやりがちな叱り方、実はNG?