高齢化、さらには未婚率の増加によって、日本では急激に単身の高齢者が増えています。「気楽でいい」という反面、やはり経済面に健康面にと、不安は付きまといます。高齢者が単身で生きていく……その現実をみていきましょう。

65歳以上でおひとり…全国で742万7,000人

厚生労働省『2021年 国民生活基礎調査』によると、65歳以上の高齢者がいる世帯は2,580万9,000世帯で、全世帯の49.7%。そのうち「夫婦のみの世帯」は825万1,000世帯、「単身世帯」が742万7,000世帯、「親と未婚の子のみの世帯」が528万4,000世帯となっています。

また齢単身世帯を男女別にみていくと、「高齢男性の単身世帯は」は265万1,000世帯、「高齢女性の単身世帯」は477万6,000世帯。さらに年齢別にみていくと、高齢男性の単身世帯で最も多いのは「70~74歳」で29.8%、高齢女性の単身世帯で最も多いのは85歳以上で24.3%。女性のほうが平均寿命が長く、夫婦の場合、先に男性のほうが亡くなるケースも多いからだと考えられます。

【年齢別にみる「高齢男性の単身世帯」】

65~69歳:26.5%

70~74歳:29.8%

75~79歳:17.2%

80~84歳:13.7%

85歳以上:12.7%

【年齢別にみる「高齢女性の単身世帯」】

65~69歳:14.1%

70~74歳:21.7%

75~79歳:19.9%

80~84歳:20.0%

85歳以上:24.3%

出所:厚生労働省『2021年 国民生活基礎調査』より

その所得についてみていくと、高齢単身世帯の平均所得は208万4,000円、月に17万円弱です。年金(恩給含む)だけをみていくと、平均131万4,000円、月に11万円弱です。また男女別にみていくと、高齢男性の単身世帯の平均所得は261万4,000円、そのうち年金は142万8,000円。高齢女性の単身世帯の平均所得は179万6,000円、そのうち年金は125万3,000円です。高齢男性に比べて、高齢女性のほうが、おひとり様の暮らしは経済的にも厳しいことが伺えます。

単身の高齢者の家計…月の赤字は2万7,710円

総務省『家計調査 家計収支編』(2021年)で、高齢単身世帯の暮らしぶりをみていきましょう。

【65歳以上の単身世帯「1ヵ月の家計」】

持ち家率:80.2%

消費支出:13万7,210円

《内訳》

食料:36,972円

住居:1万3,310

光熱・水道:1万2,741円

家具・家事用品:5,264円

被服及び履物:3,341

保健医療:8,765

交通・通信:1万3,905円

教育:7円

教養娯楽:1万3,004円

出所:総務省『家計調査 家計収支編』(2021年)

※内訳の数値はそれぞれの平均値であり、合計しても消費支出にはならない

調査が異なり、またあくまで平均値での話ですが、収入が年金だけのおひとり様の高齢者、月に2万7,710円の赤字を補填していかなければならないということ。仮に老後30年として収支を考えれば、997万5,600円と、1,000万円近い貯蓄が必要となる計算になります。

経済的な不安はもちろん、高齢であれば健康面での不安も大きいでしょう。日本人の平均寿命は2021年の女性が87.57歳、男性が81.47歳。一方、健康寿命は2019年値で、女性75.38歳、男性72.68歳。単純計算、老後9〜12年は「健康ではない」状態が続き、さきほどの家計に医療や介護のこともプラスαで考える必要があるといえます。

また長生きすればするほど、考えなければならないのが認知症のリスク。その有病率は年齢と共に上昇していくことが知られ、65歳以上の高齢者で16%。80代後半であれば、男性の35%、女性の44%が認知症であるとされています。

最期は穏やかに……誰もが願う人生の終焉。それを実現させるためには、特に単身の場合はいくつもの困難が待ち受けているといえます。経済的なことは自助努力のほか、支援制度もありますし、健康面でも同様。大切なのは、元気なうちに情報を獲得し、いざというときに使える状態にしておくことだといえるでしょう。

(※写真はイメージです/PIXTA)