過酷な環境に置かれた子どもが犯罪に手を染めるケースは後を絶たないが、このほど少女に賠償命令が言い渡され、物議を醸している事件がある。

 アメリカ・アイオワ州で性的暴行を受けた少女が加害者の男を殺害した事件で、裁判所が少女に対し、男の家族に賠償金を支払うよう命じる判決を言い渡した。海外ニュースサイト『Daily Mail』『Washington Times』などが9月15日までに報じた。

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 報道によると2020年当時15歳だった少女(現在17)は、母親の暴力に耐えられず、家出をしたという。少女は3歳の時に里親に出され、この母親の養子となっていたそうだ。

 少女は、しばらくホームレス状態だったが、売春をあっせんする40歳の男Aに助けられ、その男の家で暮らし始めた。少女はAの命令で、客とみられる男性相手に、何度も性行為を強要されたという。なお、Aは特に罪に問われていない。

 2020年5月31日、少女はAから、37歳の男Bの家に行くよう命令された。少女は拒否するも、刃物をのど元に突き付けられて、無理やり行かされたそうだ。約1週間前にも少女はBと会っている。少女によると、このときBにお酒と薬を飲まされ、意識がない状態で5回も男にレイプされたという。

 男Bの家を訪れた少女は、Bから性的暴行を受けた。このときも意識がなかったそうだ。目が覚めた少女は、寝ているBを見て怒りがわき、そばにあった包丁を手にしてBをメッタ刺しに。Bは腹部など30カ所以上刺され、即死状態だった。少女は逃走したが、事件翌日に警察に見つかり身柄を拘束され、第一級殺人罪で起訴されたという。

 複数回の審理を重ね2022年9月13日アイオワ州地方裁判所は、過失致死で有罪判決、執行猶予5年付きで、違反すれば禁固20年の判決を少女に言い渡した。執行猶予が付いたため、少女は刑務所行きを免れた形だ。

 上記判決に加え、亡くなったBには妻子がいたため、裁判所は逸失利益など約2100万円の賠償金をBの家族に支払うよう少女に命じたそうだ。裁判長は、少女が性的暴行を受けた事実は認めたが「男を失った家族に対する賠償は必要。それ以外の選択肢はない」と説明している。

 判決後に少女は「殺すつもりはなかった。危険を感じた結果、こうした行動に出てしまった。刺したことは後悔している」などと各社の取材に回答している。賠償命令を受けて、少女の支援者らがクラウドファンディングを利用して寄付を募ったところ、3000万円以上が集まった。余剰金は、少女の大学進学の費用に充てる予定だという。

 このニュースが世界に広がるとネット上では「この判決はおかしい。未成年に責任を問う判決」「レイプ被害者が、加害者に賠償金を払うの?」「少女は殺人犯。刃物でめった刺しする残虐性。執行猶予付くのがおかしい」「賠償金を払うのは、少女の母親だと思うが」「人殺してもクラファンで救済。大学進学のおまけつき。うらやましい」「妻子持ちなのに少女をレイプ小児性愛の男に同情の余地なし」といった声が上がった。

 恵まれない環境で育った少女には同情を禁じ得ないが、人の命を奪っている以上、おとがめなし、とまではいかなかったようだ。

記事内の引用について
Teenage sex trafficking victim is ordered to pay $150,000 to family of accused rapist who she killed by stabbing him 30 times when she was just 15-years-old(Daily Mail)より
https://www.dailymail.co.uk/news/article-11210775/Teenage-sex-trafficking-victim-ordered-pay-150-000-family-accused-rapist-killed.html
Human trafficking victim avoids prison for killing accused rapist, but must pay $150K(Washington Times)より
https://www.washingtontimes.com/news/2022/sep/14/pieper-lewis-human-trafficking-victim-avoids-priso/

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