筋トレによるボディメイクは、筋肥大と除脂肪=筋肉を大きくしつつ脂肪をそぎ落とし、筋肉の細部まで美しく見せるというのが目的です。痩せるためではなく、脂肪を落とすために食事コントロールをするといいます。還暦から筋トレを始めた城アラキ氏が著書『負けない筋トレ 還暦から筋トレにハマったら、「肉体」と「人生」が激変した!』(ブックマン社)で解説します。

食事もトレーニングと同じくらい重要

■ボディメイクダイエットの違い

最初にダイエットとボディメイクの違いを簡単に説明したい。ダイエット=痩身が目的のとき、メインとなるのは食事管理で、運動はあくまで補助的だ。その運動も、ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動が主体。ただし、最近では女性も普通に筋トレをやるようになって、この事情は少し変わりつつある。

これに対し筋トレによるボディメイクは、筋肥大と除脂肪=筋肉を大きくしつつ脂肪をそぎ落とし、筋肉の細部まで美しく見せるというのが目的だ。痩せるためではなく、脂肪を落とすために食事コントロールがある。ボディメイクでは体重の増減はあまり気にしない。

とはいえ、実際には筋肉を増やしつつ、脂肪は極力減らしたいので、食事もトレーニングと同じくらい重要になる。本連載でも「運動編」と「食事編」と二つに分けている。

ボディメイクとは、あくまで自分の意思と力だけで自分自身を変えることを意味する。飯を食わないのも、確かに意思には違いない。だがこの結果痩せた=変わったとしても、これを絞ったとは言いづらい。

やっぱり単にやつれたと言われそうだ。どちらがいいとか、どちらが健康的かはあまり意味がない。その目的が最初から少々違うとだけ言っておきたいのだ。

大事なのは「変わる」ことと「変える」ことの違い。そう「変化の意味」なのだ。

筋トレとは「盆栽」である

トレによるボディメイクにいちばん近いのは「盆栽づくり」ではないかと思った。ま、実際に栽培したことがないから、これはあくまで想像だけど。明治神宮では毎年、盆栽展という催しがあって、ランニング途中にたびたび覗いた。

鑑賞ポイントなどまったくわからないが、頂点に輝く総理大臣賞はもちろん、上位に入賞した盆栽はまず全体のボリュームが豊かだ。筋肉もボリュームがある方がなんと言っても迫力がある。生まれ持った骨格、肉付きに左右されるのは盆栽も肉体も同じだ。

次に、細部にまで隙がない。盆栽も刈り込まれるところは奥まで1㎜の狂いもなく揃えてキチンと刈り込まれている。全体の陰影も深い。さながらミニチュアの森のように深淵だ。ちなみに筋肉のカット=彫り込みを深くするのは減量とトレーニング次第だ。

盆栽も日に当て(そういえばコンテストビルダーも黒々と焼き上げるが、これはカットを際立たせるため)、水や肥料を与え(ビルダーならプロテインだな)、慈いつくしむ。

ついでに、そのこと自体には木としての(体としての)有用性は何も生まないところも似ている。盆栽は防風林のようにそこに立ちはだかって、風を防ぐわけじゃない。伐採後に建築用材として役に立つわけでもない。

ボディビルダーもその筋力を実用に活かすつもりはさらさらない。

世間はそれを無駄な努力というだろうが、盆栽だって同じじゃないか。自然な木を人工的に、人の意思を持って変える。自分ひとりだけが嬉しい。役には立たぬが心は豊かにしてくれる。これぞ「無用の用」である。

ただし「ね、見て見て。この肩のところ、三角筋ってホントに3つに分かれてるでしょ」と、誰彼構わず無理矢理つかまえ、思いっきり力んで肩を見せるのはやめた方がいい。普通の人は盆栽以上にあなたの肩にはまったく興味はない。

ということで……筋トレには3つの「変化」があると思っている。以下、少し詳しく説明する。

「筋トレの第1の変化」は外見の変化

カットの秘密

同じジムのボディビルダーOさん親子が、東海地区のボディビルコンテストに出場するというので応援に行ったことがある。コンテスト見学自体初めてのことだが、ボディビルの親子対決なんてなかなか見られるもんじゃない。ルールも審査基準もまったくわからない競技だったが、素人にも納得できるところはあった。このへんはまさに盆栽見学と同じだ。

上位の入賞者はやはり筋肉にボリュームがあって、その筋肉が細部までクッキリと際立って陰影が深い。よく日にも焼けて黒々としている。ポージングの動きにも余裕があり、いかにも堂々として見えるのだ。ちなみにこのときのOさん親子の対決はお父さんの方が10位、息子さん12位で、見事にオヤジの威厳を保った。

この大会ではNさんという方が優勝した。身長も180㎝近くあり、筋肉のボリュームも豊かでキレもいい。素人が見ても、まぁ当然の優勝とわかるような仕上がりだ。地方都市は狭い。このときに一緒に行った若い友人が「あっNさんだ。昔、バイトで一緒だったことがある」というではないか。昔からマッチョだったというからトレーニング歴も長いのだろう。

このNさんとジムの駐車場で偶然すれ違った。ところが着衣では決して大きく見えないのだ。思わず振り返って人違いかと見直してしまった。遠目のステージではあれほど大きく見えたのに、むしろ痩せて見える。その理由がわからない。

実はここにカットの秘密があるとトレーナーの鈴木さんが説明してくれた。

ボディビルダーは筋肉の細部が浮き上がることで(よく言うキレですね)体に陰影が出て、体が立体的に大きく見えるという。これが服で隠されるとカットが隠れてむしろ小さく見える。女性なら、単なるおデブさんとグラマーの違いだ。同じ身長体重でも部分、部分が絞れているとグラマーで大きく、これがないとボンヤリとした体型でむしろ小さく見えるらしい。

シックスパックのキレ

この、筋肉の陰影影響がいちばんわかりやすいのが腹筋のシックスパックだ。筋トレといえばとりあえずシックスパックを目指すほど、最近ではよく知られるようになった。何しろ、本連載でも担当編集G君が「せっかくですから著者もシックスパック!」と、お気軽に無茶を言ってくれたほどだ。

筋トレ情報も一般化したせいか、シックスパックは腹筋運動だけをいくらやっても割れないと、さすがに知られるようになった。腹筋はもともと割れていて、その上に乗った脂肪を落とす=体脂肪を減らせば、腹筋は6つに割れて見えるからだ。といって、腹筋運動が不要というわけではなく、脂肪を落としつつ、腹筋そのものも肥大させた方が、より凹凸のはっきりとしたシックスパックにはなる。

■私のこの時点での腹筋は……

トレーナー鈴木さんに腹筋を見せ、シックスパックへの道のりを訊いてみた。何やらカニのハサミのような計測器(皮下脂肪針)でヘソの横の脂肪の厚みを測ってくれる。

「16㎜。体重であと4㎏くらいは絞りたいところですね。体脂肪率で言うと最低でも10%台の前半が目標」「え〜、あと4㎏ですかぁ〜」と思わず声が出てしまう。実はこの時点ですでに書籍の企画が決まり、2〜3㎏は減量していたのだ。体脂肪率も17〜18%だ。ここから4㎏減量はかなりキツイなぁと思いながらも、まだノンキだった。この後まさかの泥沼地獄が待っているとは思いもしなかった。

ちなみに、コンテストビルダーはそもそもこんな機械ですら測らないという。「手の甲の皮をつまんで持ち上げてみる。おヘソの横がその位にならないと絞りが足りないです。体脂肪でいうと5%位。家庭用の体脂肪計では計測不能で数字が出ません」

このときはそんなものか、なかなか凄い世界だなとただ聞いていた。が、コンテストビルダーの体脂肪5%以下というのが、どれほどの数字なのか、後で調べて驚いた。

城 アラキ 漫画原作家

(※写真はイメージです/PIXTA)