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 新型コロナは世界にさまざまな影響を与えたが、ひときわ奇妙なものとして、通常よりも思春期が早まった女子が急増したというものがある。

 通常よりも2~3年程度早まる「思春期早発症」は、新型コロナウイルスと関連性が思われていたが、実はそうではない可能性があるという。

 新たに浮上した容疑者はスマホだ。

 先日開催された欧州小児内分泌学会(European Society for Paediatric Endocrinology)で発表された研究によると、スマホから出る青色光が思春期に関連するホルモンの分泌をうながすことがわかったそうだ。

【画像】 コロナ・パンデミックで思春期が早まる女子が急増

 日本小児内分泌学会によると、思春期とは、こどもが成長しおとなになっていく過程で、心身ともに変化する時期のことだ。通常、女の子は10歳頃、男の子は12歳頃よりはっきり女の子らしさ、男の子らしさが現れる(ただし個人差あり)。

 だが、それより2~3年程度、思春期が早く始まってしまうのが「思春期早発症」だという。

 奇妙なことに新型コロナが世界的に流行してから、世界的に女子の思春期早発症が急増したそうだ。たとえばトルコでは、2019年4月から2020年3月にかけて、女子の思春期早発症が倍増している。

 その基準が世界各国によってまちまちなので、どのくらいの女子が思春期早発症なのか一概に言うことはできない。

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 また今のところ、思春期早発症の正確な原因は不明だ、病気が関係するものを除けば、前触れもなく突然起きるため、はっきりとした原因が突き止められないという。

 だが思春期早発症の急増が新型コロナパンデミック(世界的流行)と重なったことから、ウイルスが関係しているという説や、新型コロナの恐怖によるという心理的な原因説まで、さまざまな憶測が流れた。

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スマホの青色光を浴びる時間が長くなったことと関連性

 だが今回トルコ、ガジ大学医学部などの研究グループは、ウイルスはまったく関係なく、別の原因がある可能性を指摘している。

 それはスマホだ。より正確には、そうしたデバイス機器から放たれる高エネルギー可視光線「青色光(ブルーライト)」を浴びる時間が長くなったことが原因ではないかというのだ。

 人間は「昼行性」の動物だ。だから昼間の光に含まれる青の波長を浴びれば、起きている時間帯と私たちの体は解釈する。

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 その反対に、夕暮れに含まれる波長の長い光を浴びれば、休息を意識し始める。

 この仕組みは私たちの体に深く刻まれているので、光のリズムが狂うと健康にも影響する。「メラトニン」というホルモンの分泌が乱れてしまうからだ。

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ラット実験で、青色光が思春期早発症を引き起こすことが判明

 一般にメラトニンは、夜に眠りへと誘うホルモンだ。しかし、体が成長する重要な時期にこれが乱れてしまうと、思春期に関係するホルモンの分泌まで乱れる可能性がある。

 今回の研究では、メスのラットに毎日普通の2倍の青色光を浴びせるという実験をおこなった。その結果、メスラットの思春期が早まることが確認されたのだ。

 そのほかにもメラトニンが減少する一方で、エストロゲンの一種「エストラジオール」や「黄体形成ホルモン」といった”生殖に関連する化学シグナル”が増加することも確認されている。

 ただしこれは思春期早発症の原因が、青色光だけであるということではない。思春期のメカニズムは複雑で、これを左右するさまざまな要因が考えられるからだ。

 また今回の研究はあくまでラットの実験結果なので、これが人間の女子にどの程度当てはまるのかも不明だ。

 それでも研究グループによれば、青色光は思春期早発症のリスク因子だったとしてもおかしくはないそうだ。

References:Early Puberty in Girls Surged in The Pandemic, And We May Finally Know Why : ScienceAlert / written by hiroching / edited by / parumo

 
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コロナ・パンデミックで思春期が早まった女子が急増。その理由はウイルスではなく別の要因であるとする研究結果