うつ状態なのに体が勝手に動いて働けてしまう。だからこそ、苦しいー心と体が限界を突破しているのに動いてしまうその状態はゾンビにも喩えることができる。そんな人々が増えているという。その実態を追った。

◆自身のうつ経験をもとに、悩む人の交流の場をつくる

東京・中野で月に1度開催している「うつCAFE」。主宰の佐藤康平さん(26歳)が、自身のうつ経験をもとに、悩む人の交流の場として始めた。

「大学卒業後、地元の県庁に就職したのですが、環境と自分の価値観のギャップに悩み適応障害と診断。2か月休職してから退職しました」

診断済みの参加者は全体の3割だが、認めたくない気持ちやさまざまな事情で通院できない人もいるため、「潜在的患者はもっと多いと思う」と言う。

◆「繋がる場」があること自体がうつへの癒やし

コロナ禍で制限しているが、月に20~30人ほどが参加。年代は20代から60代と幅広く、共通するのは「孤独感」だという。

「うつ状態のつらさが他人に伝わらなかったり、プライベートでの人間関係をつくる気力がなくなっていたり。『仕事以外では家に引きこもっているから休日用の服が一着もない』と、仕事着でイベントに来た中年の方もいました」

なかでも、比較的フットワークの軽い若い世代に比べ、40代以上が抱えるしがらみは根深い。佐藤さんは「それでもほかに逃げ場があれば今が楽しくなるし、自分のために動く気力も出てくると思います。気軽に来て、繋がりをつくってほしい」と話す。

◆「働けるうつ」は脳内でどうなっているのか?

「働けるうつ」状態では、体の中でどのような反応が起きているのか?脳科学専門のエビデンスリサーチャー・佐藤洋平氏によると、古い脳(扁桃体、青斑核、視床下部)と新しい脳(前頭前野)のバランスが鍵だという。

「人間の脳には感情を司る古い脳と理性を司る新しい脳があります。元気な時には、古い脳と新しい脳はバランスを取りながら活動をしています」

元気な時には、ストレスを感じた場合、一時的に古い脳の活動が高まり、覚醒を高める副腎皮質刺激ホルモンが大量に放出される。その結果、理性を司る新しい脳の活動が抑えられる。その後、ストレス状態を脱すれば、脳はもとの状態に戻る。

しかし慢性的なストレス状態では、古い脳の活動が強く、新しい脳の活動が弱い状態が定常化してしまう。これが定型うつ病に見られる脳活動だ。

◆違いは脳の動きだった

だが、働けるうつ病を非定型うつ病の一種と仮定した場合、別の動きが起きている可能性がある。

「非定型うつでは古い脳の活動が弱くなり、新しい脳の活動が強くなっています。その結果、一般的なイメージに反して働くことができてしまうと考えられています」

違いは脳の動きだった。

佐藤洋平氏】
脳科学専門のコンサルティング・レポート作成を手がけるオフィスワンダリングマインド代表。寄稿数3000本超。富山大学医学博士課程在籍中

取材・文/週刊SPA!編集部

―[[働けるうつ]が職場で増殖中!]―


参加者の中に医療従事者がいるときは、無料相談の一環として助言をする場合も