高齢化に伴い、希望すれば働き続けられる環境は整いつつあります。いまのところ60歳でいったん定年となり再雇用となるパターンが多く、収入がある間は生活も安定しているようです。しかし引退を迎え、年金生活になったあとに生活苦に陥り、なかには破綻という最悪の結果を迎える人も。みていきましょう。

60歳で定年…それでも8割以上が「働きたい」

2013年「高年齢者雇用安定法」の改正により、定年を65歳未満に定めている事業主は、①65歳までの定年引き上げ ②定年制の廃止 ③65歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入 のいずれかの措置(高年齢者雇用確保 措置)を講じなければなりません。現在、経過措置中で、2025年3月31日には終了。2025年4月1日からは全企業に「65歳までの雇用確保」が義務付けられることになります。

厚生労働省令和3年 高年齢者雇用状況等報告』では、従業員21人以上の企業232,059社の報告をまとめていますが、それによると、65歳までの高年齢者雇用確保措置を実施済みの企業は99.7%。企業規模別には大企業(従業員301人以上)では99.9%、中小企業(従業員300人未満)では99.7%となっています。

上記、①~③、どの措置を行ったのでしょうか。①の定年制の廃止が4.0%、②の定年の引上げが24.1%、 ③の継続雇用制度の導入は71.9%。7割強の企業が、定年年齢はそのままに、再雇用等により、65歳までの雇用を確保しています。

さらに2021年4月施行の改正高年齢者雇用安定法では、現行法で定められている65歳までの雇用確保義務に加え、70歳までの就業確保措置をとることが努力義務として追加されます。

前述の厚労省の報告によると、70歳までの高年齢者就業確保措置を実施済みの企業は59,377社、全体の25.6%。企業規模別にみていくと、中小企業で26.2%、大企業で17.8%と、人手不足で悩む中小企業の対応のほうがやや進んでいる印象です。

ちなみに改正高年齢者雇用安定法では、①70歳までの定年の引上げ ②定年制の廃止 ③70歳までの継続雇用制度の導入、④70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入 ⑤70歳まで継続的に社会貢献事業に従事できる制度の導入、のいずれかの措置としていますが、①は4,306社で全体の1.9%、②はは9,190社で4.0%、③は45,802社で19.7%、④は79社で0.1%となっています。

希望すれば65歳、さらには70歳まで働くことのできる土台は整いつつありますが、「いったん60歳で定年」という企業が多数を占め、実際、60歳で「働き続けるか」それとも「引退するか」の選択をするつもりの人が多いでしょう。

同報告書で、60歳定年企業で「継続雇用された人」は86.8%で、そのうち子会社や関連会社等での継続雇用者は3.1%。「継続雇用を希望しない定年退職者」は13.0%、継続雇用を希望したが継続雇用されなかった人は0.2%。大多数は定年後も働きたいと手をあげています。

「老後破綻する人」と「老後破綻しない人」のターニングポイント

基本的に年金が支給されるのは65歳から。60歳定年からの5年間の生活費はどうするかは、大きな悩みどころ。収入があったほうが当然、安心して暮らしていけますし、いまの60代はまだまだ元気。「働けるうちは働きたい」と考える人が多いのも当然でしょうか。

ただこの「60歳定年」というタイミングは重要で、いずれ年金だけの生活になった際に、生活が困窮するかどうかのターニングポイントだといいます。なかには、年金生活をスタートさせたのち、老後破綻という最悪の結果を迎える人もいるのだとか。生活苦となるかどうか、ポイントは「給与減にどう備えるか」です。

厚生労働省令和3年賃金構造基本統調査』によると、日本のサラリーマン(正社員)の平均給与(きまって支給する現金給与額)は、月38万3,700円、平均推定年収は571万1,100円です。年齢別にみていくと、年齢を重ねるごとに給与はあがっていき、ピークは50代前半で月収45万4,700円、年収は692万6,900円。50代後半でも同水準を保ち、ピークのまま定年を迎えます。

しかし60歳を境に、月収は20%、年収は25%ほど減少します。さらに65歳で年金生活となった際、手にできるのは平均月17万円ほど*。月の収入は半分以下になるわけです。年金生活になれば多くの人は年金だけでは生活費は足りず、貯蓄を取り崩していくことになります。

厚生労働省令和2年厚生年金保険・国民年金事業の概況』より65歳以上男性の平均受給額(厚生年金

【日本の正社員の月収と推定年収の推移】

~19歳:207,600円/2,653,600円

20~24歳:246,300円/3,400,800円

25~29歳:295,000円/4,284,900円

30~34歳:338,000円/4,988,200円

35~39歳:376,400円/5,602,500円

40~44歳:404,300円/6,060,200円

45~49歳:426,800円/6,428,300

50~54歳:454,700円/6,926,900円

55~59歳:456,400円/6,949,000円

60~64歳:370,500円/5,299,500円

出所:厚生労働省令和3年賃金構造基本統調査』より算出

※数値左:月収(きまって支給する現金給与額)、右:推定年収

定年後に訪れる、収入減につぐ収入減。老後がどれほど続くかは、誰にも分かりません。貯蓄がいくらあろうと、次第に蓄えが減っていく生活が待っているわけです。そこで困窮する人の特徴としてよくあるのが、「現役時代と同じ水準で生活をしている人」。

定年後の収入減を見据えて「生活をダウンサイジング」していくことは重要ですが、50代で給与のピークを迎えているからでしょうか。その調子で60代も過ごしてしまう人は意外と多く、年金生活に突入しても浪費癖は治らないまま、気が付くと生活が困窮……そして破綻を迎えてしまう人は珍しくないのです。

年金生活になってから、生活水準を落とせばいい……そう思うでしょう。しかし、これがなかなか難しいことで、一度上げた生活水準はなかなか下げることはできないというのです。だからこそ、定年となる60歳で一度生活を見直し、給与収入のあるうちに、徐々に老後を見据えた生活水準に変えていく、これが老後破綻を避けるためのポイントになるのです。

(※写真はイメージです/PIXTA)