赤い体に繊細なレースをまとうおしゃれイカ?実はこれ産卵したてのナツメイカで、レースのようにみえるのはおよそ360個もの卵でできているのだ。
アメリカのモントレー湾水族館研究所がとらえた光景は、この海域に詳しい専門家にとっても非常に珍しく、貴重な映像だという。
水深1,390mの深海で、我が子が無事に孵化できるよう、大量の卵を引っ張りながら泳ぐイカのお母さんの姿に生命の神秘を感じる。
Deep-sea squid mom carries eggs to keep them safe from predators
今年7月、アメリカのカリフォルニア州モントレー湾の水深およそ1,390mで発見されたナツメイカは、レースというかビーズ編みというか、繊細な作りの白っぽいシート状のものをつけて泳いでいた。
よく見るとそれはとても小さな半透明の卵が大量に集まったものだった。
そう実はこのイカ、自分が産んだ卵を運んでいるのだ。
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赤ちゃんが無事に誕生できるよう、自分と同じくらいの長さの卵のかたまりと引きながら泳ぐイカのお母さん。
「この子たちを守らなくっちゃ!」とばかりに暗い海の中を進んでいく。
卵の数は360個!非常に貴重なシーンを記録
無人潜水機の4Kカメラでこの様子をとらえたモントレー湾水族館研究所(MBARI)によると、このイカはツツイカ目 開眼亜目 ナツメイカ科に属するイカの一種で、シート状の卵の数はおよそ360個あるという。
またこの海域を頻繁に訪れる研究者にとっても卵を運ぶ泳ぐイカの姿は非常に貴重で、同様のシーンを見たの今からおよそ17年前の2005年。これでようやく2度目だそう。
その生態はまだ謎が多く、これらの深海イカの育児方法もはっきりとわかっていない。
イカと同じ頭足類のタコのメスは、一般に産卵後に孵化を見届けるとまもなく息絶えることがわかっている。
しかしイカの場合は、海底にゼラチン状の卵のかたまりを産みつけると考えられており、現時点で確実に抱卵するとわかっているのはツツイカ目に属する3種のみだという。
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とはいえ今のところイカのメスも、大切な赤ちゃんが誕生するまで捕食者から卵を保護し、孵化が終わった後に死ぬと考えられている。
タコのメスと同じように、1匹でも多くの子どもに強く健康に育つチャンスを与えるため、無防備な卵を極限まで守り抜くであろうイカのメス。
単身で泳ぐほうがずっと身軽なはずなのに。大量の卵を肌身離さず運ぶこのイカも、命がけで孵化を見届けると同時に寿命を迎えてしまうんだろうか。
光がほとんど届かない深海でも生命のリレーは続く。この母イカのその後はわからないし食材としてのイカもやっぱりおいしいんだけど、もうじき生まれる360匹の赤ちゃんの無事をつい願いたくなっちゃうな。
References:sciencealertなど /written by D/ edited by parumo
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