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安倍元首相の外交での功績などを理由に国葬の開催が決定された(写真:共同通信

9月27日、賛否両論が渦巻くなかで営まれることとなったのが、故・安倍晋三元首相の「国葬」。実施直前の共同通信世論調査では、賛成38.5%に対し、反対は60.8%。反対は賛成の1.5倍以上を占めていた。国会での審議を経ず、閣議決定のみで国葬準備を“強行”してきた岸田内閣に対し、「開催反対」と声を上げたのは、全国の市民団体をはじめとする一般市民だ。

9月22日に、北海道監査委員に意見陳述した北海道すばる法律事務所の池田賢太弁護士は、国葬に反対する理由を次のように話す。

「現職の国会議員のまま亡くなった安倍元首相の葬儀が国葬になると、特定の政治家を象徴化して、礼賛・称賛することになり『法の下の平等』をうたう日本国憲法に完全に違反します」

かつてあった国葬に関する法律「国葬令」は、’47年に失効しているため、現在は国葬を定義する法律がない。そのため政府は、内閣府設置法にある「国の儀式」であるとみなして国葬を行うとした。岸田首相も、国民には「弔意の表明を強制しない」と述べていたはずだが……。

「該当する法律がないのに『国葬』として行うわけです。当日は弔旗の掲揚や黙とうが全国的に見られ、報道も国葬一色に……。二階俊博自民党幹事長が『黙って手を合わせて見送ってあげたらいい』と発言したのもしかり、“同調圧力”という名の事実上の“強制”になるのです」

池田弁護士は「憲法違反」「法律違反」にあたる国葬に鈴木直道北海道知事が公費で出席することの不当性を訴え、差し止め措置を求めて住民監査請求を起こした。これは京都府大阪府兵庫県と4道府県同時に起こしたものだったが、同様に異議を唱えた団体は、全国各地に存在する。

■国民は“二重に税金を使われてしまう”事態に…

茨城県・水戸翔合同法律事務所の谷萩陽一弁護士は、税金が経費として使われることを問題視する。

「まず、憲法違反状態である国葬に税金が使われるのは許されない。そして予備費からの支出、つまり国会で審議されていない支出は、財政民主主義の原則に反します」

その「国葬費用」に関しても、谷萩弁護士は、国の“やり口”に憤る。

「費用について、政府は当初『2億5千万円』と発表しましたが、野党の追及や報道を受けて『16億6千万円』に訂正しています。後で『もっとかかりました』と事後報告する恐れだってある。小さく見せかけて、大きく使うという手法は国民を欺く大問題です」

そして地元・茨城県の国葬対応にも問題があると続ける。

「大井川和彦茨城県知事は、『国から招待されたものに県知事が行くのは当然』と出席と公金支出を説明しました。しかし、法的根拠のない国葬への出席は『地方公共団体の事務』に当たるとは言えません。公金での出席は地方自治法違反です」

このように、国は16億6千万円の費用を、各知事らは出席にかかる諸費用を、それぞれを公費、つまり税金から計上しようとしているのだ。

「国葬が行われたことで、私たち国民は、国や(首長らが出席した)各自治体から、二重に税金を使われてしまうことになるのです」

このようなことが“前例”になれば、国の予算の使い方が悪いほうにエスカレートする恐れがあると谷萩弁護士は懸念する。

岸田首相のお膝元・広島県でも動きが。9月21日に住民監査請求の公開口頭陳述を行った法律事務所八丁堀法律センターの山田延廣弁護士は、国葬強行後の「次の一手」についてこう語る。

「もし湯㟢英彦広島県知事と中本隆志県会議長が国葬に出席して、公金が支払われた場合には、支払い金額全額の返還請求など必要な措置を求めることになるでしょう」

葬儀終了後も、全国で続いていく市民からの国葬に対する追及。それらに答える形で、私たちが納得のいく説明がなされる日は訪れるのだろうか。