渋谷のシンボルでもある渋谷スクランブル交差点は、斜め方向の横断歩道が片方しかありません。なぜもう一方向の斜め横断歩道は無いのでしょうか。

スクランブル交差点といえばここ

渋谷、そして東京を象徴する風景である「渋谷スクランブル交差点」。1日の通行人数は50万人と言われ、「最も忙しい交差点」として取り上げられることもあります。

スクランブル交差点」とは、歩者分離式の信号制御で、歩行者交差点内を自由な方向へ横断できるようにしたものです。一般的には斜め横断が可能であることを示すため、斜め方向に横断歩道が2本引かれ、「バッテン」のようになっているのが特徴です。

しかし、渋谷スクランブル交差点は、その「斜め方向の横断歩道」が、ハチ公広場と商業ビル「QFRONT」をつなぐ1本しかありません。もちろん歩行者用信号が青であれば交差点内は自由に横断できますが、なぜこのような横断歩道になっているのでしょうか。

都内の横断歩道の設置管理を行う警視庁に聞いたところ、以下のとおりでした。

――なぜ渋谷スクランブル交差点には斜め横断歩道が一本しかないのでしょうか。

この交差点は一般的な十字路ではなく、5本の道路が集まる「5叉路」という特殊な交差点形状になっています。また、横断歩行者の動線や交通量、通過車両への影響等をふまえ、このような横断歩道の形状になっています。

――これまで、「もう一方の斜め横断歩道」の設置が検討されたことはあったのでしょうか。

過去にそのような検討を行ったという資料や記録はありません。

――これまで、地元などから設置の要望が上がったことはあったのでしょうか。

そのような資料や記録もありません。

――今後横断歩道の構造について、変更される予定はあるのでしょうか。

現在のところ、そのような予定はありません。

渋谷スクランブル交差点はいつからあった?

渋谷駅前の交差点スクランブル交差点となったのは1973(昭和48)年。折しも60年代後半に百貨店が次々と開業し、同年に渋谷パルコが誕生、若者文化の発信地として成長を始める時期でした。

航空写真を見ると、当時から斜め横断歩道は、ハチ公広場から伸びる1本だけだったようです。逆に隣接する道玄坂下交差点(渋谷109の前)は、当時から「バッテン」型の、両方向に斜め横断歩道が伸びる構造になっていました。

かつての渋谷スクランブル交差点は、QFRONTを囲むように3本の横断歩道が伸びる形でした。しかし交差点縮小の工事により、QFRONTの前に広い空間が生まれ、現在はその空間から横断歩道が伸びています。道玄坂側の横断歩道も、渋谷センター街と道玄坂をまとめて横断していたのが、現在はバックし、道玄坂のみを横断する形状に変更されています。

日本のスクランブル交差点の代名詞ともなっている渋谷スクランブル交差点。しかし自身は特殊な形状として、まもなく半世紀を迎えます。

渋谷スクランブル交差点(画像:写真AC)。