現在ABEMAで配信中のウェブドラマ『MIMICUS』。韓国では2022年7月22日から配信開始され、9月14日に全16回で最終回を迎えた同作品は、「真似をする『ミミック(MIMIC)』が幅を利かせる芸術高校で『本物』になるための熾烈な生存期を描いたハイティーンドラマ」がキャッチフレーズ。日本で言う芸能高校にあたる芸術高校と韓国のアイドル業界を舞台にしたティーンドラマということで、特にK-POP好きや韓国芸能界に興味がある人ならより楽しめる仕掛けが随所に詰め込まれている。しかし決して爽やかで明るい学園モノでは終わらない、サスペンスフルな作品だ。今回はその作品注目ポイントを紹介したい。

(参考:【写真】『MIMICUS』にカメオ出演する日本人アイドル

KPOP好きなら気になるキャストと多彩なカメオ出演アイドル

 芸能高校が舞台ということもあり、主要キャラクターは、アイドルデビューを目指す高校生や現役高校生アイドルや練習生。主人公は誰かを真似することも自分が真似されることも極度に嫌う大韓公演芸術高校の生徒なのだが、大手芸能事務所JJエンターの有名な練習生「チ・スビン」を真似ていると噂になり事件に巻き込まれてしまう。そんな主人公、ハン・ユソンを演じるのはB.A.P出身のユ・ヨンジェ。また、ユソンのクラスメイトでJJエンタ所属のアイドルグループICEでは末っ子ながらセンター務めるオ・ロシ役を、プロデュース48出身で元IZ*ONEのチョ・ユリが、ユソンとロシの友人で、芸能高校のVlogコンテンツを載せるYouTubeチャンネルを運営しているシン・ダラ(本名のクォン・ナラ名義)をwoo!ah!のナナが演じている。(同じくwoo!ah!のウヨンは、カメオ出演で登場する)

 まだアイドルになる前のロシが駅でキム・ウソクの誕生日広告を見ていたところに本物のキム・ウソクが現れて励まれる場面は、ロシがアイドルを目指すきっかけのひとつとなるが、プロデュース48とプロデュースX101の人気出場者同士の出会いという点でも、見どころになる場面だろう。キム・ウソクは今作の演出脚本を務めたハン・スジが同じく演出を担当したドラマ『TWENTY TWENTY~ハタチの恋~』にイ・ヒョンジン役で出演していたが、同じくハン・スジが演出したA-TEENシリーズでヨ・ボラム役を演じていたBilllieのスヒョンも今作にカメオ出演している。

 今作のOSTを歌ったENHYPENのソンフンは作中でもアイドルとして登場するが、チ・スビンの先輩練習生である苦労人ウ・ジェヨンを演じるオ・ジェウンはフィギュアスケーター出身。フィギュアスケーター出身のアイドルと若手俳優が出演しているというのも面白い符号かもしれない。その他にもカメオでCherry Bulletのヘユン、レミ、メイ、GoldenChildのイ・チャンジュンやAB6IXのウンなども出演している。どの場面の誰が出演しているのか探してみるのも楽しみのひとつと言えるだろう。

 アイドル以外のキャストも豪華だ。ストーリー上で大きな鍵を握るチ・スビンの母親でJJエンターの社長を努めるイ・ミヨンを演じるのは、今年韓国だけでなくNetflixで人気を博したドラマ『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』にも特別出演しているイ・ヨンジ。怪演とも言えるほど鬼気迫る彼女の役柄や演技も要注目だ。

 また、1話でダンス実技試験結果の名簿にサインするシーンには2002年生まれの現役アイドルの名前が使われている。ENHYPENのジェイジェイク、Kep1erのチェヒョン、X1のジュノやドンピョ、NCTのソンチャンTXTのテヒョン、LOONAのヨジン、fromis_9のギュリチェヨンなど、お馴染みの名前を探して見てはいかがだろうか。

・現代のアイドル業界のシビアな裏側を描くストーリー

 今作の舞台はアイドルを目指す10代が多く通う大韓公演芸術高校。K-POPアイドル好きならわかる、モデルになっているかも?という学校がいくつか浮かぶかもしれない。芸能高校ならではの人間関係や生徒たちの行動原理、学校内でのオーディションシステム、家が裕福ではない練習生の実情や芸能事務所内での軋轢。アイドルグループ内でのイジメや厳しい体型管理など、消して楽しいことばかりではない裏側も描かれている。

 芸能高校が舞台でリアルのアイドルがたくさん出演していた韓国ドラマといえば、2011年の作品『ドリームハイ』が有名だ。ペ・ヨンジュンが理事長を務める芸能高校が舞台でJ.Y.Parkやオム・ギジュン、そして『MIMICUS』にも出演しているイ・ヨンジが教師役として出演。生徒役には、今やトップスターとなったキム・スヒョンや「国民の初恋」と呼ばれる前のmissA出身のスジ、2PMのテギョンとウヨン、T-ARAのウンジョン、IUなどが出演し大ヒットドラマとなった。似たような舞台設定ながら10年前のこの作品と比べると、『MIMICUS』の描く世界はよりシビアでリアリティがあるようだ。それゆえにまた現代の若者ならではのひたむきさも伝わる今時の青春ストーリーとなっている。

・若者の青春成長譚だけではないサスペンスフルなストーリー

 今作はキャラクターたちが様々な出来事や困難にあいながら成長していくハイティーンドラマだが、背景にある物語は決してさわやかだったり青春ストーリーらしいものだけではない。タイトルの『MIMICUS』は周囲の背景に擬態することで知られるタコ、ミミックオクトパスの学名Thaumoctopus mimicusから来ていると思われる。実際、宣材や作中でもタコのモチーフはよく見られる。

 芸能高校に通っている主人公のユソンはある日、ふとしたことから写真がネットで拡散され、「大手事務所所属の有名練習生チ・スビンに似た人」として有名になってしまう。子供の頃から人を真似することも真似されることも嫌いだったユソンだが、学校内で発表しようと練習していたダンスステージが、スビンのものとそっくりだということに発表会当日に気づき、学校から逃走する。一方のスビンは練習生として所属するJJエンタの社長である母親との関係にうまくいかないものを感じている。家は裕福で何不自由ない生活だが、母親が自分を通して別の誰かを見ているような気持ちに苛まれて生きてきた。やがて自分の母親とユソンの母親の因縁を知り、スビン自体も自分こそがミミックなのではないかと悩み始める。やがてJJエンター企画の大型デビューサバイバル番組「MIMICUS」の開催が発表され、ユソンはそれに出場することを決めるのだった。

 本筋は学園ものと芸能界ストーリーだが、そこに母親との関係や親世代からの因縁というような韓国ドラマらしいやや濃厚でドロドロした背景が加わることで、物語により深みを増している。K-POPが好きな人はもちろん楽しめる内容だが、アイドル好きや若者だけではない幅広い年齢層にも刺さるような作品に仕上がっているのではないだろうか。

(文=DJ泡沫)

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