日韓両政府は28日夕、北朝鮮が短距離弾道ミサイル2発を朝鮮半島東の海上に向け発射したと発表した。北朝鮮弾道ミサイルを発射するのは、短距離弾を試射した25日に続くものだ。米韓は26日から合同軍事演習を実施中で、29日にはハリス米副大統領が訪韓する予定であることから、北朝鮮が武力示威に動いた可能性がある。

しかしその一方、朝鮮人民軍北朝鮮軍)の内情は惨憺たるものだ。

軍の中枢機能を担う総参謀部の指揮部。超の付くエリートが集められた集団だけあり、待遇も非常に良かった。ところが最近、その指揮部内で不安が広がっている。いかなる場合にも止まることのなかった食糧配給が、2カ月に渡って止まってしまっているのだという。詳細を、デイリーNKの軍内部情報筋が伝えた。

総参謀部指揮部の食糧供給所は、9.9節(共和国創建日、建国記念日)に合わせて、遅配となっていた8月、9月の2カ月分の食糧配給を実施した。ただし、勤務する軍官(将校)本人の分だけで、家族の分は配給されなかった。

規定では、1人あたり1日700グラムの食糧が配給されることになっている。単純計算すると、1ヶ月に穀物、野菜、油など21キロが配給されるが、1人なら充分な量でも、例えば4人家族がこれで1カ月食べつなぐにはかなり苦しい。

食糧供給所は「11月になれば、家族分の配給もまとめて行えるようだ」と曖昧な答えを繰り返すばかりで、軍官の家族の間では「もらえないのではないか」と、不安が高まっている。

去年の場合、家族分の配給が1カ月だけ遅配したことはあったが、今年は2カ月分。こんなことは近年なかったことだという。

そんな状況にもかかわらず、上部は愛国米と称してコメの献納をさせており、「このままでは粥を食べかねればならない」と嘆きの声が上がっている。

異例とも言える配給の遅配について情報筋は「国防省後方総局が総参謀部に割り当てた食糧の在庫が昨年の半分にもならず、新米が入ってくるまで今の在庫で持ちこたえてくれとの通知を受けてのこと」だと説明した。

ただ、麦、ジャガイモ、大豆、トウモロコシなども不作が伝えられており、コメの豊作も期待できないのが現状。多少マシにはなるかもしれないが、根本的な解決は難しいだろう。

軍官たちは「一つでも口減らしをしなければならない」と、両親や民間人のきょうだいの住む家に家族を疎開させている。また、直属区分隊の下戦士(二等兵)のうち、実家の経済状況の良好な者を密かに選び、10月から2カ月間の冬季訓練準備期間の間に、彼らを連れて実家に帰宅させ穀物を調達してくるという、苦肉の策を取っている。

かつては社会的地位が高く、誰もが羨む職業だった軍官だが、今では苦境に追いやられ、通常勤務や訓練にも支障をきたす始末。末端の兵士の状況はさらにひどく、栄養失調で一時的に帰宅させられたり、食べ物欲しさに農場や民家を襲撃したりするなどしている。

ミサイル発射で外に向けて強がってみても、軍の実態が末期症状にあることは、今や国民すべてが知っているのだ。

2019年8月6日に行われた「新型戦術誘導弾」の試射を見守る金正恩氏(2019年8月7日付朝鮮中央通信)