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 エンゼルス大谷翔平は現地9月29日(日本時間30日)、本拠地でのアスレティックス戦に先発し、8回(108球)を投げて、無失点、被安打2、10奪三振という内容で15勝目を挙げた。ノーヒットノーランも見えた大谷のピッチングは、エキスパートの目にどう映ったのか。田中将大ダルビッシュ有を育て、「日本一の投手コーチ」と称された佐藤義則氏に、大谷の投球内容を分析してもらった。

 お見事だった。立ち上がりはバラついていたが、徐々にコントロールも落ち着き、3回くらいからは手が付けられなくなった。大きく横に曲がるスライダーと小さく曲がるスライダー、さらに縦に落ちて空振りを取るスライダーの3種類を投げ分けていた印象で、右バッターへの素晴らしいツーシーム以外は、ストレート系をほぼ投げなかったように見えた。

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 8回途中までで108球を投げた中で、ボール判定だったのが30数球。5割以上の球をストライクゾーンに投げきれたことに力を感じた。やはり、ストライクゾーンに球が来るようになると、大谷の球は力があるのでファールになってカウントを稼げる。それがすごく効いていた。

 1ボール2ストライクのカウントが多かったのが、大谷がイメージ通りにピッチングをできた証拠だと言える。相手のバッターがバットを振ってくれてファールになると、「このバッターはどんなボール待ってるな」と察知できる。今日はそういう場面が結構あった。小さいスライダーストライクを取り、縦のスライダーで三振を取る流れだ。右バッターには大きなスライダーも投げていたので、ほとんど3種類のスライダーで組み立てていた。あれだけ真っすぐを投げないで抑えられたのは、正直びっくりしている。

 本人も今日は余裕を持って投げられただろう。三振を取っている時はしっかり腕が振れていたのも好印象だった。

 ただ、ノーヒッターが途切れた8回に関して言うと、少し疲れてきた印象はあった。具体的に言えば、スライダーの曲がりが小さくなっていたのだ。左バッターに対して、外からストライクに入ってくる曲がり切らないスライダーを投げ、素直に左方向に打たれてしまった。

 結果論だが、あそこで縦に空振りを取りに行くスライダーを投げていたら、どうだったのか。大谷自身が首を振って選んだ球なので仕方ないが、少し残念ではある。

 私も長くピッチングに携わっているので経験してきたが、やっぱり試合前半と後半を同じ考え方で投げるとミスが出てくる。特に100球近くなってきたら、どうしてもピッチングの精度が落ちるもの。前半は曲がっていた球でも、後半になると確実に曲がりが悪くなる。

 キャッチャーにも「前半の良いボールを投げていても、90球や100球を超えてきたら、同じイメージでバッターと対戦したら打たれる」という話をよくする。バッターは3打席目で慣れてきてる一方で、ピッチャーは球数を投げて疲れてきているわけだ。この違いを把握しておかないと、やはり打たれてしまう。

 だから、スライダーが曲がらずにカットボールに近いくらいまで落ちていた8回に、その球で勝負したのは少し悔いが残る。あそこでもっといろんな球種を混ぜられたら、ノーヒットノーランもできたのではないか。もし9回まで行っていたら、「ノーヒットノーラン」と「規定投球回数クリア」という2つの偉業を同時に達成していたかもしれない。そうなったら、とてつもない盛り上がりだっただろう。

 ただ、この試合で注文を付けるなら、本当にそこだけ。この試合で8イニングを投げた大谷は、「投打W規定クリア」まで「残り1イニング」のところまで来ている。もう目をつぶってもクリアできる段階だと思うので、最終戦での偉業達成に期待したい。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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