女優の永野芽郁が主演する最新映画『マイ・ブロークン・マリコ』が公開中だ。本作で永野は、これまでドラマや映画で見せてきた「明るく、まっすぐ」というイメージを大きく覆すことに成功している。

【写真】永野芽郁、クランクイン前から練習した喫煙シーン

 平庫ワカの同名漫画をタナダユキ監督のメガホンで実写化する本作は、永野演じるやさぐれたOL・シイノトモヨが、親友の遺骨と共に旅をする姿を描く。

 うっ屈した日々を送るOL・シイノトモヨは、テレビのニュースで親友のイカガワマリコ(奈緒)が亡くなったことを知る。学生時代から父親に虐待を受けていたマリコのために何かできることはないか考えたシイノは、マリコの魂を救うため、強奪した遺骨を抱いて2人で旅に出ることに…。

 これまで、連続テレビ小説『半分、青い。』(NHK総合ほか)のヒロイン・鈴愛や数々のドラマで見せてきたキャラクター、また、トーク番組で見せる本人のほんわかしたキャラクターも相まって、「明るく、まっすぐ」というパブリックイメージが定着してきた永野。

 しかし、本作で演じるシイノはそれらのイメージを根本から覆す。映画は冒頭、中華料理店で一人豪快にラーメンをすする永野の姿からスタート。そのあと、パンツスーツで大股開きしてタバコをくゆらすシーンで、観客は「この映画の永野はこれまでと根本的に違う」と直感するはずだ。なお、非喫煙者の永野は今回、喫煙のしぐさを自然なものにするため、ニコチンの入っていないタバコでの練習をクランクイン前から重ねたという。

 理不尽な上司からの激しい叱責を受けても、全く動じないシイノ。自分以外の誰かにどう思われようが気にしない。そうした芯の強さを感じさせる。上司の怒号を背中で浴びても、シイノは我関せずでオフィスを飛び出し、自分の今本当にすべきと思うことに向かって行動する。

 その一方、シイノは目的を達成するため、慎ましく品性を感じさせる「営業ボイス」を発して相手の警戒心を解く場面も。いざとなれば「女性」に擬態もできる。一匹狼でありながら、強かさも兼ね備えたヒロインだ。

 そんなシイノだけに、マリコの死を知った瞬間の虚をつかれた反応が「彼女にとってマリコがどれだけ大きな存在だったか」を物語る。マリコの死を知ったあとも、表面的には平静を保っていたシイノ演じる永野が、包丁を握りしめ、もうそこにはいないマリコと共鳴しながら感情を爆発させるシーンには、多くの観客が感情を揺さぶられるはずだ。

 永野自身も先月の完成報告試写会に出席した際には「もしかしたらファンの方は『えー、芽郁ちゃんじゃなーい』ってちょっと衝撃を受けるかもしれないですが(笑)、絶対に見て後悔はさせないっていう自信があるので、すごくうれしいです」と、これまでの自身の役柄とのギャップに触れつつ、一方で、この映画で見せた新しい自分への手応えをのぞかせていた。これまでの永野芽郁ではない、永野の新境地。ぜひ劇場で目撃してほしい。

 映画『マイ・ブロークン・マリコ』は公開中。

映画『マイ・ブロークン・マリコ』場面写真 (C)2022映画『マイ・ブロークン・マリコ』製作委員会