欧米では、小学生のときからお母さんに膣(ちつ)の洗い方やケアを学んだり、かかりつけの婦人科で体について相談したりするのが一般的です。しかし日本では、直近で妊娠や出産の予定がない限り、女性が自分の体について学ぶ機会は、なかなかありません。

 そんな中、ニーズの高まりが期待されているのが、フェムテック(FemaleとTechnologyからなる造語。女性のライフステージにおける健康課題を、テクノロジーで解決するサービスや製品を指す)の分野。今後、さまざまな製品・サービスが登場することによる市場拡大が期待されています。今回は、9月23日に開催された講演会「今日からできる!頑張る女性に贈る一生輝けるフェムケア術」(会場:東京・サンクチュアリ出版)で話題に上った「生理痛」について紹介します。

「プロスタグランジン」の過剰生成が原因

 女性には生理痛があるとよく聞きます。まず、生理痛が発生するメカニズムについて、日本初の「膣プランナー」の「ちつ姉」こと山口明美さんは次のように言います。

「生理痛の正体は血が出ているからではなく、プロスタグランジンという物質のせいです。子宮内膜が剥がれると子宮と膣をつなぐ子宮頸(けい)管から経血が押し出されます。プロスタグランジンは子宮筋を収縮させて経血を押し出すために子宮内膜から生成されます。何らかの原因でプロスタグランジンが過剰に生成されると子宮筋が過剰に収縮します」(ちつ姉)

「例えるなら、『マヨネーズみたいなチューブをギューっと押す力=子宮筋の過剰な収縮』が生理痛の正体です。プロスタグランジンは痛みのもとだけど、ちゃんとした役割もあるのです。生理痛のときに鎮痛剤を飲むと効くのはプロスタグランジンの合成を阻害することで、痛み物質や子宮筋の過剰収縮を抑えているためです」(同)

 また、山口さんは、「生理痛があるのは当たり前ではない」とも言います。どういうことでしょうか。

「学校や会社に行くのがつらいほど痛みが強い場合、『月経困難症』という病気として治療の対象にもなります。昔は、生理痛は我慢すべきという風潮もありましたが、痛みは人によって異なり、人と比べるものでもないので自分がつらいと思ったら我慢することなく婦人科に相談するのがいいでしょう」(ちつ姉)

「また痛みの原因は必ずしも生理痛とは限りません。子宮や卵巣に異常がないのに痛みが出る場合があるのです。子宮口が未発達で子宮頸部が狭いためスムーズに血を押し出せず、子宮筋が過剰に収縮して痛みが強くなります。体質的に子宮内膜が厚くプロスタグランジンが多く合成される人、血流の悪い人も当てはまります」(同)

 他にも、鎮痛剤を飲んでも効かずに日常生活に支障が出るなど、激しい痛みがある人は、子宮の病気が原因の場合もあるので注意が必要になるそうです。

食べ物にも注意が必要

 山口さんは、生理痛がひどい人の原因は「血流の悪さ」にあると言います。血流を悪くする3大要因が「冷え」「栄養不足」「運動不足」。だから生理中の食べ物が大切です。ここで、おすすめの食べ物を簡単に紹介します。

<血液をサラサラにする> 納豆、豆腐、アボカドアーモンド
<鉄分を補う> レバー、赤身肉、ホウレンソウ
<体を温める> ショウガココア

「良さそうでNGな食品もあります。コーヒー、緑茶、紅茶などのカフェインを含んだ飲料です。プロスタグランジンは子宮以外に胃腸の働きにも影響を与えます。生理中に下痢になりやすいのもその影響。だから消化に悪いものや刺激物もNGです」(ちつ姉)

 今回の講演会は、漫画家の若林杏樹さんが、山口さんに教えてもらう様子を題材にした本「なんとなくずっと不調なんですが膣ケアで健康になれるって本当ですか?」(サンクチュアリ出版)がベースになっています。

 本書は医師と専門家が完全監修を行っています。監修者には、安田進太郎氏(医学博士)、和田浩幸氏(一般社団法人日本美容整骨協会理事)、高須賀千絵氏(ラヴィコーポレーション代表)、足立真由美氏(医療法人涼葵会Wクリニック総院長)、宮崎綾子氏(日本産科婦人科学会、産婦人科専門医)らが名を連ねています。

 女性の健康問題を解決することは、企業や社会にとっても大きな課題であることが認識されてきています。まずは、私たち一人一人が自分の体のことについて理解することが大切です。膣を守ることは、自分を守ること。後悔しないために、多くの女性に読んでほしい一冊です。

コラムニスト、著述家、明治大学客員研究員 尾藤克之

講演会の様子。漫画家の若林杏樹さん(下段左)と「ちつ姉」こと山口明美さん(下段左)