ネット上で白熱した議論がかわされる話題として、定番ともいえるのが「専業主婦優遇」。「なぜ、会社員の専業主婦ばかり、こんなによい思いをするのか!」といったものです。しかし、そんな専業主婦優遇も廃止が濃厚だとか。みていきましょう。

専業主婦は優遇されすぎ!批判の原因は?

まずは日本の年金制度について、簡単に整理しておきましょう。

日本の公的年金は、日本に住んでいる20~60歳未満のすべての人が加入する「国民年金」と、会社員や公務員がが加入する「厚生年金」の2階建てになっています。さらに3階部分として、企業が任意で設立し社員が加入する企業年金、国民年金の第1号被保険者が任意で加入できる国民年金基金などがあります。

自営業者や学生、無職などは「第1号被保険者」とされ、加入するのは国民年金のみ。会社員や公務員は「第2号被保険者」とされ、国民年金厚生年金に加入します。そして第2号被保険者に扶養される20~60歳未満の配偶者、専業主婦(または夫。以降は便宜上、専業主婦とだけ記します)は「第3号被保険者」とされ、国民年金にのみ加入します。

この「第3号被保険者」が昨今、批判の的となっています。それは、パートなどで働く専業主婦が直面するいくつかの“壁”に由来します。

まず「103万円の壁」。自身の所得税は、年収103万円以下であれば非課税。年収103万円以上だと、税制上、扶養から外れます。そのため、パートなどで働く際、年収103万円がひとつめのボーダーラインになります。

次に「106万円の壁」。一定規模以上の会社でパートなどをすると、年収106万円以上で社会保険に加入する必要が生じ、給与から厚生年金と健康保険を負担することになります。社会保険上の扶養から外れる、ひとつめのラインが106万円です。

そして「130万円の壁」。一定条件に該当しない場合でも、年収が130万円を超えると、すべての人が社会保険に加入することになります。社会保険上の二つ目のラインといったところでしょうか。

その上が「150万の壁」。年収が150万円までなら、夫は38万円の「配偶者特別控除」を受けることができます。ちなみに150万円~約201万円は、配偶者控除の適用となりますが、その額は段階的に減額されていきます。

このように、専業主婦にはさまざまな「壁」が存在しますが、ようはこれを超えなければ、多くのメリットを得られるということ。給与がなかなか上がらない昨今、特に子育て世帯はありがたいものになっているのです。

専業主婦優遇…不公平だし、女性の就労の邪魔にもなっている

ただし、このような優遇措置ができたのは、1980年代。片働きが圧倒的に多かった時代です。メリットを享受できる人が優勢だったので歓迎されていました。しかし時は流れ、いまや、共働き世帯が片働き世帯の2倍近くいるといわれているなか、「専業主婦優遇は時代に合っておらず、不公平だ」という論調が強くなってきたのです。

・自営業者の妻は保険料を納めないといけないのに、会社員の妻に納付義務がないのは不公平だ

・第3号被保険者に留まろうと調整を図る原因になっていて、女性の就労の阻害になっている

第3号被保険者制度を廃止する方針は、すでに厚生労働省から示されているといわれています。2014年『社会保障審議会年金部会』の資料では、「第3号被保険者制度をやめることについては異論がないと思うが……」と記載があり、第3号被保険者制度の廃止は、既定路線だというのです。

また2022年10月からは厚生年金保険の適用範囲の拡大されます。前述の「106万円の壁」の条件として、勤務先の「従業員が501人以上」から「従業員数101人以上」に、さらに2024年には「従業員51人以上」まで拡大します。将来、年金をもらえる人を増やす施策ではありますが、一方で、第3号被保険者制度廃止への試金石という見方をする専門家も。

しかし専業主婦優遇のメリットを享受できる世帯は、いまだに何百世帯となりますし、縮小はありえても、いきなり廃止はないだろう、という見方が強いようです。

片働きにせよ、共働きにせよ、高齢化がさらに進むなか、現在の水準の年金額を手にする可能性は低く、すべての人に自助努力が求められています。専業主婦優遇に制限されることなく、働ける範囲で働き給与収入を得ることが、老後の安心のためにも、有力な選択肢だといえそうです。

(※写真はイメージです/PIXTA)