毎年、誕生月に送られてくる「ねんきん定期便」。老後の設計に役に立つツールですが、そこに記載されている年金額をそのまま受け取ると痛い目にあいます。みていきましょう。

毎年届く「ねんきん定期便」…しっかりと確認が必要

毎年、誕生月に送られてくる「ねんきん定期便」。年金を受け取るまでだいぶ先といった世代からしたら、「ふーん」といって捨ててしまったり、どこに片づけたか分からなくなっているでしょうか。一方で、老後が見えてきた世代からすると、老後を設計するのに大変役に立つものです。

ねんきん定期便は、年齢によって内容が異なります。「50歳未満」は①「直近1年間の年金の月別納付状況」、②「保険料納付額の累計」、③「年金加入期間の累計」に加え、④「これまでの加入実績に応じた年金額」が記載されています。「50歳以上」になると、①から③に加え、⑤「老齢年金の種類と見込み額」が記載されています。

50歳未満はあくまでもこれまでに納付した保険料の累計額を年額としたものであり、実際に将来受け取れる年金額ではありません。一方、50歳以上は、このまま60歳まで同じ条件で加入し続けた場合にもらえる額であり、実際に近い年金額だと考えていいでしょう。

そんな「ねんきん定期便」、最低限チェックすべきは「年金の月別納付状況」。自身が国民年金、または厚生年金の保険料をどの月に納付したか、という情報です。国民年金の場合は、納付されていれば「納付済」、納付されていなければ「未納」と記載されます。厚生年金の場合は納付額が記され、納付されていなければ空欄となります。

そもそも「ねんきん定期便」、2009年に「消えた年金問題」をきっかけに開始されたもの。このときは過去の繁雑な管理体制によって誤りや不備が生じていたものが、オンライン化によって明らかになったもの。もう間違いはないだろう、と考えがちですが、絶対ということはありません。システム上のエラーがあったり、結婚や転勤など、ライフイベントの際の届け忘れがあったり。不備をそのままにしておくと、実際に保険料を払っていた通りに年金がもらえなくなる可能性があるので、注意が必要です。

平均的な給与の大卒サラリーマン、将来「月19万円」を手にするはずが…

実際、厚生年金の受給額は以下の計算式で算出されます。

■加入期間が2003年3月まで

平均標準報酬月額(≒平均月収)×7.125/1000×2003年3月までの加入月数

■加入期間2003年4月以降

平均標準報酬額(≒平均月収+賞与)×5.481/1000×2003年4月以降の加入月数

大卒サラリーマンの平均年収は推定647万円(男性・正社員)。20代前半で340万円程度の年収は、50代のピーク時には800万円を超えてます。

【年齢別・「男性正社員の推定年収」】

20~24歳:3,415,500円

25~29歳:4,518,400円

30~34歳:5,335,200円

35~39歳:6,252,200円

40~44歳:6,844,800円

45~49歳:7,480,400円

50~54歳:8,418,800円

55~59歳:8,334,000円

60~64歳:6,497,600円

出所:厚生労働省令和3年賃金構造基本統計調査』より算出

仮に平均的な給与水準の大卒サラリーマンがいたとしたら、60歳でリタイア後、65歳で手にする年金額は月19万円ほど。一方、元会社員が65歳以上で手にする平均年金額は男性で月17万0,391円(厚生労働省令和2年厚生年金保険・国民年金事業の概況』より)。平均よりも多い年金を手にすることができる計算です。

「65歳で受け取れる年金は月19万円」と「ねんきん定期便」に記載されたものをもとに、老後のプランを考える……堅実な方法かと思われますが、そこにはちょっとした落とし穴が。年金は額面通り受け取れるわけではなく、そこから天引きされることを忘れてはなりません。

年金から天引きされるのは「所得税」「住民税」「介護保険料」「国民健康保険料、または後期高齢者医療保険料」の4点。

まずは「所得税」。公的年金は雑所得となり、所得控除額(120万円+各種控除額)を引いた所得金額に課税されます。「住民税」は、所得金額(年金額から120万円を差し引いた額)から社会保険料や控除額を差し引いた額に、自治体ごとの税率をかけ、調整控除額を引き、一律の均等割りを加えて計算されます。

また65歳以上の年金受給者の場合、「介護保険」は第1号被保険者の保険料が引かれます。そして65歳以上75歳未満であれば「国民健康保険料」、そして75歳以上、または重度障害などで後期高齢者医療保険制度に該当する人は「後期高齢者医療保険料」が引かれます。

天引き額は人によって異なりますが、おおよそ額面の90~95%が年金の手取り額。年金月19万円であれば、17万~18万円ほどと、1万~2万円ほど変わる計算です。

リタイア後、年金だけを頼りにする生活で、月1万~2万円も目論見と異なれば、それはそれは一大事。せっかくの老後のプランも立ち行かなくなるでしょう。このようなことも念頭に、現役時代には余裕をもって資産形成を進めることが重要です。

(※写真はイメージです/PIXTA)