最新の現役世代の平均給与が公表され、3年ぶりの増加と、コロナ禍からの回復を印象付けました。一方で、現役世代には将来不安が拡大する一報も。みていきましょう。

給与は増えたけど、将来の年金は減る!?

国税庁から『民間給与実態統計調査』の最新結果が発表され、1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与は443万円で3年ぶりの増加と、明るいニュースとなりました。月々の平均給料・手当の平均は368万5,000円。単純計算、月々30万7,000円ほど、手取りにすると23万円程度。これが日本人の平均です。

そんなニュースと同時期に伝えられたのが「国民年金5万円台維持」。すべての国民が加入する国民年金の支給を、いまの物価水準で5万円以上に保つというもので、物価高で生活不安が広がるなか、これまた嬉しいニュースかと思われました。しかしさらなる年金不安をあおる結果になったという専門家も。なぜなら、5万円以上に保つために、会社員や公務員が払う厚生年金の保険料や国庫負担で埋め合わせるというのです。厚生労働省の試算では、給付が減る会社員は、世帯年収1,790万円以上と、一部の高所得者層に限定されるとしています。

そもそも5年に1度行われる財政検証では、国民年金の給付を2046年まで減らし続けなければならない、という見方があり、2019年度水準に比べて3割弱ほど下がるとされてきました。2019年の給付は月額6万5,008円。それから3割減ですから4万5,000円程度になるのも仕方がない、とされてきたわけです。

「100年、安心」をうたうも、年金不安は広がるばかり。これはいかんと考えたのでしょう。現役世代の人口減などを反映して実質的に給付を減らす仕掛けである「マクロ経済スライド」の早期停止、それにより「みんなもらえる年金の水準を5万円台に保ちます!」と宣言をするような事態になった、ということでしょうか。

実際は、これから検討に入る段階で、決定ではありませんが、会社員や公務員からは大きな反発も。高所得者層に限るということですが、「厚生年金保険料で穴埋め」というキーワードがいけなかったのでしょう。「なぜ会社員が割を食わなければならないのか!」……当然の反応かもしれません。

現役世代2.1人で高齢者1人を支える日本

年金をより多くの人に……その結果、大きな反発を生みましたが、「厚生年金保険料で穴埋め」よりも、国庫負担が増えることに懸念を示す専門家も。もし制度を見直せば、2040年までに数兆円規模で国庫負担は増えるという試算もあります。結局、誰が負担するのか、見通しは不透明で、結局はよくある「次世代へ先送り」になりそうな予感も。

国立社会保障・人口問題研究所令和元年社会保障費用統計』によると、2019年、社会支出(年金や医療保険、介護保険、雇用保険、生活保護など、社会保障制度に関する1年間の支出)は127兆8,996億円で、前年度比2兆3,982億円の増加。1人当たりの「社会支出」は101万3,700円(同2.1%増)と、初めて100万円台に。「社会保障給付費」は98万2,200円(同2.3%増)でした。

社会支出は高齢化の進展とともに増加。20年ほど前の2000年には82兆0,478億円。150%以上の増加となっています。1人当たりの社会保障費は2000年には64万6,400円だったので、こちらも150%を超える伸びとなっています。

内閣府高齢化白書』によると、2021年の高齢化率は28.9%。現役世代2.1人で1人の高齢者を支えています。高齢化率は2030年に31.2%、2040年には35.3%に達します。このころ高齢者人口はピークを迎えるものの、少子化がそれを上回り、高齢化率の上昇はとまりません。いま20代が高齢者の仲間入りとなる、2065年ごろには38.4%に達し、現役世代1.3人で1人の高齢者を支えるという世の中になっています。

公的年金は100年後まで安心を目指して設計されていますから、「年金がもらえなくなる」というのは非現実的。しかし「年金がいまより少ない」は確実です。内閣府の調査では「生活に困っていない」とする高齢者が6割を超え、大半の高齢者が、ある程度余裕のある暮らしをしていることがうかがえます。しかしそんな夢のような社会はいまだけ。生活に困窮する高齢者は増加の一途を辿ることが予想されます。

そんな老後をただ指を加えて待つわけにはいかず、自助努力が現役世代に与えられた唯一の選択肢。資産形成において長期投資の効果は大きく、時間を味方にして地道にやっていくしかないのです。

(※写真はイメージです/PIXTA)