事業のIT化をはじめたはいいものの、じつのところその全体像は把握できていない……こうした悩みを持つ経営者は少なくないと、株式会社システムシェアードの執行役員、田窪建太氏はいいます。ITベンダーに「カモ」として扱われないためにも、ITリテラシーの重要性をみていきましょう。
「目的が不明瞭なIT投資」は、いくらやってもムダ
筆者はIT業界の人間ですが、異業種の経営層からよくこんな話を聞きます。
「社内のIT化が進まない」「ITの相談相手がいない」あるいは、「社員が学んでくれない」
少し大きな規模の企業ですと、「IT周りは外注しているから、大丈夫」という人もいます。
IT導入やシステム化を求める理由は売上アップやコストダウン、生産性向上などさまざまかと思いますが、いまあなたが行っているIT投資、本当に効果をあげているのか、しっかりと追えていますでしょうか。
――ITシステムは使わなきゃダメだから……周りの社長もこのSaaS(※)を使っているから……とりあえず使っておけば良いんだ!
※SaaS:「Software as a Service」の略。サービスとしてのソフトウェアを意味しており、ベンダーが提供するクラウドサーバーにあるソフトウェアを、インターネット経由してユーザーが利用できるサービスのこと。
このような現状になってはいませんか?
「ITに関する知識不足」は、経営を圧迫する
IT導入側である筆者がこんなことをいうのも何ですが、もしあなたがITについて詳しくないのであれば、正直我々ITベンダーにとっては良い「カモ」です。
かつ、「ITはよくわからないからお任せするわ」なんて言葉をいただけた日には、年間でどう提案して売上を増加させていくかについて綿密に計画し、営業に指示をだすと思います。
特に、ITツールを導入できれば、導入費に加えて運営していく際の保守費も提案できますから、「社長にお手間をかけないように、数名サポートエンジニアをご提案しますね!」と言います。
導入費が仮に200万だったとしても、その後の運用、保守体制で月100万もらえたら、ワンショットよりLTVで計算できますから、ベンダー側としてはうれしい限りです。
このような形で、今後、DXが進みSaaSが乱立し、現在1社あたり8個程度のSaaSも5年後には10倍になり、それがないとビジネスがまわらない、まわりのスピードについていけなくなる可能性がある、なんて世間では言われていますが、SaaSが増えれば増えるほど、あなたの会社のインフラとしてのIT投資は増えていきます。
「1つ5万だからまあいいや」と気軽に経費承認していくと、5年後、気がついたら5万のSaaSが20個で月100万、年間で1200万を謎のSaaSに投資していた。かつ、外部の保守チームがツール分いるとなったらいくらかかっているのか……ちょっと青ざめますよね。
この記事を読んでいらっしゃる経営者はコスト意識も高いと思いますが、とかくIT投資については「自分がわからない」ことを理由に、人任せになりがちです。
ぜひ一度社内のITカオスマップ(※)をまとめてみてください。衝撃の事実がわかるかもしれません。
※ 社内カオスマップ:社内の各機能で利用しているツールをまとめたカオスマップのこと
ちなみに筆者の所属する会社も昨年情報整理を行ったところ、気づけば知らないSaaSが5つも増えていました……。
経営者は「ITリテラシーの向上が必須」なワケ
とはいえ、経営者の皆様は忙しくてITの勉強なんてとてもじゃないがやる時間がない状況かとは思います。
しかし、だからこそ経営者の皆様がITリテラシーを高めることが重要なのです。
筆者の会社が運営する東京ITスクールでは、高校生への授業も行っているのですが、今の高校生のITリテラシーレベルは相当高いです。かつ、Z世代の特性もあり、自分が興味を持っていることへの実現力と情熱はすさまじいものがあります。
ほんの数年後、新人採用していくと彼らが貴社に入社してきます。顧客やパートナー企業の窓口などに、彼らが出現します。
ITに対しての当たり前が違う人間同士での会話は、基本的に「世の中がどっちに進むか?」をベースにスタンダードが決まっていくものと推測されますので、
たとえばGoogleの基本機能が使えないとか、クラウドでの契約の仕方がわからないとか、そもそもクラウドがわからないとか、なんとなく不便を感じながら今の古いシステムを使っているとか……ということをやっていると、新しい世代のメンバーに、ビジネスで相手にされなくなってしまうかもしれません。
向こう10年を皆様の会社が生き抜くポイントは、皆様がITリテラシーを身につけて、ITベンダーになめられることなく、むしろフェアに付き合える力をつけること。
ITベンダーと「良き相談相手」として付き合っていくことができれば、明るい未来が手に入るのではないかと考えています。
田窪 建太
株式会社システムシェアード
執行役員
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