もしも、家の中にこびとが住んでいたら……?そんな空想を元にしたミニチュア作品を制作しているのは、コマ撮りアニメやジオラマトリック作品を手掛ける、株式会社MOZU STUDIOS代表のMozuさん。2017年から始まったシリーズの第13弾となる新作が、SNSに投稿されました。

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 今作のタイトルは「こびとのお風呂」。見慣れた壁のタイルを外すと、中から極小サイズのお風呂場が現れました。

 その高い完成度はもちろんのこと、ボディーソープシャンプーのボトル、壁に貼られたひらがな表、テープで応急処置されたドアガラスなど、随所に生活感がにじみ出ている点にも、思わずニヤリとしてしまいます。

 これまでにも「秘密基地」や「押し入れ」など、壁の中のこびと達の暮らしを表現してきたMozuさん。毎回そのユニークな発想に驚かされますが、今作は自身の幼少時に、「お風呂のタイルが一枚剥がれて中に小さなお部屋があったら楽しいな」と考えていたのを思い出したことが制作のきっかけなのだそう。

 Mozuさんがつくる「こびとシリーズ」と言えば、思わず懐かしさがこみ上げるような、ノスタルジックな作風が特徴的ですが、今作においてもこうした表現が多数。アルミサッシのドアに、タイルの壁は、世代の方にとって「あの頃」を思い出す仕様と言えるのではないでしょうか。

 どこを見ても、まさに本物にしか見えないクオリティにはただただ驚かされますが、中でもMozuさんが特にこだわったと話すのは「タイル壁の制作」。

 通常、ミニチュアタイル壁を作る際は、プラスチックの板に彫刻刀等で溝を掘って再現する手法が一般的です。しかしこの場合、全てのタイルが同じ幅で均一に、完璧に並んでしまい、まるでCGのような仕上がりになってしまいます。

 これを懸念したMozuさんは、カットした板を一枚一枚貼っていき、目地を埋めるという本物のタイル張りと同じような手法で再現。約380枚に及ぶタイルを切って貼る作業とは、想像しただけでも気が遠くなりそうですが、そんな苦労の甲斐もあり、完成したタイル壁は、いくら拡大して見ても本物にしか見えません。

 実質の作業期間およそ5か月を経て、ついに完成した作品について、「現時点の自分では、かなり満足がいっていて大好きな作品です」と、Mozuさん自身も満足しています。ツイッターへの投稿にも8万件もの「いいね」が付くなど、大きな反響が寄せられています。

 この「こびとシリーズ」は、「僕が飽きるまで続けていきたい」と意欲をのぞかせたMozuさん。続けて「今後は何か動く仕掛けを作りたいなと思っています」と、少しだけ今後の展望を語ってくれました。

 決して裕福ではないけど、きっとにぎやかで楽しい毎日を送っている……といった生活情景が思い浮かぶMozuさんの「こびとシリーズ」。一体こびとたちがどんな暮らしをしているのか、想像しながら鑑賞するのも、作品の楽しみ方と言えそうです。

<記事化協力>
Mozuさん(@rokubunnnoichi)

(山口弘剛)

タイルを外した先に「こびとのお風呂」 生活感あふれるミニチュアにほっこり