北朝鮮は、「徳の高い指導者が人民を治める」という人徳政治(徳治主義)の国だ。北朝鮮でよく見られる「首領福」「将軍福」などのスローガンは、「徳の高い指導者に国を治めてもらえることは、北朝鮮国民だけが享受できる僥倖である」という意味合いが込められている。

そうした「福」を具現する政策が赦免だ。そして、それは指導者の「寛大さ」を強調する宣伝とセットで行われるのが基本だ。

金正恩総書記が、父・金正日氏から政権の座を受け継いでから10年あまり。それに合わせて、管理所(政治犯収容所)の収容者らの赦免が計画されていると、デイリーNKの内部情報筋が伝えた。

対象となるのは、過去3年間の非常防疫期間に、規則に違反して政治犯として管理所に収容された人々だ。朝鮮労働党中央委員会は、彼らの個人文件(個人の経歴、思想などをまとめた文書)を再検討するよう指示を下した。その目的は「今年、元帥様(金正恩氏)の革命領導10年を締めくくる年末を契機に、非常防疫と関連した対象を再検討することにある」と情報筋は述べた。

国家保衛省(秘密警察)と社会安全省(警察庁)の傘下にある管理所に収容された人の個人文件、改悛の情、健康状態などをチェックせよとの指示も下された。それらに基づき、赦免のプライオリティを決めようというのだ。一連の作業は先月9日の共和国創建日(建国記念日)の直後から始まり、今月5日に終了。10日ごろまでには発表、執行されるとのことだ。赦免前に健康状態が悪ければ、点滴を打つという。

コロナ対策の規則違反で取り締まられた人々の一部は、反革命分子扱いされ、管理所送りとなった。劣悪な環境に耐えかねて、亡くなった人も少なくない。

特筆すべき点は、国家保衛省傘下の管理所に入れられた人々も、赦免の対象になるということだ。管理所には一生釈放が許されない完全統制区域と、刑期を終えれば釈放が認められる革命化区域がある。国家保衛省傘下の管理所のほとんどは完全統制区域だ。

「今回の対象者は、国家保衛省(の管理所)に入った政治犯の中から最優先に考慮して推薦する計画で、一部は、社会安全省傘下の管理所からも推薦される」(情報筋)

ただし今回は、一般犯罪を犯した人が入所する教化所(刑務所)は対象外となる。通常の大赦令とは異なるため、対象から除外されたとのことだ。

通常、管理所から釈放された人は、一般社会から離れた特別管理衛戍区域で数年間住まわされ、問題がなければ完全に釈放される形を取るが、今回は完全統制区域から革命化区域に送られる人と、以前の居住地とは別の地域に送り込まれ、労働者として復帰させる人とを分けるとのことだ。

この背景には、コロナ規則違反者は元々、深刻な政治犯罪を犯した者ではないため、釈放して地方で深刻な労働力不足を解消するのが得策との判断があるものと考えられる。

北朝鮮は収容者の急増に伴い、管理所を新設していたが、今回の赦免の規模によっては、統廃合が行われる可能性が考えられる。

また、釈放された人がいないため、実態が全く明らかになっていなかった完全統制区域の状況に関する証言が海外に流出する可能性も考えられなくはない。

金正恩(キム・ジョンウン)氏