9月15日京都府内の90代の女性が、腸管出血性大腸菌O157」による食中毒で亡くなりました。報道によると、女性は精肉店で購入した生食用牛肉(ユッケ)を自宅で食べた後、下痢や腹痛といった食中毒の症状を訴え、入院していたということです。これについて、「怖い…」「食中毒は命を落とすこともあるから油断できない」といった声や、「O157の症状って?」「死亡率が気になる」など、O157に関する疑問の声も聞かれます。

 改めて知っておきたい「O157」の症状や治療方法について、内科医の市原由美江さんに聞きました。

潜伏期間は4〜8日

Q.「O157」とは、どんな菌で、どのような症状を引き起こすのでしょうか。

市原さん「O157は大腸菌の一種で、『ベロ毒素』という強い毒素を出す菌です。動物の腸内に生息しており、食肉やそれに汚染された食品を食べることによって感染します。代表的な感染源は、生肉や十分に加熱していない肉です。75度以上で1分以上加熱すると死滅するので、肉の中心部が75度以上になるよう、しっかりと加熱することが大切です。

潜伏期間は4〜8日で、症状は、激しい腹痛と水溶性下痢、その後に血性下痢(下血)を認めます。乳幼児や高齢者は重症化することがあり、中でも『溶血性尿毒症症候群』を併発すると命に関わります。『溶血性尿毒症症候群』とは、溶血性貧血(赤血球が破壊される、つまり溶血して起きる貧血)や血小板の減少、急性腎不全が特徴の病気です。さらに、これに続いて脳症を引き起こすことがあり、どちらも死に至る可能性がある怖い病気です」

Q.O157の感染により、命を落とすケースもあるとのことですが、死亡率はどのくらいなのでしょうか。

市原さん「症状のある人の6〜7%が、先述の溶血性尿毒症症候群や脳症を発症します。なお、溶血性尿毒症症候群を発症した場合、死亡率は1〜5%とされています」

Q.食中毒の症状が出た場合、それが「O157」によるものかどうか、自分で判断できるのでしょうか。

市原さん「通常の食中毒による下痢であれば、便に血が混ざることがあっても、少量であることが多いです。血の混ざった下痢が続く場合は、腸管出血性大腸菌による下痢の可能性がありますが、診断するにはO157を特定するための便の検査が必要で、医療機関の受診をお勧めします」

Q.O157に感染した場合、どのような治療を行うのですか。

市原さん「下痢による脱水に対して点滴を行い、大腸菌に対しては抗生物質が使用されます。入院となった場合、溶血性尿毒症症候群や脳症などの合併症がなくても、少なくとも2週間は必要です」

Q.O157への感染を防ぐために、注意が必要なこととは。

市原さん「ユッケレバ刺しなど、生肉を食べることはお勧めできません。焼き肉などでお肉を焼くときも、なるべく中までしっかりと焼きましょう。近年、流行している家庭での低温調理ローストビーフなども注意が必要です。

生肉を調理した包丁やまな板、ボウルなどを介して感染することもあります。生肉に触れた調理器具はしっかりと洗い、熱湯消毒やアルコール消毒をしましょう。例えば焼き肉のとき、生肉と野菜を触れさせないことはもちろん、生肉を触った箸で野菜を触ると、その野菜が加熱不十分だと感染することがあるので注意してください。また、生肉を触った手にも大腸菌が付着している可能性があるので、殺菌効果のあるせっけんなどでよく手を洗い、可能ならアルコール消毒するとよいでしょう」

オトナンサー編集部

O157、どんな症状?