税金について馴染みのない人が、これから副業を始めるためにどのような税金のルールと節税方法があるかを網羅的に、やさしく紹介していく本連載。俣野成敏氏・横田秀作氏の共著書『知らないと損をする税金の話――副業のプロと税理士がタッグで教えるプロフェッショナルサラリーマンの節税スキル 』(clover出版)から一部抜粋しお届けします。

副業、バレたら本当にマズいのか?

サラリーマンの副業に付いて回るのが、「会社にバレるかバレないか問題」。副業をやりたいけれど、会社にバレるのが怖いという人。副業をやっているけれど、会社にバレないように必死な人。このような心配を抱えている人が多数いる印象です。

しかし、本当にバレたらマズいのでしょうか。ここでは、副業が社内に知られることの是非と、バレないための対策について考えていきます。

本書ではサラリーマンの副業と税金について論じていますが、公務員については、特殊な扱いになります。なぜなら、公務員は「人事院規則14‐8(営利企業の役員等との兼業)」の適用を受けるからです。公務員が営利目的で事業を行うことについては、非常に制限が多い法令となっています。民間企業において「副業がどこまで許されるか?」という議論とは、まるで温度感が違います。

そして、サラリーマンが副業をやろうと考えた時に、次の3点が大切になってきます。

①副業に対して会社はどのような発信をしているのか、スタンスとルールを知る

副業バレを心配する人は、本当に心配する必要があるのかどうか。そこをハッキリさせるべきです。禁止されていたとしても社内ルールの範疇です。「社内規定違反」にはなりますが、会社に損害を与えるような副業でなければ、解雇される可能性は低いです。

もっと言えば、本書にある留意点を踏まえたうえで会社にバレるとしたら、副業が繁盛している可能性が高いです。実際、副業推進の時流の中で、副業OKと宣言しないまでも、副業禁止の社内規定を緩和しつつある会社も少なくありません。

多くの場合は、副業について何も明言していない、あるいは「副業をしたい場合は届出が必要」という程度で、ダメとは言っていないのです。

②会社にデメリットを与えない事業内容かどうか

たとえば、会社の秘密漏洩につながるような仕事をしてはお話になりません。迷惑をかけたり損害を与えたりするような事業であれば、たとえ会社に禁止されていなかったとしてもコソコソと副業せざるを得ませんし、バレた時には大変なことになります。

しかし、会社に相乗効果があるような副業なら、知られたとしてもお咎めはないはず。むしろ、喜ばれるかもしれません。具体的には、次の3つのケースを絶対に避けるようにしましょう。

  1. 会社の情報漏洩
  2. 顧客を奪う行為
  3. 勤務に支障をきたす仕事のやり方

これら3つの事項への抵触は「副業」以前の問題であり、訴訟リスクも孕んできます。

③副業をしていることを社内に知られた時に、支障が出るかどうか

今は、大企業でさえ副業を推奨する時代。副業に対する企業の考え方も、かなり柔軟になってきています。副業バレをずっと気にしていたけれど、実際に知られたとしても特に環境の変化はないということが多いのではないでしょうか。

とはいえ、副業が歓迎されない社内の雰囲気があるとか、直属の上司の副業に対する理解がないなど、やはりバレたくないというケースもあるとは思います。

副業バレの理由ランキング 1位~7位までほぼすべて…

①~③をしっかり確認したうえで、会社に迷惑にならない副業を選び、隠すために神経をすり減らすこともなく自らの収入を上げることに集中するのが理想です。しかし、「会社にバレない」ことが何にもまして優先される場合は、どうすればいいのでしょうか。

それを知るために、副業バレの理由ランキングを見てみましょう。

 

3位の『給与・税金関係の手続きで』以外は、「身から出た錆」ということがわかります。つまり、一番の対策は「自分から副業についてバレるような言動を取らない」ということになります。

ところが、副業バレを心配する人たちの多くが、自分の言動よりも3位の『給与・税金の手続きで』を心配しているのです。294人中28人という約1割に過ぎない副業バレの理由に、なんとか対策を施そうとします。

「開業」、「確定申告でマイナンバー記入」したらバレるのか?

よく、「開業届を出したらバレるのでは?」「確定申告などでマイナンバーを記入するとバレるのでは?」という声を聞きますが、それが直接的な原因になることはまずありません。

 

バレるとすれば、住民税の通知書から。市町村から会社に、「御社の従業員の住民税・所得は〇〇円です」と通知(給与所得等に係る市民税・県民税特別徴収税額の決定・変更通知書)が届くのですが、その通知で従業員の所得がわかることがあるので、結果的に「給与よりも高い所得になっているのはなぜ?」と詮索されるかもしれません。

その時に、増えた所得について「不動産を相続したので」のように、何かしら納得してもらえる理由を言えれば副業バレにつながりませんが、うまく理由づけできなければバレることはあり得ます。しかし、これはそれほど心配する必要はありません。

所得の金額は、通常シールのようなもので隠されていて、それをはがさなくては見ることができません。ですから、まず見られることはないのです。

それでもどうしても心配ならば、確定申告をする際に、第二表「給与、公的年金等以外の所得に係る住民税の徴収方法」で「自分で納付」にチェックを入れておくことです。こちらにチェックを入れておけば、副業での所得による住民税の計算通知は自分の住所に送られてくるため、会社には届きません。ただ、まれに人為的ミスもありますから、徹底して対策したいのであれば、確定申告後に役所に連絡して確認する形になります。

他方、会社とこのようなやり取りをなくす「年調未済」という考え方があります。

サラリーマンとして所属する会社では年末調整は行わず、自分で確定申告を行う形です。自ら確定申告を行う理由を詮索される可能性はありますから、入口の部分では、会社とそれなりの対話は必要になるでしょう。

「20万円以下の所得」に関する誤解

このような対策も取らずに、安易に「住民税の通知書からバレるなら、住民税を申告しなければいい」と考える人もいます。たとえば、確定申告は給与所得・退職所得以外の所得が20万円以下の場合は申告の必要がないため、申告は何も要らないと勘違いしている方も多いようです。

ところが、実はいくら20万円以下の所得でも、住民税の申告はしなくてはなりません。市町村ごとに住民税申告用の用紙が用意されていて、申告しなければ脱税になってしまいます。

とはいえ、どうしても「バレたらアウトだ!」という人もいるでしょう。その場合の究極の対策は、法人を設立することです。

法人の設立については、本書の第5章『法人成りと脱サラ・編』を読んでいただきたいのですが、法人をつくって「株主」及び「取締役」になって、役員報酬を取らずに利益は会社に留保していけばいいのです。

個人で報酬を受けないため、会社に知られる可能性は大幅に下がります。株主ではありますが、「株式を持つ」ということは日本経済を底上げする行為でもあるため、以前から社会的にも認められて非難されるようなことではありません。

役員報酬を取らないと、ボランティア同様に個人の手取りは増えないと考える人は多いですが、そんなことはありません。法人や株式そのものが個人の資産ですし、第3章で触れる家事按分によって個人にもうまみはあります。法人を設立すれば、二つ目の財布を手に入れるような感覚になれるのです。

三流▼住民税を申告しない→脱税!

二流▼会社から所得が増えたことを指摘された場合の対策を取っていない

一流▼副業をにおわせる言動は控え、バレたとしても堂々としていられる手法を選ぶ

(※写真はイメージです/PIXTA)