パチンコパチスロの次世代遊技機と言われている「スマート遊技機」のホールデビュー日程が公式に発表された。パチスロメーカーで構成される日本電動式遊技機工業協同組合(日電協)によれば、スマートパチスロホールデビューは、今年の11月21日。スマート遊技機の登場は、果たしてパチンコ業界のイノベーションになり得るのか――

◆減り続ける遊技客の回復に繋がるか?

「スマート遊技機」とは、パチンコ業界が10年以上もかけ開発してきた次世代遊技機。

 7月19日に開催されたメーカーによる発表会では、スマートパチスロは今秋、スマートパチンコは来春にホールデビューすると明かされていた。

 その特徴は、スマートパチンコの場合は玉を遊技機内で循環させることで、スマートパチスロの場合はメダルそのものを無くすことで、遊技客が玉やメダルを一切触ることなく出玉はデジタル計上されること。玉の上げ下ろしやメダル投入等の煩わしさから解放される。

 またスペック面においても、近年、ギャンブル等依存症問題が大きく取沙汰されるなか、遊技機の射幸性は抑制の一途を辿っていたが、ことスマート遊技機においては、スマートパチンコは大当たり確率の分母が1/320から1/350に引き上げられ、スマートパチスロは有利区間が撤廃されることになり、出玉性能の面で大きく緩和されることになった。

 出玉性能の緩和は、減り続ける遊技客の回復に繋がるのではと業界関係者らは一様に期待感を露わにしており、またファンからもスマート遊技機の登場を心待ちにする声が上がっている。

ギャンブル依存症問題はクリアしているのか

 一方でこの10年、パチンコ業界はギャンブル等依存症問題により、あらゆる面で規制を受け続けてきた。パチンコMAX機撤去や、高射幸性パチスロ機の撤去、規則改正による射幸性の抑制と旧規則機の撤去、広告宣伝の厳しい規制等、数え上げればきりがない。

 そんななか、出玉性能の緩和へと舵を切ったスマート遊技機は、警察庁に怒られることはないのか?

「またどうせすぐ規制が入るんじゃないの?」、「もう射幸性云々で撤去とか勘弁してほしい」という声がホール関係者やファンからも聞こえるが、今回のスマート遊技機の導入に関しては、パチンコ業界側もしっかりと伏線を引いている。

◆一定の出玉数で強制終了となる「コンプリート機能」

 それが「コンプリート機能」と言われるものだ。コンプリート機能とは、パチンコであれば95000玉、パチスロであれば19000枚、一日の出玉があった場合、強制的に遊技が終了される機能である。(※当日の営業終了時にリセットされる)

 これは、かつて警察庁が「高射幸性遊技機」の基準として定めたパチンコ10万玉、パチスロ2万枚(換金時40万円相当)の出玉は絶対に超えないための機能であり、この出玉の天井を定めることで、逆にその範囲内での出玉性能の緩和を勝ち取ったと言えるであろう。

 業界関係者やファンにとっては期待感だけが募るスマート遊技機の登場であるが、実は、業界関係者たちが露骨に不満を表している問題がある。それはズバリ「台数」の問題だ。

 既出の日電協の発表によれば、11月21日から登場するスマートスロットの台数は約7万台とのこと。全国にはパチンコ店が約7000店舗あり、おおよそ350万台の遊技機が設置されていると言われるなか「7万台」という数字は、総設置台数の2%に過ぎない。

◆全国のホールに行き渡るのは難しい?

 これは世界的な半導体不足と、原材料高騰による資材調達が困難な状況が引き起こしたものであるが、業界関係者によれば、実際に来春のスマートパチンコ登場のタイミングでも、スマート遊技機全体の台数は15万台~20万台程度であろうと想定されているそう。

 都内某ホールの店長は言う。

「スマート遊技機で期待感を煽っても、結局大手ホール企業だけが取り合って、全国のホールに行きわたることはほぼ無いでしょう。ただでさえ業界内の格差が広がっていくなかで、スマート遊技機はそのトドメになるかも知れません」

 スマート遊技機の導入には、遊技機本体のほかに専用のユニットも必要であり、ホール側の設備投資が更に嵩むことになる。中小零細規模のホールには、買いたくても、高くて買えない、物がなくて買えない、という現実が突き付けられている。

 パチンコのイノベーションと言われている「スマート遊技機」である。が、業界の前途は多難だ。

文/安達夕

【安達夕】
フリーライター twitter:@yuu_adachi

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