独立行政法人国立文化財機構 奈良文化財研究所(奈文研)は、研究所創立70周年を記念し、石に刻まれた文字や文様に光を当ててその影から拓本をとる技術「ひかり拓本」をスマートフォンに搭載し、全国の石碑に残された貴重なメッセージを守り伝えていくプロジェクトを始動します。その第一歩として、文化財活用センターと共同で、「ひかり拓本」スマートフォンアプリの開発・公開費を集めるクラウドファンディングを、2022年10月5日から行います。

目標金額は380万円。目標金額を超える支援が集まった場合は、小学校などの教育現場で「ひかり拓本」アプリを活用してもらうための貸出用機器一式の調達費に充当します。

私たちの先祖からのメッセージを解き明かし、石碑に込められた思いに「ひかり」を当てる本プロジェクトの成功に向けて、広くご支援を募ります。

プロジェクトページ: https://readyfor.jp/projects/hikaritakuhon01

ひかり拓本プロジェクト

ひかり拓本プロジェクト

【ここに注目】

・全国各地の無数の石碑には、貴重な先人からのメッセージが刻まれている

・「ひかり拓本」の技術を使えば、石碑の碑文が簡単に判読できる!

・「ひかり拓本」のアプリ化により全国の石碑調査がより手軽に

→アプリを開発し、地域のみんなで貴重な石碑を守り伝えたい!

【奈良文化財研究所70周年記念・クラウドファンディング概要】

ひかり拓本」~風化する先祖からのメッセージ、みんなで解き明かすアプリをお手元に~

募集期間:2022年10月5日(水)10:00~12月2日(金)23:00

目標金額:3,800,000円(目標を達成しなかった場合は返金)

支援方法:クラウドファンディングサービス「READYFOR」内の

     プロジェクトページより承ります。

     https://readyfor.jp/projects/hikaritakuhon01

<支援コース>

5,000円から1,000,000円まで13コース

●早期のご支援には、少ない金額で「ひかり拓本」を堪能できる特典適用あり

(【先着10名様限定】「ひかり拓本」アプリ+上椙研究員による調査記録動画閲覧権 など)

●上椙研究員が出張調査し、調査報告会を開催するコースもあります。

<税制優遇措置>

奈良文化財研究所が所属する独立行政法人国立文化財機構は、税法上の優遇措置の対象となる「特定公益増進法人」です。当該寄附金について一般の法人に対する寄附金とは異なる所得税法人税の優遇措置を受けることができます。2023年3月末までに、受入証明書(発行日は2023年2月)をお届けします。

<概要紹介>

https://cpcp.nich.go.jp/modules/r_free_page/index.php?id=77

(文化財活用センターWEBトップ→寄附/企業・団体との連携→ひかり拓本プロジェクト)

【なぜ支援が必要なの?】

全国各地に存在する数多くの石碑には、過去に発生した大規模な災害の記録やその教訓など、先祖からの貴重なメッセージが刻まれています。

しかし、石碑の多くは風化が進んでおり、一般の方々にとってだけでなく、研究者にとっても文字判読の難しさが課題となっていました。奈良文化財研究所では、この問題を解決するために、石碑の碑文に様々な角度から光を照射して撮影した複数の影を合成することで、判読可能な画像を作成する技術「ひかり拓本」(特許取得済)を開発しました。

左:通常のカメラで撮影した画像、右:「ひかり拓本」を使って作成した画像

左:通常のカメラで撮影した画像、右:「ひかり拓本」を使って作成した画像

全国にある無数の石碑を記録していくためには、研究者や地方自治体等だけでなく、広く市民の方々へと参画の輪を広げる必要があります。奈良文化財研究所ではスマートフォンアプリとしての普及を目指し、アプリの開発及び公開等にかかる費用をクラウドファンディングによって募ることとしました。

ひかり拓本とは?】

石碑の碑文などに対し、懐中電灯等で様々な角度より光を照射しながら撮影した複数の画像の影を合成し、普通に撮影した写真では読みにくい碑文の文字も判読できる技術です。石碑を汚すことなく拓本と同じ程度に簡単に碑文が読み取れる画像を作成することができます。

撮影にあたって必要となるものは一般的な撮影機材(タブレットデジタルカメラ、三脚)、懐中電灯等光源のみなので、撮影する際に専門的な道具・知識は必要ありません。

また、作成所要時間は、合成する画像1枚につき1~2秒程度で、5分もあれば撮影と作成を完遂できるので、撮影してすぐに結果を見ることができます。

ひかり拓本の使用イメージ

ひかり拓本の使用イメージ

今回のクラウドファンディングでは、スマートフォン・タブレット(iPhone、iPadおよびAndroid)で展開可能なアプリの開発・公開を目指します。将来的にはアプリで撮影された画像を集約・公開するプラットフォームを整備し、アプリ利用者と一緒に全国規模の石造物データベース構築を行う予定です。

ひかり拓本PJ活動実績】

<研究チーム>

奈良文化財研究所・東北大学災害科学国際研究所・東京大学史料編纂所・東京大学地震研究所・九州保健福祉大学

<解析方法>

発明者の奈良文化財研究所研究員の上椙英之が作成したWindowsアプリ使用

<調査期間>

2017年度~2022年度(2023年度も継続予定)

<調査件数>

自然災害伝承碑212件(うち岩手県30件、宮城県38件など東日本大震災被災地域の石碑を中心に、全国で実施)

<調査成果>

これまでの調査成果の一部は「ひかり拓本データベース(東北大学災害科学国際研究所 https://takuhon.lab.irides.tohoku.ac.jp/hibun/hikari/1/ )」にて公開中

<その他>

板碑や石塔などの石造物を始め、木簡、土器、瓦、古銭などさまざまな遺物で適用実験中

【自然災害伝承碑について】

災害による被災状況や、住む場所・避難経路・災害の予兆といった教訓など、未来(子孫)のことを心配した過去(先祖)からの注意を呼びかけるメッセージが込められた石碑です。最近では「自然災害伝承碑」は地図記号となり、地図上でも確認することができるようになりました。(国土地理院: https://www.gsi.go.jp/bousaichiri/denshouhi.html )

自然災害伝承碑 地図記号

自然災害伝承碑 地図記号

自然災害伝承碑が命を救った事例もあります。岩手県宮古市姉吉地区には、「此処より下に家を建てるな」と刻まれた石碑があり、地域の方々はこのメッセージに従い石碑より高地に居住していました。東日本大震災による津波はこの石碑の70m手前で止まり、結果として姉吉地区は一人の犠牲者も出さずに難を逃れました。

地域の人々を救った「此処より下に家を建てるな」の石碑(岩手県宮古市姉吉) ※画像は「ひかり拓本」で作成

地域の人々を救った「此処より下に家を建てるな」の石碑(岩手県宮古市姉吉) ※画像は「ひかり拓本」で作成

ひかり拓本データベース該当記事: https://takuhon.lab.irides.tohoku.ac.jp/hibun/detail/iwate77/

ひかり拓本プロジェクト