老後の不安を解消するには、まず「自分の年金」を知ることが大切です。将来の受取額がわかれば、やるべきことが明確になり、気持ちもラクになります。※本記事は、井戸美枝氏の著書『一般論はもういいので、私の老後のお金 「答え」をください!増補改訂版』(日経BP)を抜粋・再編集したものです。

会社員 or フリーランス?…将来の年金額に大きな差

大切なこととは分かっていながら、「よく分からないから」「複雑だから」といった理由で、考えることを面倒臭がってしまう、年金のこと。実際、公的年金制度をきちんと理解している人はさほど多くないかもしれません。

まず、年金は20歳から60歳に達するまでの40年間、国民全員が入ることになっています。働き方により、3つの種類に分かれているので、まず「自分がどの年金に加入しているか」を理解しておきましょう。

まず1つ目が、自営業者やフリーランスといった会社に所属せず働いている人、または無職の人が加入する「国民年金」。これらの人たちは「第1号被保険者」と呼ばれ、支払う年金保険料は2022年度で月額1万6590円です。

年金の受け取りは原則65歳から。月額6万4816円(40年間加入、満額の場合)の「老齢基礎年金(基礎年金)」を、亡くなるまで受け取れます。この「死ぬまでずっと受け取れる」ことが公的年金の最大のメリットです。

いくら個人で老後資金を蓄えようとしても、何歳まで生きるのかは誰にも分からないこと。貯蓄が足りなくなる可能性もあるでしょう。そこで何よりも大きな支えになるのが年金です。

仮に、現役世代のうちに亡くなった場合でも「払い損」になるわけではありません。病気やケガで障害が残った場合に受け取れる障害年金、一家の大黒柱が亡くなった場合に遺族が受け取れる遺族年金など、被保険者が65歳未満でも保障があり、心強い味方であることに変わりはありません。

老後のお金の計画を立てるうえで重要なこと

2つ目が民間企業に勤めている会社員や公務員が加入する「厚生年金」。これらの人たちは国民年金の「第2号被保険者」と呼ばれます。国民年金の保険料が収入にかかわらず定額であるのに対して、厚生年金の保険料は、月給の18.30%と定率。つまり、収入が多いほど多くの保険料を支払う必要がある仕組みです(上限あり)。

月給の約18%ということで、「毎月の給料から随分引かれてしまうんだな」と感じるかもしれませんが、実は本人が保険料の全額を支払うわけではなく、保険料の半分は雇用主である会社が負担します。本人負担分の保険料は月給やボーナスから自動的に天引きされています。

「老齢厚生年金厚生年金)」の受け取りは、国民年金と同じく原則65歳から(男性は1961年3月生まれ以前、女性は1966年3月生まれ以前の人は65歳より前から支給が開始)。

受取額は自営業者、フリーランスと同様、まず基礎年金(月額約6万5000円)があり、その上に現役時代に支払った保険料に応じて受け取れる厚生年金=「報酬比例部分」という上乗せがあるのが特徴です。

収入が多い人ほど支払う保険料が多くなり、それに伴って受け取る年金額も多くなります。いわば自営業者、フリーランスの年金が「1階建て」とすると、会社員、公務員の年金は「2階建て」になっていると考えるといいでしょう。

3つ目が会社員や公務員(第2号被保険者)の配偶者かつ専業主婦(夫)の人たちが加入する国民年金で、これらの人たちを「第3号被保険者」と呼びます。夫の扶養範囲内の収入で働くパート主婦もここに含まれます。第3号被保険者は、本人が直接保険料を支払っていないものの、国民年金に加入しており、老後は基礎年金を受け取れる仕組みです。

自分がどの区分に当たるかは、老後のお金の計画を立てるうえでとても重要なこと。しっかり理解しておきましょう。なお、派遣社員やパート社員は、働く時間によって厚生年金に加入することができます。

井戸 美枝 井戸美枝事務所 代表 ファイナンシャルプランナー 社会保険労務士 産業カウンセラー