男に媚びを売るだけの誰でもできる仕事――夜の街で働く女性たちは、そう色眼鏡で見られがちだ。が、実際には、多種多様な客の要求を見抜き、日々の自己研鑽をも必要とする高度な接客能力が求められる。

 クラブキャバクラスナックショーパブ…様々な業態で働く女性たちの普段は口にしない“仕事論”を掘り下げ、仕事と人生のパフォーマンスを上げるヒントを見つけていきたい。

◆大好きな夜の仕事の魅力を発信していきたい
銀座クラブ「ル・ジャルダン」望月ひかりさん

 多彩な高級クラブがひしめき合う銀座8丁目にあって、銀座の名物ママとして数多くの著書を持つ望月明美氏がオーナーを務める「ル・ジャルダン」は、長きにわたって銀座の夜をリードし続けている。

 1年前から同店に在籍している望月ひかりさんは、ベストスコア100を誇る腕前のゴルフは月4回程度ラウンドを周り、フラダンスと琉球舞踊の教室にも通うなど、アクティブな日々を送っている。

 二十代前半の頃、看護師と水商売を掛け持ちして資金を貯めて、1年間オーストラリアに短期留学。帰国後は池袋のラウンジでチーママを務めたこともある彼女に、これまでのキャリアや、夜の仕事に対する思いを語ってもらった。

――オリエンタルな顔立ちが印象的ですが、ルーツが南の島だそうですね。

望月ひかり(以下、望月) 両親が沖永良部島の出身なんです。私自身が生まれ育ったのは東京なんですが、高校の3年間はおばあちゃんの介護もあって、お母さんと一緒に向こうに住んでいました。

――趣味でフラダンスと琉球舞踊を習っているそうですが、そういうルーツも関係あるんですか?

望月 フラダンスは成人になったタイミングで、何か趣味が欲しくて始めたんですけど、ハマったのはそういうルーツも関係しているのかもしれません。琉球舞踊を始めたのは数ヶ月前なんですけど、私の父が昔から趣味で琉球舞踊の地謡(じかた)として三線を弾いていて。今年、沖縄復帰 50周年を記念して国立劇場で公演があった時に、父も出演していて、それを観に行った時に面白そうだなと思って、私も始めました。

看護師から水商売へ

――水商売を始めたきっかけは何だったのでしょうか。

望月 もともと看護師をしていたんですけど、オーストラリアに留学をしたかったので、そのための資金が必要で。それで21歳の時に、看護師と掛け持ちで水商売を始めたのがきっかけです。水商売デビューは練馬のスナックだったんですけど、すごく楽しくて。そもそも私は学生時代から人を癒せるお仕事がしたいと思っていて、それで看護師の道に進んだんですけど、水商売を始めて、患者さんを癒すのも、お客さんを癒すのも似ているなと感じたんです。素敵なお仕事だなと思って働くうちに、どんどんハマっていって、やっぱり水商売といったら銀座だよねということで、6年前にル・ジャルダンに入りました。

――過去にもル・ジャルダンに在籍していたんですね。

望月 ただル・ジャルダンで働き始めた時点でオーストラリア留学が決まっていたので、半年だけお世話になって、留学しました。1年後に帰国して、次は何をしようか考えた時に、もう一度、水商売をやりたいと思ったんですけど、あまりにも見た目がワイルド過ぎて銀座には合わなかったんです。



コミュニケーションは座学で勉強

――ワイルド過ぎると言うと?

望月 オーストラリアバックパッカーをやっていた時期があって、ヒッピーみたいな生活だったので坊主にしていたんです(笑)。なので、坊主でも大丈夫だった池袋のスナックで働いたら、やっぱり夜のお仕事は楽しいなと。それで次は、池袋にある接待のできるラウンジに2年ほど在籍して、後半はチーママを任されました。ちっちゃいお店だったんですけど、もっと上を目指したい、やっぱり銀座に戻りたいという気持ちが強くなって。思い切って1年前、銀座に戻ってきて、またル・ジャルダンのお世話になりました。

――もともとコミュニケーションをとるのは得意なほうだったんですか?

望月 むしろ、水商売を始めるまでは苦手でした。最初の頃は、お客様と何を話していいのか分からなくて、会話になっていませんでした。それで、銀座のママさんが書いている本や、コミュニケーション関係の本を読み漁って、徐々に会話を学んでいきました。

◆銀座の空気を大事にしたい

――どんな時にお仕事のやりがいを感じますか?

望月 常連のお客様が接待を任せてくれた時です。私を信頼して、大切なお客様を連れてきてくれる訳ですから、認めてもらえたんだといううれしさがあります。

――仕事をする上で大切にしていることは何でしょうか?

望月 生活感を見せないことです。せっかく銀座に遊びに来て、夢を見に来てくれているお客様たちの前で、生活感を見せる必要はないですよね。常に着飾り方は銀座っぽく、上品に見えるように心がけていますし、所帯じみた会話もしないように気を付けています。



◆ホステスが舞台に立つことに感動

――去年、ナイトクイーングランプリのファイナルステージを観に行ったそうですね。

望月 望月明美ママに誘われて観に行かせていただいたんですけど、本当に感動しちゃって。夜の仕事って日の目を見ないというか、陰で支える存在みたいなところがあるじゃないですか。そういう夜の仕事をする女性たちがステージに立って、ランウェイを歩いて、各々が思っていることをちゃんとアピールしてという姿を見た時に、純粋にかっこいいなと思いましたし、いつか私も出られたら素敵だなと思いました。

――過去にミスコンなどに出た経験はあるんですか?

望月 一度もないです。内気で恥ずかしがり屋なので、人前に立つのも苦手なんです。自分に自信がないから、そういう場は避けていました。でも、せっかく銀座に戻って頑張ろうと思っている時に、いつまでもそういう気持ちだと何も変わらないですし、こういう機会があるんだったら挑戦しないと後悔しそうだなと思って、今回エントリーさせていただきました

◆夜の仕事について真剣に考えるきっかけに

――ご家族やお客様の反応はいかがですか?

望月 家族は協力的で、人気投票もしてくれています(笑)。お客様も応援してくれていて、「どんどん挑戦するべきだよ」と言ってくれます。ただ一番付き合いの長い練馬時代からのお客様にグランプリを獲りたいというお話をしたら、「グランプリなんて無理だよ」みたいなことを言われて笑われたんです。エントリーしてからの2か月間、いろいろな人と関わって、たくさんの講座を受けさせていただいて、ダイエットなど自分磨きも頑張って。どんどん自分の中で自信も生まれていたから、何でそんなことを言うんだろうとショックを受けて……。私もエントリーした理由を伝えていなかったので、どれだけの意欲を持ってナイトクイーングランプリに臨んでいるかを本気でお話ししたら、お客様も反省してくれて、今は誰よりも応援してくれています。

――長い付き合いのお客様ですから、ひかりさんの熱い思いが伝わったんでしょうね。最後に意気込みをお聞かせください。

望月 今は成長した自分を見せるために、これまで抱えてきたコンプレックスや弱い自分、甘えてきた部分などを徐々に変えている段階です。ファイナルステージに出場できたら、殻を破った姿を見せたいですし、夜の仕事を真剣にやっている人間として、みなさんに思いを発信して、グランプリを獲りたいです!

 望月ひかりさんは、10月10日に本戦を迎える「ナイトクイーングランプリ」のカサブランカ部門プロフェッショナルクラスにエントリーしている。同イベントは、水商売業界のさまざまな業態で働く女性たちの知られざる魅力・ポテンシャルを表舞台で披露し、“夜の女王日本一”を決めるコンテスト。誇りを持って夜の仕事に情熱を傾ける彼女が、どのような成長を見せるのか期待は膨らむばかりだ。

取材・文/猪口貴裕 撮影/星亘 協力/日本水商売協会

―[ナイトクイーンたちの仕事論]―


望月ひかりさん