2013年のトニー賞を制したブロードウェイの大ヒット作にして、日本でも2016年と19年の二度にわたってセンセーションを巻き起こしたミュージカル『キンキーブーツ』。小池徹平ソニンら盤石の続投組に、城田優ら数名の新キャストを迎えた舞台が10月1日、東急シアターオーブにて開幕。前日に公開されたゲネプロで、新生JAPANカンパニーが「これこれ!」と「うわっ新鮮!」の入り混じった、“待望の再々演”に相応しい舞台を届けた。

城田ローラが登場するまでは、「これこれ!」の嵐。シンディ・ローパーの心躍る楽曲に乗せ、主人公チャーリーと彼の靴工場の置かれた状況がスルスルと紹介されていく、ジェリー・ミッチェル演出の手際の良さに改めて感服させられる。前回公演から3年というインターバルは実にちょうど良く、お馴染みのセットの中で躍動する小池チャーリーソニンローレン、玉置成実ニコラ、勝矢ドン、ひのあらたジョージの姿を久々に見るのは、まるで懐かしい大好きな人々に再会するような感覚だ。

そこに華々しく、文字通り赤い光をまとって城田ローラが降臨! その満面の笑みに、登場の瞬間から心をつかまれた観客は多かったことだろう。逞しい体の上に彫刻のような顔が乗った異次元の美しさは、初めてローラに出会う人々をあんぐりとさせるのに、そして烈しさよりも滲み出る優しさが際立つ立ち居振る舞いは、そんな人々をそれでも魅了してしまうのに、それぞれ十分な説得力。作品のアイコンたるローラ役が替わったことで、当然のことながら小池チャーリーソニンローレンとのやり取りもいちいち新鮮で面白い。

そして新鮮と言えば、台詞も。オフ・ブロードウェイで同じミッチェル演出によるリバイバル版が開幕したばかりとあって、いくつか変更された箇所があり、象徴的なのがローラが「Ladies&Gentlemen」の代わりに用いる決め台詞だ。昨今のアメリカでは、三人称も本人が決めるべきとの考えから、プロフィールやメールの署名欄に自分がheなのかsheなのか、あるいは性別を表さないtheyなのかを記す習慣があるよう。そんな世相を反映した新しい台詞に、ダイバーシティの時代を牽引する本作の力を改めて感じて胸が熱くなった。

最後に断っておきたいのだが、これはあくまで、“本物の観客”のいないゲネプロのレポートである。俳優と観客がエネルギーを交感することで生まれる熱と一体感、その末に劇場にあふれる無類の幸福感こそ、『キンキーブーツ』の最大の魅力。新生JAPANカンパニーの真の力はぜひ、各々の目で、客席の一部となった体で確かめてほしい。

取材・文:町田麻子 撮影:岡千里 / キセキミチコ / 田中亜紀

ブロードウェイミュージカル『キンキーブーツ』より