9月22~25日、ライブイベント【BanG Dream! 10th☆LIVE】が東京・有明アリーナで開催された。

 「BanG Dream!」はブシロードが手がけるメディアミックスプロジェクト。テレビアニメ、スマートフォン用ゲーム、マンガ、小説とさまざまなメディアを通じて、さまざまな女性バンドの物語を紡いでおり、あわせてそれぞれのキャラクターを演じる声優陣が劇中同様、バンドを結成。音楽活動を展開している。

 【BanG Dream! 10th☆LIVE】には、そのうちRoseliaMorfonicaPoppin'PartyRAISE A SUILENという4つのガールズバンドが日替わりで登場。本稿では初日9月22日に行われた、Roseliaのワンマンライブ【Sonnenschein】の模様をレポートする。

 Roseliaは“ゴシック”をコンセプトに結成された5人組。定刻、モノトーンの森の中をメンバーカラーである5色の光が飛び交う煽り映像が流れる中、白金燐子役の志崎樺音(Key.)、宇田川あこ役の櫻川めぐ(Dr.)、今井リサ役の中島由貴(Ba.)、氷川紗夜役の工藤晴香(Gt.)、湊友希那役の相羽あいな(Vo.)が、上手と下手にシャンデリアが輝くステージに順に登場。それぞれ定位置に付くと、5月にリリースされたミニアルバム 『ROZEN HORIZON』の収録曲にして、ライブ初披露となる「THE HISTORIC...」をドロップして、有明アリーナいっぱいに詰めかけた「BanG Dream!」ファン、通称バンドリーマーをどよめかせた。

 櫻川のキレのいい四つ打ちキックに乗せて<Are you ready? We are ready.>と、自身のライブと【BanG Dream! 10th☆LIVE】の幕開けを高らかに宣言するこの楽曲を終えると、彼女たちはゴシッキーなRoseliaの一員としての横顔と、声優やいち個人としての横顔が行ったり来たりする「BanG Dream!」シリーズならではのステージを展開。それぞれがソロを回し合うメンバー紹介から、志崎の奏でる荘厳なストリングスの音色が楽曲を先導する「BRAVE JEWEL」や、ステージ最前線に歩を進めた工藤が華麗にターンを極めつつピックスクラッチしたのちにギターソロで魅せる「Opera of the wasteland」、全メンバーによるラップのようなコーラスを聴かせる「PASSIONATE ANTHEM」、ハイトーンボイスを見せつける相羽のボーカルを縫うように、志崎と工藤がドラマチックなソロをリレーする「Ringing Bloom」と、コンパクトなMCを混ぜつつ、シリアスなナンバーを連発する。さらにミディアムチューン「“UNIONS” Road」では<私達しか知らない道へと><恐れなどない 歩く術ならば><此処にある>と歌い上げ、アリーナ中をドラマチックな空気に包み込んでいた。

 ところが「“UNIONS” Road」をプレイし終えたあとはムードが一変。メンバーがステージ袖にハケると、ステージ奥と上手、下手に設置された巨大スクリーンには、とある会議室での5人の姿が映し出される。その映像中、ディレクターから「YouTuberやTikTokerみたいに、“ロゼリアー”として面白プロモーション映像を作れ」と、櫻川曰く「雑じゃないですか?」という映像内映像制作企画が提案される。それでも、その企画を不承不承引き受けた彼女たちだったが、映像制作陣が用意する数あるミッションを、いかにゴシッキーなRoseliaメンバーという役どころそのままにこなせるか、というチャレンジ動画の撮影が始まると、あまりにもあまりな内容に……。

 相羽がコーラに界面活性剤を含むメントスを入れることで炭酸を噴き上がらせる“メントスコーラ”に挑戦するも、思ったほどにはコーラが射出されず、一同、“素”でガッカリしてしまう。また中島がRoseliaトレーディングカードを開封する模様を追う動画企画では、なぜか中島の小学校時代の写真をあしらったカードが封入されており、それを引いた本人がやっぱり“素”で驚愕。櫻川が挑戦した、皿に乗ったビー玉を隣の皿に音を立てずに箸で移すチャレンジ企画も、当然のように失敗、もちろん宇田川あこを演じる櫻川像もあっさり瓦解していた。

 しかし、それまでのドレッシーな装いから、パフスリーブをあしらうなど大胆にリメイクしたスクールガールルックにお色直しして再びステージに現れた5人は、またもクールかつエモーショナルなパフォーマンスを繰り広げる。
 
 櫻川と中島が繰り出すシャープな8ビートに乗せて、スタンドマイクを立てた相羽が弦楽器隊と巧みなコーラスワークを披露する正調ロックナンバー「Determination Symphony」で幕を開けた後半戦では、早々に、10月26日リリース予定のシングル曲「Swear ~Night & Day~」を初披露。志崎のスペーシーなシンセサイザーサウンドと、リバーブを効かせまくった工藤のアルペジオが絡み合ったかと思えば、全楽器隊とも汚しまくった音色で後ノリのビートを刻む異色の1曲で、またもバンドリーマーの度肝を抜いて見せる。

 さらにそれぞれの新衣装を紹介するMCののちには、志崎のメロウなピアノが耳に残る「Sprechchor」と、中島の巧みなオブリガードが光る「陽だまりロードナイト」という2つのミディアムチューンを披露。“ゴシック”に軸足を置きつつも、Roseliaというバンドのディスコグラフィの幅の広さ、リッチさを見せつけた。

 そして相羽の「まだまだいける?」のシャウトとともにライブは後半戦に。中島がベースソロを披露したかと思えば、両腕でハートマークを作り、あわせて投げキッス。さらには志崎が流麗なピアノソロ、工藤がライトハンドのギターソロを回し合うダンスチューン「R」と、シンフォニックなストリングスの音色で楽曲をキックする、まさにRoseliaの真骨頂とも言うべき「overtuRe」を連発。そして相羽の「また必ず会えることを願って。次はさらなる高みで逢いましょう」の言葉とともに、櫻川の安定感あるツーバスドラムに乗せた高速チューン「FIRE BIRD」をパフォーマンスして、ライブ本編を締めくくった。

 アンコール代わりのバンドリーマーのハンドクラップの中、まず流れ出したのは、またも「面白プロモーション映像」制作を目指す幕間映像。工藤が遠くに置かれたコップの中にピンポン球を放り込むミッションにチャレンジし、志崎が、映像制作陣が明らかにそこら辺で拾ってきたであろう石ころの数々を品評する“水石”(すいせき)企画で会場の笑いを誘っていた。

 その後、アンコールに応えてライブTシャツ姿で現れたRoseliaの5人はリラックスモード。それぞれの役を離れ、相羽が大阪弁全開のトークを繰り広げるなど、“素”の声優であり個人としてのキャラクターのまま、最新ミニアルバムのタイトルナンバー「ROZEN HORIZON」を投下する。さらにラストナンバー「-HEROIC ADVENT-」では相羽がメンバーそれぞれのもとに駆け寄り、中島はステージ上手の端へとダッシュ。櫻川のそばまで歩を進めた工藤は、彼女のドラムスティックを借りてクラッシュシンバルを連打するなど、メンバーそれぞれがこの日、有明アリーナという大バコでワンマンのステージを踏めたことを全力で楽しむかのようなパフォーマンスを見せていた。

 Roseliaは、2015年結成の前出・Poppin'Partyに続いて、「BanG Dream!」プロジェクト発足から、ほどなくして結成されたバンド。この日のステージではキャリア6~7年にふさわしく、バンドコンセプトどおりのゴシッキーかつテクニカルなステージを届けてくれた。それでいて、幕間映像ではRoseliaの一員としての横顔を離れ、“年ごろの女の子”としての一面も惜しげもなく披露。ゴシッキーなハードロックのファン、そしてアニメ・声優ファンのいずれもが満足・納得のいく一夜だったと言えるだろう。

 なお、Roselia10月26日に、ライブでも披露した「Swear ~Night & Day~」を含むシングル盤を発表。また同日20時から、CSチャンネル・MUSIC ON! TVでこの日のライブの模様が放送される。

 さらに11月12日には埼玉・ベルーナドームで、彼女たちはもちろん、MorfonicaPoppin'PartyRAISE A SUILENらが出演する【BanG Dream! Special☆LIVE Girls Band Party! 2020→2022】が、2023年2月4~5日には東京・有明アリーナで【BanG Dream! 11th☆LIVE】が開催される。

Text by 成松哲


◎公演情報
BanG Dream! 10th☆LIVE】
DAY1:RoseliaSonnenschein】
2022年9月22日(木)
東京・有明アリーナ
セットリスト
01.「THE HISTORIC...」
02.「BRAVE JEWEL
03.「Opera of the wasteland
04.「PASSIONATE ANTHEM
05.「Ringing Bloom」
06.「“UNIONS” Road」
07.「Determination Symphony
08.「Swear ~Night & Day~」
09.「Sprechchor」
10.「陽だまりロードナイト」
11.「R」
12.「overtuRe
13.「FIRE BIRD
アンコール
14.「ROZEN HORIZON」
15.「-HEROIC ADVENT-」