出入国在留管理局(入管)に収容された在留外国人らの人権保護に取り組む「STOP!長期収容」市民ネットワーク10月6日、東京・永田町参議院議員会館で集会を開き、政府に対して入管法改正案の提出断念と、日本社会での共生を前提に、難民認定申請者らを受け入れる政策への転換を求めた。

クルド人男性の妻「法改正なら夫も送還対象になってしまう」

現在の入管法では、難民認定の申請者は強制送還の手続きが停止される。それに対して改正案には、申請を3回以上繰り返した人については、4回目以降の申請中であっても強制送還できるという例外規定が盛り込まれた。

与党は昨年4月、通常国会に改正案を提出したが、野党や市民団体が例外規定に強く反発。さらに名古屋入管で、スリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさんが死亡した問題が社会で大きく取り上げられたこともあり、採決前に廃案となった。

その後今年の通常国会、臨時国会でも提出が見送られているが、法務大臣は9月の記者会見で、法案を再検討し必要な修正を加えた上で「速やかに国会提出する」と答弁している。

集会では、入管収容経験のある当事者や配偶者が登壇。クルド人の夫が4度目の難民認定を申請中だというまゆみさん(仮名)は、「夫は日本人の私と婚姻していてもなかなか在留資格を得られず、改正法が成立したら強制送還の対象になってしまう。改正されないよう、祈るしかありません」と話した。その上で「ある日突然、家族がバラバラに引き裂かれるつらさを、皆さんも一度考えてほしい」と呼び掛けた。

●「現行法でもウクライナ避難民の受け入れは十分可能」

ネットワークの児玉晃一弁護士は、ウクライナ避難民の受け入れ拡大を理由に、法改正を推し進める動きが出ているとした上で「現行法でもウクライナ避難民の受け入れは十分可能であり、それを口実に改正法案を成立させようとするのは、政府の欺瞞だ」と批判した。

難民の取り扱いについては、日本も加盟している難民条約で「生命や自由が脅威にさらされる恐れのある国へ、難民を強制送還してはならない」という「ノン・ルフールマン原則」が定められている。日弁連も改正法案の例外規定が同原則に反する恐れがあるなどとして、抜本的な見直しがなされない限り、廃案にすべきだとの会長声明を出している。

●「いらない外国人は、みんな帰ってもらいたい」と入管職員に言われた

ネットワークはまた、在留外国人は現在の法制度下でも、長期収容などの非人道的な扱いを受けていると批判。前述したまゆみさんの夫は2017年、突然8カ月にわたって収容されたが、その際にまゆみさんは入管職員から「いらない外国人は、みんな帰ってもらいたいんですよ」などと言われたという。

難民認定申請者のピーターさんは、アフリカから来日した時、成田空港で入国警備官から激しい暴行を受けたと発言。「G7の一角を占める日本が、助けを求めてきた難民申請者を、役に立たないかのように国に追い返して、死に追い込もうとしている」と批判した。

またイラン人のベヘザード・アブドラヒさんは、4年半入管に収容され2020年、拘束が一時解かれる「仮放免」となったが、「狭い部屋から、町という新しい収容所に入れられたようなもの」だと強調した。さらに「(仮放免者は)健康保険にも入れず、移動の自由も仕事をする権利もない。銀行口座も、電話やWi-Fiすら持てない。普通の人間として存在を認めてほしい」と訴えた。

●「難民認定制度が外交政策に影響され、独立性がないことも課題だ」

日本の難民認定率は1%程度と非常に低く、認定基準は極めて厳しい。また申請から結果が出るまで、平均4年以上もかかる。申請者は長い「結果待ち」の間、就労などが大幅に制限され、公的な生活支援も乏しい。さらに不認定になれば「仮放免者」として、定期的に入管へ出頭するなどの義務が生じ、収容・強制送還のリスクも出てくる。

トルコ国籍を持つクルド人が、難民認定を受けられたケースは、過去に1例しかない。クルド人を迫害するトルコが親日国であることから「外交的配慮」があるとされる。全国難民弁護団連絡会議の難波満弁護士は集会に登壇し「難民認定制度が外交政策に影響され、独立性がないことも課題だ」と指摘した。

移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)の鳥井一平代表理事は「日本では、すでにあらゆる職場で外国人が働いている。入管法改正を阻止するだけでなく収容者の処遇改善、さらに難民申請者・仮放免者が地域社会でともに生活できるよう、さまざまな制度を真の意味で改正していく必要がある」と話した。

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