故安倍元首相の国葬では世界中から要人らが来日しました。ただ、同じように世界各国の要人が参列した3年前の即位礼正殿の儀のときとは明らかに違う点も。羽田空港に飛来した様々な特別機から見えたコロナ禍後の特徴とは?

ボーイングとエアバスの4発機という異色コンビ

安倍晋三元首相の国葬が2022年9月27日日本武道館で行われました。弔問団を派遣した国も多く、200以上の国や地域、国際機関などから代表者が参列しています。都内の羽田空港やアメリカ空軍横田基地には25日ごろから特別機が相次いで飛来していました。

なお、日米豪印4か国、通称「クアッド」首脳会議のメンバーでは、インドのモディ首相やオーストラリアアルバニージー首相が来日しており、今年5月に羽田空港へ初飛来したインド政府専用機のボーイング777を再び見ることができました。

こうした特別機の飛来ラッシュは、天皇陛下が即位を宣言された2019年10月の「即位礼正殿の儀」以来となります。今回はボーイング747のような4発機を使用したのはカタールアミリフライトぐらいで、それ以外はボーイング777ボーイング737といった双発機、あるいはガルフストリームG550のような小型のビジネスジェットでした。

ボーイング747-8(登録記号A7-HHE)を使用していたカタールアミリフライトですが、随伴機も4発エンジン機のエアバスA340-300(登録記号A7-AAH)で、かなり個性的な機体コンビにて運航していました。

アミリフライトはカタール政府が所有・運営する航空会社で、王族や政府高官の輸送に使われています。ほとんどの機体が、定期便を運航するカタール航空と同じ塗装を施されており、その中には大型輸送機C17「グローブマスターIII」の姿もあります。

羽田空港に飛来したアミリフライトのボーイング747-8には、タミム・ビン・ハマド・サーニ首長が搭乗しており、コールサインは「Amiri One(アミリ・ワン)」が使用されていました。ちなみに「登録記号A7-HHE」は、747-8シリーズの旅客型(747-8I)として初めてデリバリーされた機体で、2014(平成26)年から運航しています。

双発エンジン機ばかりとなったVIP機の世界

ボーイング777を使用したのはインドヨルダン。前者はインド空軍が運用する777-300ER(登録記号K7066)、後者はプレジデンシャル・フライトの777-200ER(機体記号A6-ALN)でした。

インド政府専用機の777-300がモディ首相を乗せて飛来したのは、前出したように今回で2回目となります。同機がインド空軍で運用を開始したのは2020年のこと。同国は長らく要人専用のワイドボディ機を持たず、VIPが外遊する場合は、国営企業のエアインディアが保有する747-400をチャーターしていました。政府専用機として日本に初めて飛来したのが5月のクアッドです。

ヨルダンアブドラ2世国王らが搭乗したプレジデンシャル・フライトの777-200は、「即位の礼」のタイミングでも飛来しています。ただ、この時はアラブ首長国連邦UAE)アブダビ執行評議会のハッザーア・ビン・ザーイド副議長を乗せていたため、機体にはUAEの国名と国旗が描かれていました。今回はヨルダン国王が使用したため、こうした表記がなかったようです。

サウジアラビアからは、同国のファイサル外務大臣らを乗せてスカイ・プライムのエアバスA330-200 Prestige(機体記号HZ-SKY2)が飛来。同社はリヤドを拠点にビジネスジェットやプライベートジェットの運航を行っており、政府要人が外遊する際にも使われています。機内には広々とした執務室やベットルーム、シャワー室が置かれ、とても豪勢な内装だとか。サウジアラビアは王族が使用する政府専用機も保有しており、日本へはボーイング747エアバスA340が飛来したことがあります。

カラーリングが特徴的なインドネシアのボーイング737

インドネシアのマルフ・アミン副大統領夫妻は、インドネシア空軍のボーイング737-800(登録記号A-001)に乗って来日しました。多数の島を抱えるインドネシアは、政府要人の国内移動の際も飛行機が用いられており、空軍内にはボーイング737やフォッカーF27などを運用するVIP専用の飛行隊が編制されています。

国葬に伴って飛来した737-800は2014(平成26)年に導入された比較的新しい機体で、国内・国外問わず要人の輸送に使用されています。なお、7月にジョコ・ウィドド大統領が来日した際は、ガルーダインドネシア航空のボーイング777-300ER(機体記号:PK-GIG)がチャーターされ使われていました。

このほか、オランダからは政府専用機のボーイング737-700(PH-GOV)が、イギリスからはタイタン・エアウェイズのエアバスA320neo(G-GBNI)が飛来。カザフスタンからはCRJ-200SF(UP-C8502)が、ポーランドからは同国空軍のガルフストリームG550が羽田に降り立っています。

国葬に伴う弔問団の派遣で運航されたVIP専用機は、記事で紹介した以外にもさまざまな機体が羽田空港に集いました。2023年には広島でG7サミットが開催されるため、またこうした特別機の姿を見ることができるでしょう。

カタールアミリフライトのボーイング747-8(深水千翔撮影)。