10月8日に決勝戦が放送される『キングオブコント2022』(TBS)だが、初進出組が5組と今年も誰が優勝してもおかしくない本命不在のカオスな大会になることは間違いないだろう。そこで出場芸人のYouTubeチャンネルから特に注目したい4組を紹介し、その魅力を紐解いていきたい。

(参考:【動画】3年連続ファイナリストの決勝ネタ

最高の人間

 筆者が今大会で最も推したいコンビが、元・巨匠の岡野陽一と吉住が組んだ「最高の人」間だ。屈指のクズ芸人として君臨している岡野と、『女芸人No.1決定戦 THE W』4代目女王に輝いた吉住。この並びだけで興奮してくる。2人のネタに共通するのは「狂気の中の哲学」。たとえば吉住が『R-1グランプリ2022』では、自分の周りの人間には一切怒らないのに芸能人の不倫だけ絶対に許さない女を演じた『正義感暴れ』と、岡野陽一が『R-1グランプリ2019』で披露した風船に鶏肉をくくりつけて空へ飛ばそうとするおじさんを演じた『やさしさ』。どちらも「ヤバい人間の狂気」を笑いつつ、その根底にある「人間の愚かさ」を突きつけてくる強烈なメッセージがあり、観た後はいつまでも心の中に残り続けている。普段私たちが生活する上で無意識に蓋をしていたドロドロとした汚い汁を大衆の前に見せてくるのだ。「誰も傷つけない笑い」が称賛されがちな時代でその流れに真っ向から逆らうようなネタは、すべてを凌駕する圧倒的な「癖(へき)」が滲み出ている。岡野陽一の話術と、吉住の演技力が合わさればとんでもないことになるのは間違いない。

かが屋

 「ネタ」という点においてとんでもない「純度」を誇っているのがかが屋だ。「YouTubeチャンネルでも毎週水曜日、日曜日に100%ネタのみをアップし続けている。恐ろしいのはその「バリエーションの豊富さ」だ。ボケ・ツッコミが設定ごとに入れ替わり(ネタによってはいっさいツッコまないものもある)、加賀と賀屋、どちらも表情の演技が抜群に上手いことから、言葉を発さずともその人物の背景まで見えてくる。どのネタも喜怒哀楽入り混じった心がグッとなるようなコントばかりで、特に英語でバズったツイートを日本語に翻訳する学生を描いた『家庭教師』、UFOキャッチャーに1万円も使ってしまった男とその友人の物語『UFOキャッチャー』は毒と皮肉が溢れ出ている。大会でも視聴者の感情をかき乱すようなコントを見せてくれるのが楽しみで仕方ない。

ニッポンの社長

 決勝進出芸人の中で最も「なにをしてくるか分からない怖さ」を感じるのがニッポンの社長だ。小道具、映像、音響、ウケるためなら何でも使うバーリトゥードなコントをする彼らの真骨頂はYouTubeチャンネルでも拝むことができる。単独ライブの幕間で毎回披露されている「映像コント」では自分たちだけでなく、ほかの芸人も巻き込んで一本の作品を作り出すのだが、どれも絶妙なクオリティの編集技術と設定の不条理さが組み合わさったど衝撃的なものに仕上がっている。大会でも爆笑と困惑が入り交じるような、良い意味でクレイジーなネタを味わいたい。

ロングコートダディ

 最後に紹介するのが、M-1グランプリ2021でも決勝に進出しブレイク間近と言われているロングコートダディのYouTubeチャンネル「ロングコートダディ和尚のゲーム念仏」。実は2021年に「ゲーム実況-1グランプリ」という大会で優勝するほどで、どこまでも力の抜けた自然体の実況は、掴みどころがなく、その独特の雰囲気はネタと同じく一度ハマれば抜け出すことが出来ない。今大会においてもそのユルさと底知れなさで大きな爪痕を残してくれるはず。

 「予測不能」という観点においては過去最高と謳われた去年をも上回るメンバーとなったキングオブコント2022。この4組の中に優勝者がいるのかは分からないが、我々視聴者にできることはただひとつ。笑いすぎて腹がちぎれる用意を万全にしてこの日を迎えたい。

(文=かんそう)

YouTubeより