本記事は、フランクリン・テンプルトン・ジャパン株式会社が10月4日に配信したレポートを転載したものです。

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大統領選挙はルーラ対ボルソナロの決選投票へ

10月2日に投票が行われたブラジル大統領選挙は現職のボルソナロ大統領(右派)とルーラ大統領(左派)の接戦となり、ルーラ氏が得票率48.4%で第1位、ボルソナロ氏が同43.2%で第2位となりました(図表1)。ただし、いずれの候補も過半数の得票に届かなかったことから、大統領選挙は10月30日ルーラ氏とボルソナロ氏の決選投票において勝敗が決定される見通しです。

ルーラ陣営の政策は中道寄りにシフトする可能性

10月3日のブラジル・ボベスパ指数は、選挙結果を好感して前週末比+5.5%の大幅上昇となりました。今回、大統領選挙が決選投票までもつれる結果となったことは、ブラジル市場に好影響を与えるとの見方が浮上しています。第1回目投票で優勢な結果となったとは言え、ルーラ氏が決選投票で勝利するには中道票の取り込みがカギとなることから、ルーラ陣営が中道寄りの穏健路線にシフトする可能性があるとみられています。ルーラ氏に対しては副大統領候補のアルキミン元サンパウロ州知事や、メイレレス元財務相などの経済改革派が支持していることも、海外投資家の信認回復に繋がっている模様です(図表2)。一方、ルーラ氏を僅差で追うボルソナロ氏にも再選の可能性は依然として残されています。決選投票でボルソナロ氏が逆転勝利する場合には、民営化など経済改革の継続が投資家の信認回復を後押しすると期待されます。

政策の実現には中道政党との協調が必要

また、大統領選挙と同時に実施された連邦議会選挙では、ボルソナロ氏所属の自由党(PL)が躍進し、上下両院において最大政党に浮上しました(図表3)。

もっとも、上下両院議会では単独で過半数議席を握る政党はなく、決選投票においてルーラ氏とボルソナロ氏のどちらが勝利したとしても、政策の実現には中道政党との協調が必要と考えられます。特にルーラ氏が公約に掲げる「歳出上限法の撤廃」などの政策は議会での憲法改正が必要なため、政策実現は必ずしも容易ではありません。今後、10月30日決選投票が近づくに連れて、各陣営の主要閣僚(経済相など)の人選や現実的な政策公約の修正などにも市場の注目が集まりそうです(図表4・5)。

和泉 祐一

フランクリン・テンプルトン・ジャパン株式会社

シニア リサーチアナリスト