2016年の初演から数えて、コンサート版も含めると早くも5度目となる日本版『ジャージー・ボーイズ』。ザ・フォーシーズンズの栄光と挫折を、4人それぞれの語りと彼ら自身のヒット曲によって綴り、ブロードウェイで大ヒットしたミュージカルの日本オリジナル演出版だ。誕生の地であるシアタークリエから、ミュージカル版としては初めて場所を移した公演が10月8日、日生劇場で開幕。初日に先駆けてプレビュー公演が行われた。

チームGREEN(左から、花村想太、有澤樟太郎、spi、尾上右近)

6日のGREENは、spiのみミュージカル版経験者で花村想太と有澤樟太郎は全くの新キャスト、尾上右近が2020年の帝国劇場コンサート版以来という“若葉”なチーム。7日のBLACKは、過去4度皆勤賞の中川晃教と初演キャストの藤岡正明に、帝劇コンから参加の東啓介と大山真志を加えた“重量級”チーム。過去のRED、WHITE、BLUEもそうだったが、今回の2チームも、面白いほどチーム名に冠された色のイメージ通りのボーイズだ。

中川晃教

そのなかでもまずは、日本版成功の立役者中の立役者、中川フランキーを改めて称えさせていただこう。高く高く上空の、およそ人間が届くとは思えないところにある空気を、彼の歌声は軽々と、次々と切り裂いては振るわせながら、私たち観客をフランキー・ヴァリの歌声に昇天した当時のファンと同化させてくれる。彼がその歌声を宙に放てるよう、見えない乗り物に乗せているのがふてぶてしくも頼もしい藤岡トミーで、それをイヤイヤ漕いでいるのがお人好しの大山ニック、放たれる歌声を上空で待機して操っているのがスマートな東ボブ……チームBLACKは、喩えるならそんな印象だ。

藤岡正明
東啓介

一方のチームGREENは、4人揃ってひとつの乗り物を漕いでいるよう――というのはBLACKに引っ張られた少々強引な喩えだが、グループの軌跡を後から振り返っている感の強いBLACKに対し、一つひとつ確かめながら今そこで軌跡を描いているような印象を受けたのは事実。ひたむきな花村フランキー、色気と哀愁の漂う右近トミー、余裕綽々の有澤ボブ、大山とはほぼ正反対の豪快なspiニック、それぞれが魅力的だった。

花村想太
尾上右近
有澤樟太郎
spi

新生ボーイズに加え、シアタークリエの倍以上の客席数を持つ日生劇場仕様にバージョンアップされた演出もまた今回の見どころ。開演前、舞台上に置かれたモニターに客席が映し出されているのはクリエ時代と変わらぬ趣向だが、その客席がピンクなだけで始まる前から新鮮だった。大きくなったセットに刷新された衣裳と、ほかにも新鮮な要素は多々あれど、最大はやはりコンサートのシーン。広い日生劇場でミラーボールが回って華やかな照明が入ると、まるで本当にザ・フォーシーズンズのライブに来ているようで、クリエ版とは種類の異なる臨場感を提供してくれていた。

取材・文=町田麻子
写真提供=東宝演劇部

ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』チケット情報
https://w.pia.jp/t/jersey2022/

ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』より、チームBLACK(左から、東啓介、藤岡正明、中川晃教、大山真志) 写真提供:東宝演劇部