【木村ヒデノリのTech Magic #136】 以前から気になっていたホンダ電気自動車Honda e」。フロントパネル全面がディスプレイで、なんとサイドミラーまでカメラになっているという未来感満載の車だ。コンセプトカーがそのまま量産されたようなロマン溢れるデザインは、乗っていて常にワクワクしていられる楽しさがあった。

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●未来感溢れる「日本的」なBEV



 価格帯も起因して欧州風なデザインが目立つBEVの中で唯一日本的なデザインなのがHonda eだ。日本の狭い路地もスイスイ運転できるだけでなく、高速道路ではパワフルな走りを見せる。日本のコンパクトカーのデメリットだった走りの不満をEVで解決した車だ。「街中ベスト」のコンセプトを見事に実現している。

 運転支援システムには0キロからの渋滞追尾もあるため、ちょっと遠方に出かけるのにも重宝する。自動駐車システムはかなり実用的と言えるほど手早く停められるので、駐車が苦手なドライバーは重宝するだろう。

 筆者は運転や駐車には慣れているが、自動駐車は便利で使う頻度が高かった。驚くほど素早く綺麗に停めてくれる精度の高さは「駐車なんて自分でできるよ」と思っている人も一度体感するとついつい使ってしまうのではないだろうか。


●かなり攻めたデザインの虜になる人が続出



 コンセプトカーをそのままリリースしたかのようなミニマルなデザインもHonda eの魅力だ。カメラ化したミラーは暗くても見やすかったり、助手席の人も確認できたりと実用性も高いが何よりデザインとして優れている。

 充電口はフロントのセンターに配置され、ガラスや照明を施すなど毎日使うたびに満足できるよう考えられている。センターに充電口があるという設計は左右どちらからもアクセスできる点で実用面においても有用だ。

 窓は前後ともにサッシュレスを採用。小さめな後ろのドアも圧迫感が軽減され快適に使える。後部座席にあるチャイルドシート固定金具は隙間に埋まっておらず、カバーを外すとしっかりと露出するタイプなので利用しやすい。

 また、コンパクトな車内を広く感じさせてくれるのがルーフ窓だ。開けていてもあまり暑くならないので、夏場も開けたまま利用でき開放感を楽しめる。後部座席上のLEDも4か所とあまり見ない仕様だが、これが明るくて非常に便利。ピラーについてスイッチもルーフにあるより使いやすい。

 デザイン性が高いだけでなく、日本的なマインドで痒いところに手が届く実用的な設計になっているのには驚いた。これまでの考えを踏襲するのではなくゼロベースで考え抜かれていることも他の車にない魅力だ。


●パワフルに走るコンパクトカーの完成形



 これまでN-BOXなどホンダコンパクトカーを試してきたが、コンパクトさと走行性能はトレードオフになっていた。しかしHonda eはEVならではのパワーで高速の追い越しなどでも非常に安心感がある。

 スポーツモードを使わなくても追い越しの際スムーズに加速し、コンパクトカーで気になるようなエンジンの音もない。EVならではの踏んだらすぐに前に出てくれる操作感は女性や運転初心者でも安心できる点だろう。

 コンパクトカーでは加速や安定性の面からどうしても高速道路走行などに不安があったが、Honda eはそうしたデメリットがない。コンパクトなのに安心して走れる完成形と言えるのではないだろうか。


●BEVは自分の利用シーンで選ぶ時代



 ただバッテリー持ちに関しては良いとは言えない。BEV全般に言えることだが、電費に関してはまだまだガソリン車に敵わない。Honda eも東京から愛知まで行くのには3回充電しなければならなかったので、そういった不便さは否めない。

 しかしブレーキを頻繁にかける街乗りではかなり優秀だし、他のBEVよりも小回りが効く。コンパクトなのにパワフル、音が静か、などガソリン車にないメリットが多くあるので、それらと電費を天秤にかけて選ぶべきだろう。

 普段あまり遠出をせず、自宅周辺で乗るような方には非常に向いていると言える。デメリットだけに目を向けてガソリン車を選ぶのではなく、利用シーンを想像して問題なさそうなら思い切って電気自動車を選ぶのもあり。そうすればこれまで得られなかったメリットを享受することができるだろう。毎日家で充電して街乗り、というニーズにはぴったりフィットするHonda e。デザインが可愛くてコンパクトなBEVを求める層にはもってこいの電気自動車だった。(ROSETTA・木村ヒデノリ

■Profile

木村ヒデノリ

ROSETTA株式会社CEO/Tech Director、スマートホームブランドbentoを展開。

普段からさまざまな最新機器やガジェットを買っては仕事や生活の効率化・自動化を模索する生粋のライフハッカー。2018年には築50年の団地をホームハックして家事をほとんど自動化した未来団地「bento」をリリースして大きな反響を呼ぶ。普段は勤務する妻のかわりに、自動化した家で娘の育児と家事を担当するワーパパでもある。
今回試乗したのは「Honda e Advanceプレミアムクリスタルレッドメタリック」。税込価格は495万円