吉沢亮が主演を務めるドラマ「PICU 小児集中治療室」(毎週月曜夜9:00-9:54、フジテレビ系)の第1話10月10日に30分拡大で放送された。小児専門の集中治療室に配属された新米小児科医・武四郎(吉沢)の涙の場面が大きな反響となったが、そこでの先輩医師・植野役の安田顕も見る者の心を震わせる演技を披露した。(以下、ネタバレがあります)

【写真】吉沢亮“武四郎”と握手する安田顕“植野”

北海道を舞台に、小児医療を描く

同ドラマは「大規模なPICUの運営は極めて困難」とされる広大な北海道で、吉沢演じる“しこちゃん先生”こと新米小児科医・志子田武四郎(しこたたけしろう)が先輩医師らと共に、どんな子どもでも受け入れられるPICU(Pediatric Intensive Care Unitの略称で小児専門の集中治療室のこと)を作るため、そして、1秒でも早く搬送できる医療用ジェット機の運用を実現するために奔走する姿を描く。

“子どもの命”をテーマに「生きるとは」「命とは」「家族とは」という問いに、真正面から向き合うメディカル・ヒューマンドラマとなる。

武四郎の上司で、日本各地でPICUの整備を推し進めてきた小児集中治療のパイオニアである植野元を安田顕、武四郎と同時期にPICUに配属された救命医・綿貫りさを木村文乃、植野にヘッドハントされてPICUにやってきた看護師・羽生仁子を高梨臨、武四郎の幼なじみの救命医・矢野悠太を高杉真宙、同じく幼なじみの小児外科医・河本舞を菅野莉央、武四郎が子どものころから好きだった涌井桃子を生田絵梨花、女手一つで武四郎を育てた母・南を大竹しのぶが演じる。

■主人公・武四郎に影響を与える植野とは?

第1話は、北海道の地域医療の厳しさを突き付けると共に、実家から通える病院であれば何科でもよいと考えていた武四郎の医師人生が変わろうとする瞬間をとらえた。そこに大きな存在感を放ったのが安田演じる植野だ。

植野は、アメリカでPICU医の資格を取得し、帰国後に日本各地でPICU開設に尽力してきた人物。北海道知事・鮫島立希(菊地凛子)に頼まれ、武四郎が勤める丘珠病院にPICUを新設するために東京からやって来た。

おだやかな口調の物腰柔らかな心優しい性格で、PICUに異動してきたばかりの未熟な武四郎のことを“しこちゃん先生”と名付けて、愛情をもって指導していく。

安田顕の涙をためた目の演技が胸を打つ

設立されたばかりのPICUは、植野、武四郎、綿貫、羽生の4人だけで圧倒的な人材不足。そんななか、発症から4時間も経過した少女が運び込まれてきた。同じ病院の救命医・東上(中尾明慶)や麻酔科医・今成(甲本雅裕)、小児外科科長・浮田(正名僕蔵)らも駆け付けて懸命な治療が行われるが、亡くなってしまう。

植野は、すぐに治療に携わったスタッフたちとミーティングを開いた。どうすれば少女を救えたのか意見を出し合う様子に、武四郎は涙があふれ、「どうしてそんな何もなかったように話せるんですか」と問い掛けた。

すると「次に同じことが起きたら必ず助けられるように、僕たちは経験を自分の血と肉にするために、話すんです。分析するんです」と植野。そして、PICUが道内の医師たちに周知され、医療用ジェット機が運用されていたら、助かった可能性があると語る植野の目は赤く、潤んでいた。

振り返れば、少女に心臓マッサージを行っているとき、「大丈夫、戻って来て」と繰り返し、「1時間たちました」と東上に止められたときに顔を上げた植野の目も涙に濡れているようだった。

これまでも多くの命と向き合ってきた植野の、小さな患者、そしてPICUにかける思いを、安田はおだやかな口調のままで、けれども魂のこもった目の演技で見せ、説得力を持たせた。その思いに触れた主人公の武四郎は、医者の仕事に向き合うことになるのだ。

タイトルがTwitterのトレンド入りするなかで、吉沢の泣きの演技と共に安田の演技に胸打たれた視聴者も多く、「ヤスケン最高」「底知れない表現力に感動しました」「ヤスケンさんの温かい人間力溢れる演技よ」などと反響が集まった。

今年はドラマへの出演が続いている安田。前シーズンの7月期は「初恋の悪魔」(日本テレビ系)で自称小説家の怪しい人物として登場し、4月期には「未来への10カウント」(テレビ朝日系)、1月期には「逃亡医F」(日本テレビ系)への出演と同時に主演ドラマ「しもべえ」(NHK総合)でアプリから現れた、ひとことも話さないおじさんに扮(ふん)して話題をさらった。個性的なキャラクターもなんなくこなすふり幅が見事だ。

本作での温かく包み込むような優しさを感じる雰囲気を醸し出している安田も目が離せない。

◆文=ザテレビジョンドラマ部

吉沢亮“武四郎”の先輩医師、PICU科長の植野を演じる安田顕/(C) フジテレビ