激辛料理イメージ

「痛い痛い、やばいコレ!」──。大量のスパイスが入った料理を食べたお笑い芸人や俳優が、涙を浮かべながら辛さを訴える…。バラエティ番組でおなじみの光景だが、こうしたリアクションが見られなくなるかもしれない。

いま、業界内では「激辛料理」がコンプライアンス的に「要注意」になっているのだ…。


■「痛みを伴う笑い」がNG

8月24日、放送作家の辻井宏仁さんが自身のツイッターで、バラエティ番組の定番小道具・ハリセンがコンプライアンスNGになったと投稿。ネット上で大きな話題になった。

芸人のビンタや蹴りなど、これまでバラエティで当たり前に行われてきたことが過渡期を迎えている。きっかけは今年4月に遡る。

放送倫理や番組の向上について放送局に意見する第三者機関である「放送倫理・番組向上機構BPO)」の青少年委員会が「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー番組」について、「青少年の共感性の発達や人間観に望ましくない影響を与える可能性がある」という見解を発表したのだ。ハリセンがNGになったことから見ても、バラエティ番組に対する「規制」が進んでいることがうかがえる。


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■「激辛料理に慎重になっている」

あるテレビ局関係者は、最近はバラエティの定番である「激辛料理」の扱いに慎重になっていると話す。「激辛料理を食べる企画そのものがNGになったわけではありません。ただ、それを食べたタレントが涙を流したり、痛みを訴えるほど辛いものは控えたほうがいいのではないかという意見が出ているんです」(テレビ局関係者)。

バラエティーの激辛料理といえば、世界一辛い唐辛子わさびが大量に入った寿司、辛子シュークリームなどを罰ゲームで食べるのが定番。それらを食べた芸人達が「痛い! 痛い!」と訴えるのが”お約束”だ。

■「自主規制がほとんど」

長らくお茶の間でも親しまれていた企画が、なぜ今「要注意」になっているのだろうか。「涙を流すほど辛いものを食べさせるのは、見方によっては『痛みを伴う笑い』になる恐れがあります。こうした企画が完全になくなることはないと思いますが、コンプライアンス的に厳しいこのご時世、注意を受ける可能性もゼロではありません」(前出・テレビ局関係者)。

バラエティの企画や演出が規制されるのにはこんな背景があるようだ。ある制作会社関係者が語る。

BPOから『それは禁止です』と直接注意を受けているわけではありません。テレビ局側が何か言われたり、クレームが来る前にやめておこうという”自主規制”であることがほとんどです。とはいえ、最近は『あれはダメ』『これは難しい』となることが多いので、現場のスタッフは頭を抱えていますよ」(制作会社関係者)。


■「激辛料理」の今後

前出の制作会社関係者は、「激辛料理」を”自主規制”した場合、どんなふうに扱っていくか課題になると話す。「泣き叫ぶほど辛くないレベルに抑えるか、食べる人を激辛に強いタレントにするかのどちらかになるでしょう。前者の場合、そこまで辛くないものを食べてもリアクションが薄くなってしまうので企画が成り立たなくなる恐れがあります。後者だと、食べる人が限られるので、見る側からすると『またこの人か…』とマンネリ化する恐れがある。現場スタッフは今のままでやりたいんですけどね…」(前出・制作会社関係者)。

もちろん、過度に暴力的な企画は控えるべきだが、だからといって様々なものを”自粛”して作った番組を視聴者は心から面白いと思うだろうか──。

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(取材・文/Sirabee 編集部・斎藤聡人

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