芸人コンビ「マシンガンズ」として活動するかたわら、日々「ゴミ清掃員」としても働く滝沢秀一が、ゴミの捨て方を指南する連載「ベンキマンの捨て方」。ただし、ここで扱うゴミたちは、架空のものばかり。あの漫画で出てきたあの道具や、映画で見たあんな機械など......。実在しない架空のゴミを、現実世界ではどう捨てればいいのか? 前代未聞の"ファンタジーゴミ連載"!

【捨てるもの第15回】タケコプタードラえもん
漫画「ドラえもん」(藤子・F・不二雄)に登場するひみつ道具のひとつ。頭に装着することで、空を自由に飛び回ることが可能に。いまさら説明不要の、ドラえもんを代表する道具。

【画像】ゴミ清掃芸人の滝沢秀一

タケコプターの動力ですが、「充電式」なのか「電池式」なのか、公式設定でどうなっているのか確認できませんでした。

仮に「電池式」だった場合は、とりあえず電池は抜いて捨ててほしいですね。

以前も話しましたが、子供などが使う「防犯ブザー」の電池を抜かずに捨てる方がたまにいます。ゴミ回収車の性質上、ゴミを圧縮しながら回収するので、回収した後のどこかのタイミングでブザーのボタンが押されてしまうことがよくあります。鳴り始めると止めることができず鳴り続けます。とにかく音が大きいので、道行く人は振り返りますし、「痴漢か? 犯罪か?」と家から飛び出してくる人もでてきます。

おそらく、電池を取り出すのにドライバーなどを使わなきゃいけない構造なんでしょう。簡単に電池がはずれちゃったら、いざというときに使えなくなってしまいますから。それであきらめてそのまま捨てるのでしょうが、ちゃんと抜いてほしいなと思います。

ちなみに、東京23区で電池を捨てる場合は不燃ゴミになります。ただ、地域によって「電池の日」や「危険ゴミの日」に捨てる場合もあったりして、回収ルールは意外とバラバラです。

電池で気を付けなければいけない、とても危険なものがあります。それが、平たくて丸い形の「ボタン電池」です。

使い終わった電池を箱に入れておいて、たまったら捨てようと思っていると、爆発することがあります

ボタン電池って、電池の左右でプラスとマイナスに分かれていて、偶然にもボタン電池同士でプラスとマイナスが重なっちゃうと、電流が生まれます。そうなると常に電気が流れ続ける状態となり、あるとき「パーン!」と破裂することがあります。

ゴミ集積所でも、平たい缶にまとめて集めているところをよく目にします。これ、とても危険なので、注意喚起が必要だと思います。

しかし、解決策はとても簡単です。「絶縁」といって、ボタン電池の裏側にテープを貼っておけばいい、ただそれだけです。なので、ボタン電池を捨てるときには必ずテープを貼ってから捨てるようにしましょう。

そして、タケコプター充電式だった場合には、現代の技術で考えれば「リチウムイオン電池」が使われている可能性が高いと思います。

リチウムイオン電池というのは、つまり充電できるバッテリーみたいなもので、携帯電話やパソコンなど、様々なものに使われています。

最近われわれの業界では、ハンディ型掃除機リチウムイオン電池大きな問題になっています。なぜかというと、ものすごく発火しやすいんですね。

リチウムイオン電池は、その中にプラスとマイナスが組み込まれているんですが、圧縮されるとプラスとマイナスが混ざり、その結果発火してしまうのです。

なぜ、ハンディ型掃除機が特に問題になっているかというと、正規品ではなく、海外製の安価な代用品バッテリーを使う人が多いからです。

粗大ゴミの中間処理場には、ハンディ型掃除機の代用品バッテリーの写真が貼りだしてあり、「これだけは絶対見つけて分別してくれ!」という指示が出ています。それだけ発火しやすく危険だということです。

ただ当然、正規品でも圧縮されれば燃える可能性はあります。代替品のほうが燃えやすい、というだけですので、バッテリーは必ず外してから捨てるようにしてください。

気づかずに回収してしまい、その場ですぐ火が出ればまだ対処できるんですが、厄介なことに、リチウムイオン電池は圧縮されてからいつ発火するのかわからないんです。回収車の中で火が出ることもあれば、処理場に入ってから発火することもあります。処理場のベルトコンベヤーが燃えると1億円ぐらいの損失になり、修繕には税金が使われます。

清掃車火災は年間500件ほど起きています(スプレー缶による火災なども含みます)。

では、リチウムイオン電池どうやって捨てればいいんでしょう?

アメリカでは、使い終わったリチウムイオン電池を送り返してもらう形でメーカーが回収したりと、回収システムが確立されています。しかも他社製品でもOKだったりするようです。

しかし日本では、自治体によっては捨てられないとか、回収場所が指定されていたりとかまちまちで、回収システムが確立されていません

正直にいうと、われわれ清掃業者としては、あまり受け入れたくないのが実情です。

コードレス掃除機がそのまま捨ててある場合には、われわれがバッテーリーを外して「バッテリーの墓」みたいな場所にまとめています。その後は、専門業者が回収していきます。

電動歯ブラシ加熱式タバコ、若者に人気のコードレス扇風機ワイヤレスイヤホンも、リチウムイオン電池が使われています。「このぐらいだったらいいだろう」という感じで、可燃ゴミや不燃ゴミにそのまま出す人がとても多いですが、危険です

ただ、捨て方のルールが確立されていないため、致し方ない部分もあるのかもしれません。

ここで一番覚えておいてほしいことは「普通にゴミで出しちゃうと、どこかで燃えちゃうよ」ということですね。

EPR(拡大生産者責任)という考え方があります。それは、ゴミを生産者に戻そうという動きにつながっています。ヨーロッパでは当たり前の考え方ですが、その考えが浸透すれば、ものを作る人たちは自分たちで処理できないものは作らないようになります。自分でリサイクルできるものしか作らなくなるわけです。

要は、作るほうは儲けているけれど、処理するほうが損害を受けなきゃいけないという歪みが問題になっているわけです。

ドラえもんには「自動買取機」という、どんなものでも買い取ってくれるひみつ道具がありますが、今の地球にはこれが一番必要なのかもしれません。

タケコプターのお話、次週も続きます。

滝沢秀一(たきざわ・しゅういち)
1976年9月14日生まれ、東京都出身。
お笑いコンビ「マシンガンズ」として活動するかたわら、ゴミ清掃員としての仕事もこなす。
著作はゴミ清掃員の体験を書いたエッセイ『このゴミは収集できません』ほか多数

※ごみの捨て方のルールは自治体によって異なります。お住まいの地域のルールをご確認ください。

イラスト/北村ヂン

タケコプターの正しい捨て方を考えよう!