「いまがんに罹っていない人」にとっては、がんを予防でき、「がん患者」にとっては、進行を抑制する食事方法があると、みたかヘルスケアクリニックの福島偉院長はいいます。どのような食事なのでしょうか? みていきましょう。

がんを予防する食事

日々の生活で「がんが住みにくい体」を作る方法

がんではない方々も知って欲しいお話です。我々の体には約60兆個の細胞があり、計算上日々約5,000個のがん細胞が生まれています。この毎日出来てしまうがん細胞を退治していくことが重要です。一般的にがんは遺伝子のコピーミスが原因であり、予防には「体を錆びさせないようにしましょう」等々と聞いたこともあるかと思います。「体を錆びさせない」とは、実際にはどのようなことでしょうか? 

医学的には錆びる事を「酸化」という表現をします。体を酸化させる=活性酸素を多く発生させてしまう食品が問題となります。活性酸素を発生させやすいものとして加工食品に使われる種々の添加物や残量農薬などは、どなたでも納得できるのではないでしょうか。

高GI食(高糖質食品)によりメイラード反応(=グリケーション)が生じると大量の活性酸素が発生してしまうといわれています。活性酸素にも種類があり、すべてが悪ではないですが、今回は悪玉活性酸素として有名な「ヒドロキシラジカル」を知っていただければと思います。このヒドロキシラジカルをなるべく発生させない、発生しても速やかに退治することが「がん予防のキー」となります。ではなぜ「ヒドロキシラジカル対策」ががん予防に有効なのでしょうか?

ヒドロキシラジカルの寿命は短いとされます。これは手当たり次第に周囲の物質を酸化して壊れていく性質だからです。ほかの活性酸素よりも反応性が高いともいえます。では、なにを酸化するかといいますと、エネルギー産生を担う「ミトコンドリア」や遺伝情報の「核酸」を酸化してしまうことになります。これこそががん発生の一因と言える根拠なのです。

食事療法による「アルカリ化治療」と「抗酸化治療」

標準治療だけじゃない…「がんを制する」食事療法

標準治療でこれ以上治療が無いといわれた方や治療中の方にも同時進行できる食事療法があります。むしろ日々の実践が必要です。まずは3ヵ月を目標に続けてみたらいかがでしょうか? 毎日の食事こそが体の原料です。食品にも機能があるので単なるカロリー計算だけで食べているはではもったいないです。

がんの食事療法では体の「アルカリ化」と「抗酸化」(活性酸素対策)がキーとなります。体のアルカリ化とは「血液のPH」の話ではなく、「がん細胞周囲のアルカリ化」をいいます。アルカリ化ができているかの判定は尿のPHでみることができます。アルカリ化食品はアルカリ性食品ともいいます。これは代謝されてアルカリとなるもののことです。

一例ですが、レモン梅干しは酸っぱくてその場では酸性ですが、代謝されると残留物ができます。いわゆる、燃えて出た煤の水溶液がアルカリ性に変わるという論理です。ではなぜ「アルカリ化が非常に重要」なのでしょうか?

PH7.4(弱アルカリ)前後で正常細胞は増殖しやすく、がん細胞は増殖できません。がん細胞はPH6.5(弱酸性)前後で増殖するので自ら水素イオンを放出し細胞周囲を酸性にして正常細胞を破壊、アミノ酸を吸収し増殖を繰り返しますこれを「acidaddiction(酸中毒)」といい2020年9月大阪大学によって解明されました。

標準治療でも活性酸素が発生している?

標準治療では、活性酸素が発生・蓄積してしまうともいわれます。実は、標準治療では活性酸素も利用しています。

たとえば次のような治療です。一部の抗がん剤自身が活性酸素を生成させます。放射線が水分子を活性酸素に変化させて、がん細胞のDNAの損傷を図り(放射線の間接作用)がん細胞を自滅(アポトーシス)へと導きます。両者共に正常細胞にも影響をおよぼします。正常細胞に影響が大きければ、がん細胞へと変化するともいわれますが、p53遺伝子(※)などによりがんへの進展が抑制されます。

※p53遺伝子:細胞がストレスやDNA損傷などの「危険信号」を察知すると活性化するがん抑制遺伝子

「抗酸化物質」ががんの発生や進展を促進する

抗酸化物質により体内の活性酸素を消失させ、酸化ストレスを減少させる戦略は、がんの予防および治療に有望と思われてました。しかしながら、抗酸化物質の補充投与により、がん発生率を有意に増加さてしまう結果が出たため、この戦略は有望ではなくなりました。

細胞ががん化するときには遺伝子の変化やこれに伴う微小環境の変化で活性酸素のレベルが上昇し、増殖の停止や細胞死が引き起こされます。がんの悪性化に関与している分子も存在しており、がん細胞が酸化ストレスを緩和させるため、抗酸化物質の産生を増加させることもしています。

抗酸化物質の産生を抑制(酸化しやすく)することで悪性腫瘍の発生や進展を防ぐこともできる可能性があることも事実ですし、抗酸化物質でがんが進展することもあります。こうなってくると、なにがどうなっているのかとなってしまいますが、抗酸化物質の発現を調節する「NRF2というタンパク質」が頑張ってくれていますのでご安心くださいNRF2の安定化を図るためにも悪玉活性酸素の発生抑制や除去に励みましょう。

保険診療ではありませんが、水素の吸入療法によって必要な活性酸素の除去はせずに、ヒドロキシラジカルの除去が出来るというデータも出てきています。がん細胞ばかりに気を奪われずに頑張ってくれている免疫細胞をバックアップすることも考えていきましょう。水素吸入の料金は1時間3,000円~5,000円程度が多いです。各クリニックのHP等には、1分あたりの水素発生量の記載がないところが多いですが、発生量が重要となります。導入機種によって異なるので確認が必要です。

がんを「悪化させる食事」と「制する食事」

前提として、しっかりと食事をとることが重要です。がんを悪化させる食事に「断糖療法」が挙がります。がんは沢山糖分を吸収するので「断糖療法のすすめ」がありますが、これは大間違いです。絶対にやめてもらいたいです。

がんと闘うのは抗がん剤でしょうか? 放射線でしょうか? 答えは自分自身の「がん免疫細胞」が主役です。がん細胞のエネルギー源も糖分ですし、がん免疫細胞のエネルギー源も糖分ですがんを倒す為に大切な免疫細胞まで兵糧攻めするのはいかがなものでしょうか?

がん細胞はミトコンドリアの活動をあえて抑え低酸素状態に耐え、活性酸素の発生を抑制し長生きを図ります。解糖系を使い、ATPというエネルギー通貨を得ます(ワールブルク効果)。ミトコンドリアのTCA回路を使えば、1個のブドウ糖から36個のATPが得られますが、解糖系では1個のブドウ糖から2個しかATPが作られません。そこでがん細胞は沢山のブドウ糖を吸収してATPの作成を図ります。だからといって、がん細胞のみに目を向けた「断糖療法」は荒行となってしまします。ただし合成甘味料は避けて欲しいです。

このがん細胞の特徴を利用したのがPET検査となります(ちなみにこのがん細胞の特徴を利用したのがPET検査です)。ではどうすればよいのでしょうか? 答えは抑制されたミトコンドリア活動を再開させることです。そのためにはレモンやライム、酢などに多く含まれる「クエン酸」が有名です。「リンゴ酸」や「アスコルビン酸(ビタミンC)」そしてぬか漬けに含まれる「酪酸」も有名です。

がんを制する食事といえば、アルカリ化食品です。「○○がんだからこの食材」ではなく、前述のごとく、がん細胞の増殖抑制にはがん細胞の周囲をアルカリ性に保つことが重要です。抗がん剤もがん細胞周囲が酸性に偏っていると、副作用ばかりで効果が出にくいともいわれています。がん細胞はおもに解糖系の糖代謝のために細胞内に乳酸や水素イオンが多く発生します。これらは細胞内には不要なため、細胞外に放出されます。

結果としてがん細胞周囲は酸性化となるので、アルカリ化食品とミトコンドリア活性化食品の摂取が非常に重要となります。食事のみでアルカリ化が困難な場合は、重曹を胃酸の少ない食後2時間程度を目安として、「1日3回、1回2g」程度から水に溶いてスタートしてみたらいかがでしょうか。重曹がなかなか困難な方は、青梅から作られた梅エキスも有効です。尿のPHを見みながら摂取してみてください。

尿のPHは7.5以上が目標です。クエン酸も「1回数グラム」食前または食事中に水に溶いて飲んでみてください。アルカリ化が成功すればがん細胞が住みにくい環境が出来上がります。

標準治療+食事療法で治療にいくらかかる?

標準治療は保険診療なので、たとえ高額になっても高額医療費が適応され、決められた負担額で治療が受けられます。食事療法の補助で重曹やクエン酸を用いたほうがよいですが、ドラッグストアなどで安価にて購入出来ます。

食生活では、がん細胞と闘うT細胞を抑制するTreg細胞の活性を抑制すべきです。そのためには4つ足動物の脂肪分を避け、鶏肉や魚中心の食事がよいとされます。よって食事療法をしたから出費が大幅に増えたということは少ないでしょう。これに抗酸化のビタミンA・C・Eやポリフェノールカテキン・アントシアニン・ケルセチンなど)の摂取が望ましいです。

まずは信頼できる医療機関で診断と標準治療を

がんは早期発見と初期治療が重要ですが、がんになりにくい体作りが重要となります。がんの特徴として部位などにより症状が現れやすいものと無症状で進行していくものがあります。信頼できる医師をみつけ「相談と検査」がそのあとの人生を決定します。あのときに…と思っても遡ることは不可能です。不安にならず、定期的に検査を受けてください。

診断が早ければ早いほど治療の選択肢は広がります。病理学の先生の言葉に「診断できないがんがあります。それは検査を受けていない人のがんです」とあります。そのとおりです。私からはこじ付けですが、食という字は「人+良」となりますが、「人+悪」とならないような食生活を心掛けて下さい、という言葉でお話を終えたいと思います。

福島 偉

みたかヘルスケアクリニック

院長  

(※写真はイメージです/PIXTA)