マーベル・スタジオの最新ドラマシリーズ「シー・ハルク:ザ・アトーニー」の最終回となる第9話が10月13日に配信された。「主人公は誰?」と題された第9話は、これまで正体が明らかになっていなかった“ハルクキング”との決着はもちろんだが、ハルクやアボミネーション、タイタニアデアデビル、そしてウォンと“オールスター集結”のカオスな展開に。さらに“第四の壁”(現実とフィクションの間に概念上存在する見えざる壁)もあったもんじゃない、現実とフィクションというか、フィクションともう一つ先のフィクションを行ったり来たりするような型破りなエンディングを見せ、日米でトレンド入りした。(以下、ネタバレを含みます)

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同作は、超人関連の訴訟を専門とする弁護士・ジェニファー・ウォルターズ(タチアナ・マスラニー)が、30代独身の女性として、そしてスーパーパワーを持つ身長2メートルの緑色のハルクとして、悩みながらも人生を切り開いていく物語。ディズニー公式動画配信サービス・ディズニープラスで全話配信中だ。

いつも通り、「これまでのあらすじ」で始まるのかと思いきや、昔のテレビサイズの画面で画質も粗めの映像が流れた。1970年代後半から80年代にかけて放送されたテレビドラマ「超人ハルク」を模した感じで、「ザ・サベッジ・シー・ハルク」(※野蛮なシー・ハルクのような意味)というタイトルが出たところで、それはジェニファーの夢だったことが分かる。

ジェニファーが例の刑務所

目覚めたジェニファーがいるのは、以前、“アボミネーション”ことエミル・ブロンスキーが入っていた、ダメージ・コントロール局の最高警備レベル刑務所。会いにきてくれたマロリーやニッキたちに、個人情報ハッキングした人物を突き止めて起訴したいと主張するが、マロリーはそのことよりもジェニファー自身のことを解決することが優先だと諭す。「あんなことをされたら普通の人なら誰でも怒って当然」とジェニファーは言うが、「でも、あなたは普通の人じゃなくて凶暴なハルク」と言われ何も言えなくなる。第8話の終盤が怒涛(どとう)の展開で、最終話はどんなふうになるのか予想もできない状況だったが、ここから前回以上の怒涛の展開となっていった。

抑制装置を付けるという条件でジェニファーは釈放。しかし、事務所はクビになり、自宅の前にはテレビ局のクルーが待ち構えていたりして、休まる環境ではないため、実家に戻ることを決意。実家の部屋の壁に「キューティ・ブロンド」や「エリン・ブロコビッチ」のポスターが貼られているところから、ジェニファーはそれらに影響を受けたことが分かる。事務所を辞めたといっても、ジェニファーの意思は変わらず、独自でインテリジェンシアを調べて、その首謀者・ハルクキングを追及しようとする。

ジェニファーのダンス動画がきっかけに

気分転換のためにブロンスキーの瞑想リトリートに行くことにしたが、ここから物語が大きく動き出す。ジェニファーの学生時代のダンス動画を餌にして、ニッキがハルクキングを釣り上げることに成功。ここでもニッキの有能さが発揮されている。ニッキのことを知らないハルクキングは、男性だと思い込んでいるので、同じ事務所のパグを送り込むことに。

インテリジェンシアの集まりに潜入してみると、これまで何度も登場しているトッドの姿があり、単なる“変わり者”キャラだと思っていたら、彼がハルクキング本人だった。

しかもインテリジェンシアの集まりが行われていたのは、ブロンスキーのリトリート内の建物で、ブロンスキーを探しに来たジェニファーが到着すると、そこにはアボミネーションに変身しているブロンスキーがいて、トッドはジョシュが奪ったシー・ハルクの血を合成したものを注射器で射ってハルク化。そこにタイタニアがやってきて、ハルクも駆け付けるというカオスっぷり。「インクレディブル・ハルク」の再来か?と思わせる、ハルクとアボミネーションの戦いも起ころうとしている。

■ケヴィン・ファイギ氏にクレーム?

そこでジェニファーは“第四の壁”を越えて、「メチャクチャでどの話も筋が通らない。面白い?」と視聴者に問い掛けたところで、ディズニープラスのメニュー画面になり、抑制装置を壊してシー・ハルクの姿でメニュー画面に現れ、メイキングが見られるドキュメンタリー番組「アッセンブル」のところを突き破って潜入。

第四の壁というか、作品の世界から抜け出したシー・ハルクは、第2シーズンの構想を話し合っているスタッフたちに直接クレームを入れる。スタッフから「スーパーヒーローの物語には入れなくてはならない要素がある」と言われるが、「独自のドラマにしよう」と言って、その意見を跳ね返すジェニファー。しかし、スタッフは「“ケヴィン”の希望だから」と。

マーベル・スタジオ社長のケヴィン・ファイギ氏が登場か!?と期待が高まるが、登場したのは“知識拡張型映像相互接続体(Knowledge Enhanced Visual Interconnectivity Nexus)”、略称K.E.V.I.N.だった。ジェニファーは「私のドラマの結末が気に入らない」と訴えるが、「君に選ぶ権利はない」と却下。すると「MCUは息もつかせぬプロットと壮大な物語が売りだが、どのマーベル映画も同じ終わり方だと言われている。それは暗黙のルールに従っている結果」と手厳しい意見をぶつける。さらに「どんでん返しや見せ場をてんこ盛りにしてクライマックスに盛り込む。でも、今回はやめましょう」と提案。

「ジェンとシー・ハルクの両立に悩む。私にはここが大切なの」と、このドラマの骨幹となる部分を主張し、トッドが超人パワーを得ることをやめる、ハルクが宇宙から飛んできてピンチを救うのもなし、アボミネーションは責任を取って禁錮刑を受ける、夜ではなくて昼の設定で最高のクライマックスに、というのがジェニファーが求めたエンディング。ついでに「デアデビルにもう一度会いたい」という条件も。

■まさしく大団円

それらは全て受け入れられ、“ハルクは建物を、私は第四の壁と結末をスマッシュ”と、他のスーパーヒーローと自分は違うと話し、物語の世界に戻ったジェニファー。トッドの前にシー・ハルクの姿で現れるが、パワーではなく、法の下で裁きを受けさせるとジェニファーの姿に戻って宣告。

デアデビルが再登場し、ハルクは息子を連れて登場。最後は、“罪のない人を攻撃し傷つけたら私が相手になる”と、スーパーヒーローと弁護士の両方で立ち向かうことを告げて、エンディングを迎えた。

「主人公は誰?」というタイトル通り、主要キャラが勢ぞろいした最終話。「もうめちゃくちゃ笑」「やり過ぎだろ!笑」「最高に笑った」などSNSでの視聴者の反響も大きく、これまでとは違う作品であることをしっかりと見せつけたエンディングとなった。勢ぞろいと言ったが、“あの人も登場して欲しかったな”と思っていたら、ポストクレジットで魔術師ウォンも登場。これで勢ぞろい。

シーズン2があるのかどうかは分からないが、いろんな枠を超えた作品になっているので、ぜひジェニファーのその後の活躍を見てみたい。

◆文=田中隆信

「シー・ハルク:ザ・アトーニー」最終回となる第9話が配信された/(C) 2022 Marvel