全国犯罪被害者支援フォーラム「今、性犯罪被害者支援に求められるもの」が10月14日東京都のイイノホールで行われ、上谷さくら弁護士が基調講演した。

法制審議会で刑法改正の見直し議論が進んでおり、より広く被害者を救える方向だと評価した一方で、現在も課題が複数あると指摘。特に日本社会の根強い偏見があらゆる場面で2次被害を生んでいると訴えた。

「警察やメディア、法曹、医療従事者だけでなく国民意識を向上し、自分ごととして捉えることが必要」「無関心を是正しないと、いくら法改正しても世の中は変わらないと危惧している」などと話した。

●「刑法改正見直しで救える被害者が増える」

刑法は2017年改正時に3年後の見直し作業が付帯決議に盛り込まれ、法制審で現在も検討が続いている。

暴行や脅迫がないと強制性交罪に問えないことなどが問題視された結果、要件の改正や性的同意年齢の引き上げに向けて検討しており、上谷弁護士は「今までこぼれ落ちていた被害者を救う改正になるはず」と話した。

また、スポーツ選手と監督、上司と部下といった「地位関係性を利用した行為」の新設も審議されているといい、抵抗できずに泣き寝入りすることがない方向性に動いているとした。

●「日本は性教育が不足している。大人の知識も貧弱」

一方で、残る課題として主に挙げたのは「派手な格好で夜1人で歩いていたから被害に遭う」「男の家に行ったのだから同意はあった」などの偏見や、2次被害についてだ。

法制審で諮問されなかったこととして、法廷での2次被害(いわゆるレイプシールドの在り方)について言及。事件と無関係な被害者の性的な傾向をわざわざ法廷で指摘することは原則として禁止すべきではないかとの問題意識があるという。

「(検察官や裁判官、弁護士からの)突き刺さった言葉は、たとえその場で撤回したとしても被害者の心には残る」

さらに、被害に遭った子どもにできるだけ早く話を聞いて録音・録画する司法面接的手法による供述調書等に証拠能力を持たせる特則についても法制審では議論中だ。

子どもは繰り返し聞かれると、記憶が上書きされる場合があるといい、現在は法廷での証人尋問が必要になってしまうことが2次被害につながると指摘されている。

上谷氏は「日本は性教育が不足している。大人の知識も貧弱で、自分もたくさん仕事を受けて分かるようになってきたくらいだ」と指摘。法曹を含め警察や医療関係者、メディア、支援に関わる人に至るまで「報道や教育、研修を重ね、国民意識の向上が必要」と訴えた。

性犯罪被害者に法廷で「心ない言葉」、2次被害への懸念 上谷さくら弁護士が講演