22年プロ野球ドラフト会議が20日に行われるが、ドラフト1位指名の事前公表が相次いでいる。巨人が高松商の浅野翔吾外野手を公表すると、続くようにソフトバンクが愛知・誉(ほまれ)高イヒネ・イツア内野手、西武が早大・蛭間拓哉外野手日本ハムが日体大・矢沢宏太投手、広島が苫小牧中央高・斉藤優汰投手、オリックスが白鷗大・曽谷龍平投手を公表。1週間を前に、すでに半数の6球団が手の内を明かした状況となっている。

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 「公表ブーム」は近年の傾向で、ドラフト会議前日までに公表したチームは18年6球団、19年6球団、20年7球団、21年2球団。公表は戦略として、他球団に先手を打ち、心理戦を仕掛けることができる。最初に手を挙げれば、競合リスクを回避しようと考える非公表球団も出てくる。公表選手には安心感を与え、球団の誠意も伝わりやすい。公表には、複雑な思惑がある。

 一方で、意中の球団が事前にわかってしまう展開は、会議当日のドキドキ感を楽しみたいファンには面白くない。選手の運命に思いをめぐらせ、補強ポイントから球団の未来を考え、迎えるドラフト当日。だれの名前が呼ばれるか、会場中に漂う緊張感にヒリヒリしながら「答え合わせ」をする。公表球団が増えるほど、ファンにとっては予想の妙味が薄れていく。

 1位指名が入札方式のドラフトで、最大の注目は競合によるクジ引き。過去に数々のドラマを生んできた。最近では17年、早実・清宮幸太郎に高校生最多となる7球団が重複指名。日本ハムが抽選クジを引き当てた。清宮の交渉権を外した6球団のうち、ヤクルト、巨人、楽天が九州学院・村上宗隆を1位指名し、ヤクルトが抽選クジを引き当てた。クジを外しても「ハズレ」ではないのが、ドラフトの醍醐味でもある。

 12球団の駆け引きも見所だ。他球団の指名をシミュレーションし、競合を回避しての単独指名を得意とする球団もある。メディア85年には、甲子園をわかせたPL学園清原和博が6球団から1位指名され、西武が抽選クジを引き当てた。一方、清原がファンで意中の球団としていた巨人は、進学希望とされていた同じPL学園桑田真澄を単独指名。ドラフト直後の会見で清原が涙を流した「KKコンビのドラマ」は語り草となっている。

 選手が希望する球団を選べないルールが、数々のドラマを生んできた。メディアも巻き込んだ情報戦による、腹の探り合いは、内に秘められているからこそ面白い。近年増加する「公表合戦」が、ドラフト独特の楽しみを半減させていると感じるファンも多いようだ。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

「1位公表」乱発にファンはガッカリ…失われゆくドラフトの醍醐味