NASACO2排出量の大幅な削減を目的とした革新的な旅客機の研究を進めています。一見すると現代の旅客機のようなスタイルですが、エンジンが見えるはずのところにないのです。どのような機体なのでしょうか。

強みは「既存の空港設備でも対応できる」

NASAアメリカ航空宇宙局)が、CO2排出量の大幅な削減を目的とした革新的な旅客機コンセプト「SUSAN」の研究を進めています。この機には、現在の旅客機ではまず見られない、独自の設計が施されています。

「SUSAN」のスペックは現代のジェット旅客機と同じ速度帯の「亜音速」、マッハ0.8で飛び、最大180人の旅客を運べる仕様です。キャパシティとしてはボーイングの大ヒット機「737」や、エアバスの大ヒット機「A320」と同程度。翼の構成は大きな主翼、後方の垂直尾翼、垂直尾翼上方に取り付けられた水平尾翼。一見した限りでは、マクダネル・ダグラスのヒット機「DC-9」やボーイングの「727」と似たようなルックスです。

NASAによると、このように“スタンダードな旅客機らしい”収容能力や胴体設計とすることで、既存の空港インフラや空域管理システムを再設計することなく、そのまま流用できるとのことです。

その一方で「SUSAN」には、現代のジェット旅客機では、少なくとも2基は装備されている「ジェットエンジン」らしきものがありません。

その代わりか、主翼下に設置された左右計16基の小さなお椀のような機構のほか、胴体の最後部に「ペットボトルのキャップ」のような機構が備わっているのが確認できます。

「SUSAN」のナゾ機構、なぜ?どう飛ぶの?

16基並ぶお椀のような機構は電気エンジン。現代の旅客機のエンジンと同じように推進のため用いられます。小型の電気エンジンを16基とする「分散推進」を採用することで、離着陸能力の向上、騒音抑制といった効果も期待されるとのことです。

「ペットボトルのキャップ」のような機構は1基のターボファン・エンジン。これを駆動させることで推進力を得るとともに、4基の発電機を起動させ、主翼下の電気エンジンに電力を供給する役割を担います。

「SUSAN」ではこの設計を採用することで、現代のジェット旅客機と同じ速度やサイズ、航続距離などを維持し、既存の空港インフラを生かしながら、1席あたりの燃料消費量を約50%削減する効果が期待されています。この機はあくまで研究のさなかなので、初飛行は未定となっていますが、2040年から2045年に製造される旅客機のスタイルを念頭に置き、研究を進めているとのことです。

NASAが研究を進めている「SUSAN」(画像:NASA)。