北朝鮮当局が、ロシアに建設労働者として派遣した兵士らに不穏な空気があるのを察知し、監視を強化しているもようだ。

北朝鮮ロシアに派遣した労働者の数は2万人と言われているが、その一部は現に軍籍のある兵士たちだ。たとえば、首都・モスクワには朝鮮人民軍北朝鮮軍)第7総局所属の兵士らが派遣されているが、兵役期間はとっくに過ぎているのに、コロナ対策で国境を封鎖した北朝鮮政府により帰国が認められず、建設現場などで働き続けてきた。

米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)はウラジオストクの情報筋の話として、北朝鮮の幹部が、こうした兵士らの動向を監視し、資料を収集していると報じた。

RFAはこれに先立ち、北朝鮮ロシアにいる労働者らをウクライナ東部の新ロシア派支配地域に再派遣する計画を進めており、それを望まない労働者らの脱北が相次いでいると伝えていた。今回の兵士らに対する監視強化も、こうした動きが背景にあるようだ。

建設会社の内部では、軍人同士が相互監視を行っているが、不平不満を口にする者がいれば、説得にかかるという。

コロナ前なら即時帰国の措置が取られていたが、今はコロナ鎖国で帰国そのものができない上に、下手に脅迫でもすれば脱北されるのではないかとの不安から。強く出られないのだ。血気盛んな30代の軍人労働者は、上官の指示に強く反発し、むしろ上官の方が彼らを慌ててなだめる有様だ。

北朝鮮は兵士を労働者として海外派遣する場合、思想的に徹底的に武装され、故郷に家族がいる――つまりは「人質」がいるなど、逃亡のおそれの有無を熟慮している。また、一般労働者よりも上意下達で動く兵士を優先的に派遣してきたとも言われる。

だがそのような統制も、ウクライナ東部という「戦地」への派遣が現実味を帯びるにつれ、揺らいできているのかもしれない。

極東にいる軍人建設労働者はテリョン貿易会社所属で、軍事対外事業局を通じて派遣されているが、ハバロフスクの情報筋によると、同社は現地のルバ、ヤブストロイなどの建設会社と契約を結び、7カ所の建設現場に労働者を送り込んでいる。

いずれの部隊も、労働者の管理に頭を痛めている。長時間労働に加え、退屈な海外生活、ホームシックなどで不平不満を露骨に口にしているからだ。作業班は6〜70人からなるが、本社の指示に従おうとしないため、当局は協議体を立ち上げ、労働者の動向監視を行っている。

朝鮮人民軍創建90周年記念閲兵式(2022年4月26日付朝鮮中央通信)