カナダ、ニューファンドランド島には、かつてシンブル・ティックルとして知られていたグラヴァーズ湾がある。この地にある漁村は、ここがダイオウイカの故郷だと主張している。
1878年、生きたダイオウイカ(Architeuthis dux)がこの沖合で座礁しているのが発見されたのだ。
その大きさは17メートル近くもあったそうで、その後ギネスによって世界記録に認定され、同じ大きさのイカの彫刻が建造された。
1878年11月2日当時の記録によると、この日の朝、地元の漁師スティーブン・シェリングが、ふたりの漁師仲間と共に猟に出たとき、なにやら赤くて巨大な絡まったものが海岸近くの波間に半分沈んでいるのに気がついた。
難破船だと思って近づいてみると、それは、座礁した巨大イカだった。
長い触手を必死に振り回して、深い海の底へと戻ろうともがいていて、苦しそうにのたうちまわりながら、時々黒い墨を吐き出していたという。
[もっと知りたい!→]迫り来る巨大な触手!メキシコ湾でダイオウイカの泳ぐ姿の撮影に成功(米研究)
漁師たちは、恐ろしい光景に震えあがりながらも、イカの触手が届かない距離をとりながら、なんとか近づいた。
イカが立往生していることがわかると、ロープを結んだひっかけ鉤をイカに突き刺し、ロープの端を海岸の木に結びつけて、引き潮でイカが沖に戻れないようにした。
ついに、激しい奮闘に疲れ果てたイカは力尽き、水が引いたときに死んでしまった。死んだイカは容赦なく解体され、犬のエサにされたという。
巨大イカを捕獲した時のイメージ図(1885) / image credit:public domain/wikimedia
この巨大イカのニュースはたちまち広まり、「シンブル・ティックルの巨大イカ」として知られるようになった。
全長およそ17メートル、体は7メートル、触手の一本は10メートルあったという。
世界最大のイカとしてギネス認定され、捕獲されたイカで最も重いものとして現在までその記録を保持している。目の直径は40センチもあり、これも世界最大だ。
だが、その寸法は誇張されたもの、もしくは死後に拡大解釈された結果ではないかと、現代では懐疑的に考えられている。とはいえ、巨大だったことは間違いないだろう。
・合わせて読みたい→ダイオウイカと死闘を繰り広げていたマッコウクジラの死体が打ち上げられる(オーストラリア)
村の入り口にある1878年の巨大なイカのイラストと、ギネス世界記録認定を表示するウェルカム サイン/ image credit:Julie Potton / CC BY 4.0
巨大イカの彫刻が設置される
2001年、巨大イカがグラヴァーズ湾の岸辺に戻ってきた。等身大の巨大イカの像が設置されたのだ。
鋼鉄と金網をコンクリで固めて作られたこのオブジェは、長さは発見されたダイオウイカと同じサイズ(17メートル)で重さが4トン以上ある。
● / image credit:Julie Potton / CC BY 4.0
デザインし建設したのは、美術教師のドン・フォールズとその生徒たちだ。
場所は、ジャイアント・スカッド・インタープリテーションサイトの一画で、小規模な博物館、ピクニックエリア、土産物店なども併設されている。
シンブル・ティックルの巨大イカは、毎年恒例のフェスティバルの目玉になっていて、2011年にはカナダの郵便切手にも採用されたそうだ。
References:Glovers Harbour, Newfoundland and Labrador / The Giant Squid of Thimble Tickle – Division No. 8, Newfoundland and Labrador - Atlas Obscura / written by konohazuku / edited by / parumo
コメント