新型コロナも流行から3年が経過し、各国とも感染抑制から経済回復へ舵を切りつつある昨今、海外渡航も段階的に制限が緩和されつつあります。「最も近い外国」韓国への渡航最新事情はどうなっているのか見てみます。

韓国入国で事前登録が必須の2つ

2019年に発生した新型コロナは世界規模で海外渡航を制限させ、これにより観光・ビジネスなどあらゆる業種が影響を受けました。外国に行く場合は、自身が新型コロナウイルスに感染していないことを証明するために自費でPCR検査を受け、その陰性証明書を提出する義務が生じたほか、滞在先でも数日間の隔離期間を設ける必要がありました。そのため、これらにかかる費用と時間は海外渡航をする上で大きなネックとなっていたのは間違いありません。

しかし、各国でワクチン接種などが進んだことなどにより、多くの国で入国制限を大幅に緩和するようになった結果、ヨーロッパなどを中心に渡航制限そのものの解除、あるいはワクチン接種を条件に入国を許可するようになっています。日本のお隣、韓国も2022年9月3日よりPCR検査陰性証明書の提出が不要となり、10月1日からは入国1日目の韓国国内(空港等で実施)でのPCR検査も受ける必要がなくなりました。

しかし、一方でコロナ禍から新しく採用された各種システムは継続しており、制限が緩和されたとはいっても、かつての韓国渡航とは大きく異なっているといえます。

筆者(布留川 司:ルポライター・カメラマン)は、取材のために2022年9月下旬に成田空港より空路でソウルの仁川空港に飛び、韓国へ入りました。今回はそのときの体験を元に、コロナ禍での新しい入国手続きについて解説しましょう。

現在の韓国入国で事前に登録が必要な制度は2つあります。それが「K-ETA」と「Q-code」です。

「K-ETA」は電子旅券許可制度のことで、アメリカが導入しているESTA制度の韓国版と言えばわかりやすいでしょう。モバイルアプリから専用ウェブサイトにアクセスして自身の個人情報と旅行関連情報を入力すると、その内容が審査されて24時間以内に入国の可否がメールで届きます。ちなみに筆者の場合は、1時間ほどで返信メールが来ました。

申請料として1万ウォン(日本円で約1000円)が必要であるほか、韓国行きの航空機に搭乗する72時間前までに申請し、承認を受けなければなりません。審査によっては「条件付き入国」や「入国不可」となることもあります。

ガラケーだと難しいQRコードチェック

「Q-code」は検疫事前情報システムのことで、こちらも専用ウェブサイトにアクセスして必要情報を記入します。サイトではパスポート、滞在情報、健康状態などを入力すると自分専用のQRコードが発行され、これを韓国入国時の検疫で見せることになります。

筆者が仁川空港を利用したときは、飛行機から降りると利用者は一列に並ばされ、最初に「Q-code」による検疫手続きを受けました。スマートフォンにQRコードを表示させるか、送信されてきたメールをプリントアウトしたものを係員に見せると通常の列に誘導されます。QRコードがない利用者は、その場でスマートフォンを使って入力してQRコードを発行するか、別の列に並んで従来通りの検疫手続きを受けているようでした。

列の先にはスキャナーが用意されたブースがあり、そこで係員が待っています。最初に体温測定が行われ、次に持っているQRコードがスキャニングされます。係員の端末にこちらが事前に入力した情報が表示され、それを一瞥程度に簡単に確認。そして、滞在中の健康に関する注意事項が書かれた紙を渡されて次に進むように言われます。時間にすると約10秒程度の超短時間。筆者は「え? もう終わり?」と逆にスタッフに聞いた程でした。

「Q-code」はビザのような審査はなく、空港では実質、「入力の確認」のみだったように感じました。しかし、滞在中に新型コロナウイルスに感染した場合などはこの情報が参照されるため、正確な申請を行いましょう。また、現在は停止していますが、筆者が受けた入国初目のPCR検査の結果も、「Q-code」の専用ページにアップロードする必要がありました。

日本帰国の際もアプリ登録は必須かも

検疫を終えると、直ちに入国審査が待っています。他の空港でもお馴染みとなった自動端末が置いてありましたが、筆者の場合は端末のパスポートスキャナーの調子が悪かったのか、係員のいるブースに案内されました。とはいえ、こちらも特別な質問事項はなく、せいぜい本人確認のためにマスクを外すことが求められたくらいです。

「K-ETA」による事前承認があったお陰なのかはわかりませんが、入国審査自体の時間はコロナ禍前と大して変わらない印象でした。

筆者が空港到着から預け手荷物を受け取り、到着ゲートを抜けるまでに掛かった時間は1時間程度。この後、現在は休止された空港内PCR検査を受けるため、さらに1時間程度空港で過ごしましたが、飛行機で降り立ってから約3時間後にはソウル市内のホテルにチェックインすることができました。

段階的な制限解除によって、韓国への入国は今後、さらに短時間で済むようになるでしょう(逆に再流行によって制限が戻る可能性もあります)。しかし、コロナ禍によって変化した手続きはその後も残り続け、空港や機内で行っていた用紙記入によるアナログな手続きは電子化されていくようです。

これは筆者の考えですが、コロナ禍によって海外渡航に関する手続きの電子化は進んでおり、今後はネットやアプリを使った事前登録と、現地で携帯情報端末を使った確認作業が主流になっていくと思われます。日本においても海外から帰国する際は「MySOS」というアプリによって手続きの簡略化・スピード化が行われています。今後の海外旅行ではスマートフォンは必須のツールになるのではないでしょうか。

ウィズコロナ・アフターコロナでの海外旅行は、「以前の形」に戻るのではなく、「新しい形」に変わっていくと今回の韓国渡航で実感しました。

※本記事は9月末の現地体験と、10月末の渡航情報を元に執筆しました。最新の情報は大使館等の情報を参照してください。

仁川空港に駐機する大韓航空の各種旅客機(布留川 司撮影)。