相続には十人十色の事情があり、場合によっては家族や親族同士の関係を壊してしまうこともあります。そうした事態を避けるためにはどうすればよいのでしょうか。相続に必要な知識や相続を円満に進めるコツについて、相続・終活に関する情報を発信するwebサイト『円満相続ラボ』の記事から、一部編集してお届けします。

代襲相続とは?

本来相続人になるはずだった被相続人の子や兄弟など(被代襲者)が、被相続人よりも先に死亡している場合に、その子が代わりに相続人となります。被相続人から見ると孫や、甥姪が相続人となります。特に兄弟が相続人になる場合などは被相続人とその兄弟が同世代や年上であることから、代襲相続が起こる場合が多いです。

また、珍しいケースではありますが相続欠格や、相続排除によっても代襲相続は起こります。

相続欠格は、被相続人を殺害した当事者や、それを通報しなかった場合などが挙げられます。詐欺や脅迫で遺言書を書かせたり、撤回させたりした場合、被相続人への犯罪行為により当然に相続権を失います。

相続人の廃除は、被相続人に対しての、虐待や侮辱、その他の非行など、その行為のみでは成立しませんが、被相続人が生前に家庭裁判所への申し立てをするか、遺言により意思表示をすることにより、相続人から除外されます。

しかし、それでも相続欠格に該当したり、排除された子等の子には代襲相続ができる仕組みになっています。なお、実際に相続手続きをする際は、通常、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本が必要なりますが、代襲相続人がいる場合は被代襲者の一生分の戸籍謄本が必要になります。

代襲相続人が何人いるかも確定させなければならないので注意が必要となります。 

代襲相続はどこまで起こる? 代襲相続人の範囲と具体例

代襲相続人とは、具体的には被相続人の長男が既に死亡していて、その長男に子供がいる場合は、被相続人から見て孫が相続人となり、被相続人に次男や、三男など他の子がいれば、その子たちと共同して相続人となります。

長男の子が既に死亡しているのであれば、長男の孫(被相続人のひ孫)も代襲相続人となります。また、被相続人に子がおらず、両親等直系尊属が他界している場合には兄弟が相続人となりますが、その兄弟が死亡している場合その兄弟の子がいれば相続人となります。

しかし、兄弟姉妹が被代襲者となる場合、その子である被相続人から見て甥姪も死亡している場合は甥姪の子は代襲相続人となりません。いわゆる再代襲は直系卑属が相続人の場合にのみ起こるということです。

また、再代襲がない兄弟が相続人となる場合でも、相続人である甥姪が既に相続する権利を持ってから死亡することにより、その子や配偶者にも引き継がれますので相続を放置し続けると鼠算式に相続人が増えていくことになります。

ここでいう兄弟というのは父母の内、片方が一緒である半血兄弟にも適用されますので家族構成によっては一度もあったことがない人物が共同相続人となるケースも多々あります。

では、養子が被相続人“相続発生前”に死亡している場合はどうでしょうか。

養子の代襲相続に関する注意点

養子の代襲相続は養子縁組後に生まれた養子の子に限るとしています。

例えば、被相続人が養親で、子供は養子一人、その養子の子がいた場合に、養子縁組前に生まれていた子は相続権はなく、養子縁組後に生まれた養子の子は相続権を得ることになります。同じ親から生まれていても、養親との関係では全く扱いが異なることになります。

しかし、養子の子が、養親の孫であるなど、養親の直系卑属の場合は相続権があるとされています。また、ここで気を付けなければならないのは、代襲相続と数次相続は全く違うということです。

代襲相続は、被相続人が死亡した時点で相続人となるはずだった人物が死亡している場合にその子供が代わりに相続権を取得しますが、数次相続は相続が発生した後に当時存命の相続人がさらに死亡し、その子に限らず配偶者や場合によっては兄弟に相続をする権利が移ることになります。

先述した養子縁組前の子も、相続権を持ったまま養子が亡くなったことにより、その養子の相続人として、結果的に権利を得ることとなります。

なお、相続税の基礎控除について、代襲相続が影響を及ぼすかということですが、

相続人が長男と次男の二人の場合

3,000万円+600万円×2(相続人の数)=4,200万円となります。

これが代襲相続の場合は法定相続分と関係なく相続人の一人であることは変わりないため、相続人が被相続人の長男と亡次男の子二人で、計3人の場合は

3,000万円+600万円×3=4,800万円となり結果的に非課税枠が増える場合もあります。

代襲相続人の相続分はどうなる? 相続財産の分配方法を解説

代襲相続人の相続分は被代襲者の相続分と同一です。代襲相続人が複数いる場合は被代襲者の相続分を頭数で均等に割ります。

例えば被相続人の子である長男と次男の二人いたが、次男が死亡し、その子(代襲相続人)が二人いたとすると、長男が2分の1、代襲相続人たる次男の子供二人が、その2分の1を二人で均等に分け合うこととなり4分の1ずつとなります。

代襲相続でトラブルに! よくあるケースをご紹介

代襲相続のトラブルで一番多いのが、被代襲者と他の相続人との間でしていた話が相続の際には代襲者には通じないという点です。

特に代襲相続人が被代襲者の離婚した配偶者との間の子である場合などは、一切連絡先がわからない、連絡がとれたとしても、あまりいい感情をもっていない等、相続手続への協力が得られない場合も多いです。また、このような場合でなくても世代間の考え方の違いで、トラブルになる場合も多いです。

親の面倒をみた長男が家を相続することに次男は納得していたがその後次男が死亡し、相続発生時にいざ代襲相続人と話し合う際には被代襲者の口約束は意味をなさず、シッカリと法定相続分を請求されるケースは多々あります。

また、被相続人の配偶者がと兄弟姉妹や、甥姪が相続人の場合、よくあるトラブルとして、配偶者としては被相続人と二人で積み上げた財産を、兄弟や甥姪と分け合わなければならないことに納得がいかず争いに発展してしまうケースもあります。

権利としては兄弟や甥姪全員で4分の1ですが、家以外に主だった財産がなければ分けることが難しく、家は守れたとしても預金を全て持っていかれる自体に陥ることもありえます。

これが兄弟であるなら、被相続人と生前から話をしていたり、よく人格を知っていたりするので話がスムーズに進むこともありますが世代が違う甥姪との話し合いがうまくいかず、相続手続きが停滞してしまうこともあります。

たとえ先の話を家族で話し合っていたとしても、事情によっては代襲相続人のように当事者が変わることがあります。口約束ではなく遺言など実際に先を見据えての対策をしておくことをお勧めします。

代襲相続をして遺留分を請求できるのは誰?

兄弟姉妹に遺留分がないように、代襲相続人である甥姪に遺留分はありません。同じように遺留分を持つ子の代襲相続人である孫は遺留分を持つことになります。

相続放棄したら自分の子どもに代襲相続される? 

相続人が相続放棄をし、相続人ではなくなった場合は代襲相続人も相続放棄をしなければならないのでしょうか。

代襲相続人は相続発生時に既に子や兄弟が死亡していることにより、代わりにその子が相続する権利を得る制度です。

相続開始時の相続人が被相続人の子及び代襲相続人である孫である場合は子とその孫が相続放棄をすれば、第1順位の相続放棄は完了し、第2順位(両親や祖父母)や第3順位(兄弟姉妹)が相続放棄をすることになります。同じく代襲相続人たる甥名が相続放棄をするとその下の代には相続権は移りません。

株式会社サステナブルスタイル

後藤 光

(※写真はイメージです/PIXTA)