世界最大のユーザー数を誇り、巨大な動画プラットフォームとしての地位を確立しているYouTube。日本でもこれまでに多くのYouTube クリエイター(YouTuber)が登場し、日々さまざまなエンターテインメントを届けている。

 そんなYouTubeは、ユーザーが安全に利用できるだけでなく、広告主のビジネスをサポートできる場となるよう、さまざまな取り組みを展開しているその中でも毎年開催しているのが、広告関係者向けのイベント「YouTube Brandcast」だ。

 去る2022年10月27日には「YouTube Brandcast 2022」が両国国技館で開催され、Google日本法人の担当者や動画クリエイター、広告関係者らが登壇。イベントの模様をレポートしていくとともに、さまざまな立場から見るYouTubeの魅力について迫っていく。

参考:【写真】「YouTube Brandcast 2022」に登壇したコムドットやまとと竹脇まりな

■YouTubeのコンテンツ制作者数は過去最高を記録

 オープニングアクトには人気YouTube クリエイターのハラミちゃんが登場。超絶技巧のピアノ演奏を披露し、盛大にイベントの幕を開けた。

 その後、会に先立ってYouTube CEOのスーザン ウォジスキがビデオ出演し、次のようにコメントを寄せた。

「YouTubeのコンテンツ制作者数は、昨年に過去最高を記録した。日本のクリエイターにおいてもYouTubeでファンを増やし、ビジネスを成長させている。Z世代からシルバー世代に至るまで、さまざまな世代が楽しめるのがYouTubeの魅力であり、これからもイノベーションを柱にクリエイター、ユーザー、そして広告主のみなさまに役立つサービスを提供し続けていきたい」

 続いてはGoogle合同会社 マネジングディレクター YouTube 日本代表の仲條亮子氏が登壇。国内におけるYouTubeの利用状況とマーケティング視点で考えるYouTube広告の有用性について発表した。

 2007年に日本語版のYouTubeが始まって以来、今年で15周年を迎える。今ではトレンドを生み出し、日々のライフスタイルには欠かせない動画メディアとして成長を遂げた。月間のユーザー数は7000万人以上を超え、なかでも45歳~64歳のユーザー数は2500万以上を数えるという。

 YouTubeはユーザーにとって、知的好奇心をかき立て、自分にとってより良いコンテンツを見つけることができるからこそ、世代問わずに多くのユーザーに利用されているのではないだろうか。

 マーケティング観点から見ても、YouTubeは「商品認知」と「商品購入」に寄与している。

「YouTube クリエイターは商品やサービスに関して、最も重要な情報提供者として認知されており、欲しい商品の情報をYouTubeを通じて手に入れることが当たり前になってきている。また、買いたいものを探している時に偶然出会った商品を購入する体験も生まれていて、YouTubeはいつでも、どこでも好きなことを楽しめるだけでなく、商品購入プロセスにおいても重要な役割を果たしている」(仲條氏)

■コネクテッドテレビでYouTubeを視聴するニーズが増加

 次いで登壇したGoogle合同会社 YouTube カルチャー&トレンドマネージャーの前岡真琴氏は「YouTubeは好きがつながる、好きがふくらむ、好きがひろがる場所」だとし、視聴者の“好き”を表すチャンネル登録者数のトレンドの推移について説明した。

「現在、10万人以上のチャンネル登録者を持つチャンネルは7,700以上、そして100万人以上のチャンネル登録者を持つチャンネルは500以上と、いずれも前年比30%増となっている」

 さらにYouTubeの視聴方法の変化についても触れた。

「インターネットに繋がっているコネクテッドテレビでYouTubeを視聴するユーザーは3,500万人以上に上り、家族や友人など誰かと一緒に視聴する『共視聴』も増えている。とりわけ教育やファッション、お笑い、旅行などのジャンルにおいては視聴時間が大きく増加しており、ひとりでも、誰かと一緒でも大画面で見るとより楽しめる動画の視聴時間が伸び続けている」

 時間や場所を問わずにいつでもひとりで楽しめるYouTubeから、リビングなどでみんなで一緒に楽しむYouTubeへと進化していると言えるだろう。

コムドットが人気を得るために行ったマーケティング戦略

 後半は「クリエイターストーリー」と題して、今をときめく話題のYouTuberがゲストで出演した。1人目はZ世代から絶大な人気を誇るコムドットやまと。“地元ノリを全国へ”をスローガンに掲げ、幼馴染5人組で結成された日本を獲るYouTuber「コムドット」。初めての動画投稿から3年でチャンネル登録300万人を突破し、今年3月に発売した写真集では男性写真集歴代1位を記録。そのほか、地上波冠番組やCM出演など、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いで頭角を現しているYouTuberだ。

「中学校の同級生5人組で結成したのがコムドットで、YouTubeを中心にモデル業界やメディア業界など、いろんな挑戦をしているグループになっている」(コムドットやまと

 そんなコムドットにとって大きな転機になっているのが、原宿の街頭で女子高生に声を掛け、チャンネル登録してもらう企画。こちらの意図についてコムドットやまとは「実は明確なマーケティング戦略があって『女子高生のトレンドを創る力』に着目していた。そのため、まずは女子高生から人気を得ようと試みたのがこの企画につながった」と語る。

 また、発信者として大切にしていることについては「僕たちは毎日動画を出しているので、視聴者からの意見を取り入れることを意識している。いただいた意見を日々取り入れながら、PDCAサイクルを回している」と答えた。

 「若い世代にとってYouTubeはどんな存在か」というMCからの問いに対し、コムドットやまとは「他のトラディショナルメディアと違い、スマホで視聴できるのがYouTubeの大きな特徴。ほんのちょっとのすきま時間や合間で見ることができ、それぞれの生活に合った形でYouTubeを楽しめるので、自分含め視聴者にとっても身近な存在」だと話す。

 広告関係者向けに、Z世代へウケる動画づくりのヒントについて聞かれると「Z世代と他の世代における一番の違いは『SNSを使いこなせるかどうか』。つまり、Z世代が発信したくなるような内容のコンテンツを作った方がいい。そうすれば、Z世代がマーケターとして発信してくれるようになる」と回答。

 今後の目標については「実は写真集の第2弾が12月に発売が決定していて、現在出している第1弾の累積売上部数歴代1位の記録を自分たちで塗り替えたい。また『コムドットチップス』の発売も予定していて、100万袋ほど生産してしまった。もしこの中で反抗期を迎えるお子さんをお持ちの方がいらっしゃれば、ぜひたくさん買っていただけるとありがたい(笑)」とコメントした。

 そして「これからもコムドットは、いただいた仕事に対して誠心誠意取り組んでいく。たくさんいいお話をいただけたら嬉しいし、年内にはチャンネル登録400万人を目指して走り抜けていきたい」とメッセージを寄せた。

■宅トレYouTuber竹脇まりな「もっと自分を好きになる人を増やしたい」

 2人目は宅トレクリエイターで、チャンネル登録者数300万人を誇る竹脇まりなが登場。

 フィットネスインストラクターの母親の影響を受けてフィットネスの道を志し、夫(ダーウィン)の転勤をきっかけにニューヨークへ。 2018年12月からYouTubeで現地での生活を伝えるVlogやフィットネス動画を投稿し、2019年9月にアップした「ハンドクラップ動画」が話題となり、現在は“宅トレを当たり前の世界に”をミッションに、自宅で楽しくできるフィットネスやダイエット料理動画を配信している。

「もともとフィットネスインストラクターを目指していた当時、夫に『日本には女性の大きなフィットネスYouTuberがいないから、そのままの“まりな”で発信してみれば』とアドバイスされたのが、宅トレ動画を始めたきっかけになっている」(竹脇まりな)

 先述のミッションを掲げる背景には「もっと自分を好きになる人を増やしたい」という思いがあるという。

「宅トレで自分にフォーカスして頑張っていると、どんどん自己肯定感が上がっていく。視聴者は8割くらいが女性で年齢層も幅広く、テレビ画面にYouTube動画を映して、ご家族で宅トレを楽しんでくれている方も多い。宅トレを通して、自分を好きになる人をもっと増やしていきたい」

 竹脇まりなは夫とともに、プロテインやフィットネスウェアなどの宅トレブランド「MARINESS」も立ち上げている。

 ブランドのこだわりについては「機能性とおしゃれなデザインを融合させ、インテリアに馴染むフィットネスグッズを目指した。YouTubeを通じて視聴者からの意見をダイレクトに反映できるブランドとして大変ご好評いただいており、非常に感謝している」とコメント。

 最後に「YouTubeは自分にとってどんな存在か」という質問に対し、竹脇まりなは「仲間と繋がれる場所だと思っている。YouTubeは画面越しの動画にはなるが、そこには人と人との繋がりがあって、コミュニティが存在していて、体温のあるプラットフォームだと感じている。宅トレは身体も心も温まるものなので、自分自身も楽しみながら仲間の輪を広げて、自己肯定感の高い人を増やしていきたい」と話した。

(取材・文=古田島大介

YouTube Brandcast 2022